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2024年高尾山昆虫観察記7 8月下旬のヨコヤマヒゲナガカミキリ事情

8月、あることに気がつく

8月も下旬となり、虫たちも少なくなってくる時期です。

ヨコヤマ狙いなら日没前からGO

今期の高尾は多くの方に好かれているミヤマやヨコヤマ、アカエゾゼミなどにも既に遭遇しているので個人的には満足してきているのですが、よくよく考えるとイヌブナルッキングでヨコヤマヒゲナガカミキリを捕まえていないことに気が付きました。

ブナの精霊とも呼ばれるヨコヤマは外灯だけでなく、年に1度くらいはイヌブナで見つけておきたいので急遽高尾山を訪れました。

訪問日のコンディション

訪れた日は風がやや強く、麓でももう涼しさを覚えるくらいの8月下旬でした。

中腹は動かなければ涼しい。動くとじんわり暑い。

外灯には前回と比べても虫の数は少なく、シーズンの終了を感じさせる雰囲気があります。

天気が崩れるタイミングもありましたが、虫屋の方は4組ほど見つけました。

時期的にヨコヤマやネブト狙いでしょうかね。

日没直前からイヌブナルッキング

高尾のヨコヤマヒゲナガカミキリは外灯の巡回がとても有名ですが、このカミキリは日没前に♀がイヌブナの地際に産卵に来ることが知られています。

ヨコヤマらしき痕はかなり見つかる

この性質を把握しておけば日の沈みが早い産地では17時過ぎ頃からヨコヤマを探し始めることが可能であり、最終ケーブルカーの21:15分まででもかなりの時間活動していくことが可能です。

ということで今後のオオトラカミキリやヨツボシシロオビゴマフカミキリ(メディオ)トゲフタオタマムシなど今後狙っていきたいのでそれらの来そうなモミを探しつつイヌブナルッキングをしていきます。

モミの羽脱孔。形的にはタマムシ?

ルッキングは対象の生態に合わせた採集方法なので自身に積み上がるものがあり、坊主でも楽しめるんですよね。

...

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地際を見ていくと羽脱孔や加害痕らしきものは見つかりますが、さすがにそうそう拝めるものでもありません。

別日のものですが、ルッキングの雰囲気は変わらないので。

ポイントを回っていると...?

夕暮れ時に高尾のカミキリ屋さんと遭遇しました。当ブログの観察記では今期の4.5回でお世話になっているカミキリのプロフェッショナルの方ですね。

アカジマは古木のけやきに付くという

オオトラカミキリを目当てに来られていたそうで、オオトラやメディオ、アカジマトラカミキリなど秋の良い虫たちの情報や直近の高尾事情など情報交換させていただきまして、おまけにアカジマトラカミキリを見せていただきました。

写真はありませんが、アカジマトラカミキリの実物を始めてみたのでかなり興奮しましたね。有識者の熱量は本当にこちらもその領域に踏み込みたくなるような魅力を感じます。

1時間ほどお話した後にヨコヤマを目指して外灯やイヌブナを巡回し始めました。

外灯巡回とミヤマ事情

高尾の名物、外灯の巡回をしていきます。

外灯や樹液にはコクワばかり。樹液もかなり減ってきた。

今回は樹液はさほど回らない予定なので、結論を述べるとミヤマクワガタは0匹でした。

snsなど見ているといないわけでは無さそうですが、メインターゲットで狙う時期は完全に終わっていますね。

晩夏以降も出現する虫たちが中心

外灯周りではゴホンダイコクコガネやカメムシの仲間が見られ、甲虫ではキボシカミキリやノコギリカミキリが目につきましたね。

嬉しい副産物としてはヤママユの仲間が最近はよく見られています。今回はオオミズアオとヤママユに遭遇できました。

最近夜の高尾で目にするオオミズアオ。ヤママユの仲間は蒸していればかなり見られそう。

オオミズアオは外灯下をバタバタしており、ヤママユは6mほどの外灯周りの葉上に止まっていました。

このヤママユガは羽化直後の個体らしく過去見たことがないほどの完品個体でした。

屋外ではなかなかお目にかかれない位の美麗個体

私は蛾は集めていませんが、欲しくなってしまうくらいキレイでしたね。

しかし1週間前と比べても虫の気配が全然ないのは今日のコンディションによるのでしょうか。

道中イヌブナをルッキングしていると翅が目につきます。この翅は...!

