あまりにも長い触覚を持つカミキリムシ
カミキリムシは本来長い触覚を持つことで知られています。
当然体が大きくなれば触覚も長くなる傾向が見られますが、その中にはちょっと長すぎじゃない?と疑問を持ってしまうくらい長い種類もいたりします。
今回紹介するのは黒い体と非常に長い触覚を持つヒゲナガカミキリ。
山地性のカミキリムシなので平地で見かける機会は少ないですが、生息地での数は多いので見たことがある方も多いはずです。
ヒゲナガカミキリとは
ヒゲナガカミキリはフトカミキリ亜科に所属するカミキリムシの仲間です。
体長は大きいものでは5cm近いものもおり、カミキリムシの中では大きい種類と言えます。
成虫は主にモミなどの針葉樹を利用し、それらの針葉樹がやや標高のある場所に出現するため、彼らの出現も山地に限定されます。
成虫は生木よりは衰弱した木や伐採直後の木を好むらしく、それらの木にはフトカミキリの仲間らしい漢字の一の字状の産卵痕が見られます。
幼虫の侵入を示すフラスはゴボウのような細長い繊維質をしており、同じくモミを利用する希少種のオオトラカミキリのものとは大きく異なります。
灯火への飛来性も高く、夜間に外灯に来るほかモミの木のルッキングをすることでも見つかります。
ヒゲナガカミキリの♂と♀
カミキリは傾向として♂は小柄で触角が長く♀は太めで触角が短い物が見られます。
ヒゲナガカミキリにおいても同様で、♂は一回りほど小さく見えます。
♂♀で大きく違うものは特に色合いです。
ヒゲナガカミキリの♀はweb上などでより希少で白色のヨコヤマヒゲナガカミキリに間違われているケースが見られます。
実際遠目でヒゲナガの♀を見つけると一瞬まさか!?と思ってしまうことが年に1,2回あるぐらいには遠目だとややこしいです。
ヒゲナガの♀は黒いというよりは白を含めたマダラ模様がある場合があります。気をつけましょう。
衰弱木利用と考えられるヒゲナガ
カミキリの仲間には枯れ木利用のもの、衰弱木利用のもの、生木利用のものなど様々な利用形態があります。
ヒゲナガカミキリを見つける場合にはモミの木を徘徊するように見ていきましょう。
人の目には同じ状態に見えるモミの木でも虫はその状態をよく見極めており、条件のいい木には多数のヒゲナガカミキリがついています。
例としてこちらの巨木のモミは一見元気そうに見えますが、地際から漢字の一の字で齧ったような痕が多数ついていました。
つまりこのモミの木は衰弱傾向にあると考えられます。
衰弱利用のカミキリを覚えておくと枯れ木を利用する虫の発見に大きく貢献します。
モミの新鮮な枯れ木にはアオタマムシが来ることが知られていますので、生き物のつながりに注目すると何年後かには良質なポイントになっているかもしれません。
伐採された新鮮なモミの枝を観察してみるとここにもヒゲナガの産卵痕がありました。
ヒゲナガカミキリは夜行性の傾向が強いのでこうした伐採場所が見つかれば夜には高い確率で見つけられるはずです。
ヒゲナガの見分け方
ヒゲナガカミキリですが、類似種には困らない種類だと言えます。
多くのカミキリムシは体長が小さいものが多く、特に5cm前後ともなるとその時点で種類が絞れてしまいます。
唯一♂の小型だったりすると3cm程度のサイズ感のものもいますが、3cmでも大きい方なので大丈夫ですね。
黒くて触覚がながければまずヒゲナガカミキリを疑ってもいいと思います。
黒いカミキリとしてはノコギリカミキリの仲間が同じく山地性のカミキリとして見つかります。
しかしノコギリカミキリは明らかに体が丸いですし、触覚がノコギリのようにギザギザになっているので、これも間違えようがありません。
より自然度の高い場所ではシラフヒゲナガカミキリやヨコヤマヒゲナガカミキリの擦れた個体などちょっと似た雰囲気のものもいます。
シラフヒゲナガは私は写真がないのでパスしますが、ヨコヤマの擦れた個体は結構ヒゲナガの♀に似ていると感じます。
胸部のゴツゴツ感や、全体の雰囲気の違いなど2種を見た人ならば違いは明らかなのですが、ヨコヤマも珍しいカミキリなのでまずヒゲナガを疑うのがいいと思います。
山地のカミキリの中ではどうしてもより良い種類のハズレとして扱われがちなかわいそうなカミキリではありますが、非常に迫力のあるかっこいいカミキリなのでぜひ探してみてください。
10月頃までと活動期間も長く、個体数も多いカミキリなのでおすすめです。