過去ヨコヤマを見つけたことのないエリアでの発見。いるのか?

ヨコヤマの翅です。イヌブナ直下に落ちているので捕食されてしまったのですね。ということはこのイヌブナには来ていたと。

翅の感じからすると既に擦れていますね。擦れた個体はそれはそれで美しいので好きです。

前回セミを見た外灯なども空振り。蛾がいる程度で甲虫もいません。

イヌブナルッキングでヨコヤマを発見

さて、昨年のこの時期にはヨコヤマを1日で3匹捕まえた日がありました。

昨年8月24日のもの。見ての通り擦れてはいないのでまだ楽しめる時期のはず

昨年の実績を元に今年も期待を込めてそのポイントを見て歩きます。

副産物の少なくなるこの時期はヨコヤマかネブトに出会えるかどうかで幸福感が全く違うので1匹は見つけたい所です。

実績のあるイヌブナの2箇所目をルッキングすると!

モタモタしている暇がなかったので、採集後にいた場所の写真。高かった。

高所にヨコヤマヒゲナガカミキリが歩いていました!

地際から約5mちょいくらいの場所でしょうか。

樹冠に向けて歩いており、産卵を終えた個体が戻る途中だったのかもしれません。やはり擦れており、逆にこれが黒く目立ちましたね。

長竿網をうまく使ってなんとか捕獲。

夢中で撮影も忘れていた。かろうじて現地での1枚。

触覚、跗節まで揃っている擦れた個体でした。やはり外れのルッキングをしてきた分達成感やヨコヤマらしさを味わえるのがこのルッキング採集の良いところですね。

ヨコヤマや夜の高尾を味わってみたいという同行者が今日はいましたが、ヨコヤマに出会えてよかったです。

会えるときは割と出会えるのですが、ハマると昨年の私のように10連敗くらいすることもありますからね。(ヨコヤマに重きを置いていないだけの気もする)

今回のヨコヤマと過去のヨコヤマの位置

ルッキングのヨコヤマは私は4例目であまり多くはないのですが、3例は地際30cm程度の場所にいました。

地際に産卵する都合上、見つかるときは膝程度にいる傾向がある。

今回は珍しく高所におり、イヌブナのルッキングは高所まで見たほうが良さそうです。

時期に関してはヨコヤマ自体は7月下旬からは確実に出現しているようで、今期の最初の確認は7月28日辺りでした。

7/28のヨコヤマ。外灯のもの。

昨年は9月の事情は調査しませんでしたが、今期は9月も訪れる機会がありそうなのでその辺の情報も得られるといいですね。

出現率に関しては巡り合わせが大きいので参考程度のものですが、今期の夜高尾ではヨコヤマの出現期間の出現率は3/4とかなり高いです。

8/19のもの。外灯にて。

カミキリムシやヨコヤマの採集経験がある方ならば、それなりの可能性で出会えると思います。

シーズン後半ぐらいの頃合いだとは思いますが、まだまだ狙える虫なので興味のある方は早めに訪れることをおすすめします。

ヨコヤマヒゲナガカミキリはとてもいい虫ですよ。
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次回。昼のヨコヤマ探しとオオトラ狙い編です。

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前回の記事です。ヨコヤマに出会いつつより珍しいアカエゾゼミなどにも遭遇しました。
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昨年のイヌブナルッキング成功記事です。ヨコヤマ狙いなら参考になるかもしれません。
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今期7回目の観察記。1から読むならこの記事より楽しめます。夜高尾の情報が満載です。