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植物や外灯に来る茶色い蛾みたいな虫の正体は?チュウゴクアミガサハゴロモ

色んな植物についている蛾?

蛾みたいな印象のこの虫、実は蛾や蝶の仲間ではない。カメムシの仲間。

およそ夏ごろから秋にかけてお世話している植物やその辺の木々、外灯周りなどに茶色い枯葉のような2枚の翅をもつ蛾のような虫が目につくはずです。

蛾にしか見えないこの虫の正体はハゴロモ科のチュウゴクアミガサハゴロモ。

近年分布を拡大している外来種の昆虫です。

色々な植物から汁を吸う奇妙な生き物を紹介します。

チュウゴクアミガサハゴロモとは?

チュウゴクアミガサハゴロモはカメムシ目ハゴロモ科の非常に長い名前を持つ外来種の昆虫です。

葉の上にいる事もあればこのように汁を吸っていることも多い。

成虫の色は茶色をしており、翅の外側に白っぽい点模様があるのが分かりやすいです。

類似種には在来のアミガサハゴロモがいますが、在来は緑身を帯びていることから判別は簡単です。

チュウゴクアミガサハゴロモ(左)とアミガサハゴロモ(右)右の在来が緑味を帯びている。

広食性の昆虫であり、草本~木本まで実に様々植物を利用する戦略を取るため、その分布の拡大はすさまじいものがあります。

その侵略性からか今年は私の地域でも急に見かけるようになり、一気に見つける頻度が増えました。

成虫はおよそ真夏の8月頃から見かけるようになり、10月下旬頃まで見かけます。

知らないだけで大量についている可能性がある。確認してみましょう。

植物の茎や枝に張り付くように静止し、汁を吸っています。

幼体は白い色に毛むくじゃらの衣をまとっており、まさにハゴロモの名にふさわしい姿をしています。

蛾じゃないの?

このチュウゴクアミガサハゴロモ、特に昆虫になじみのない方などからすると植物についている点や外灯にも飛来する点から蛾の仲間と間違われているケースがあるようです。

アメリカピンクノメイガ(左)とチュウゴクアミガサハゴロモ。左は蛾の仲間で止まり方は確かに似ている?

確かに派手に動かず、翅をもつこの虫を蛾の仲間と勘違いする気持ちはよく分かりますね。

しかし目レベルで異なっているため、その体のつくりは全く違います。

虫初心者の方で分かりやすいのは鱗粉の有無でしょうか?

触れてみると蛾は粉が付きます。チュウゴクアミガサハゴロモはそういうものはなく、パチンと跳ね上がるように飛ぶはずです。

馴染みのないハゴロモという昆虫

ハゴロモは日々の生活ではほとんど馴染みのない生き物です。

昆虫としては小さめなので興味もなければ気が付かないかも。

家庭菜園やお庭の管理をしている方ならば目にするかと思いますが、カメムシの仲間で小型種なのでおおよそ茎や枝周りでしか目にしません。

チュウゴクアミガサハゴロモと同じハゴロモの仲間をいくつか挙げておきます。


これは見たことがあるという種類がいるはずです。

アオバハゴロモ
明るい色合いのハゴロモ。草本にもよくついている。

ハゴロモの仲間の中で最も身近と考えられる種類です。

鮮やかな水色に緑を混ぜたような特徴的な色をしており、草本~木本まで幅広く利用します。個体数も多いです。

スケバハゴロモ
反射光でキラキラしている美麗種

時折見つかる透明な羽を持つハゴロモです。見つけると嬉しいです。

アミガサハゴロモ
外来種と似た姿の在来種。緑味を帯びるので実物では簡単にわかる。

在来種ですが、最近目につくのは外来種が多いです。

チュウゴクアミガサハゴロモは害虫なのか?

植物の汁を吸うハゴロモの仲間ですが、似たような性質を持つ生き物としてアブラムシの仲間が挙げられます。

外来種セイタカアワダチソウについて移入してきたセイタカアワダチソウアブラムシ。

彼らは吸った汁を糞尿として撒くことですす病を引き起こす等、吸汁だけでなく病害も引き起こすことから厄介な虫として知られています。

実はこのチュウゴクアミガサハゴロモにも似たような性質があることが指摘されています。

神奈川県農業技術センターでは今年の8月にこの外来種についての報告がなされています。

枝を利用し、汁を吸う彼らは糞尿も植物上で行う。養分に富むその汁を病原菌が利用する。

それによればすす病が引き起こされることや枝部が衰弱、枯死する可能性などが指摘されています。

この虫は好きな植物に傾向があるのか同じ地域でもよくついている木とそうでない木があるようです。

好きな木には相当数の個体数がついており、枝の先端にかけて葉が落ちていたり、すす病らしき被害が確認できました。

加えて昨年はいなかったのに翌年には急激に確認数が増大するなど広食性を生かした分布の拡大が見られます。今後ますます注目を集める可能性は高く、害虫と呼べるでしょう。

広食性の脅威

チュウゴクアミガサハゴロモですが、同報告にて利用する植物について述べられています。

マグワにはハゴロモの仲間が確かによくついている。

これによれば「本種は広食性で、カバノキ科、クワ科、ブナ科、マメ科、モクセイ科などの寄生が報告されている。本県においては、モクセイ科、ツツジ科、モチノキ科、ニシキギ科、ヒノキ科およびフトモモ科樹種における寄生を確認している。」と記述されています。

シソ科の草本にさえついていた。町中でも見かけたことから利用樹種は相当広い。

私はこれにミカン科とシソ科への加害も確認しており、特にミカン科への嗜好性が高いように感じています。

今回の記事はミカンについた個体たちで、片面から見ただけでも相当数ついているのが見て取れました。

これに加えて報告のある科の植物たちが利用できるとなると、おそらくほとんどの植物を利用できるのではないでしょうか?

出現期間の広さもあって拡大ペースは早いのかも

広食性昆虫の恐ろしい所は大量発生の可能性を秘めているところです。昆虫は餌資源がある限り増殖することができます。

その一例が北海道を代表するマイマイガやクスサンの大量発生になります。

チュウゴクアミガサハゴロモの幼体。かなりの数が見られたので定着している。

実はマイマイガやクスサンは蛾の中でも実に多くの植物を利用することができる種類なんですね。マイマイガなどは100種類以上の植物を利用すると言われています。

このチュウゴクアミガサハゴロモも詳細なポテンシャルは不明ですが、ここ数年で見かける機会が増えたことを考慮すると数年後には問題になっている可能性があります。

汁利用なので浸透移行性農薬が効果的。見かけたら初期段階で手を打ちたいところ。

とはいえ主に枝利用である点を考えると、幹を食い木々を枯らすクビアカツヤカミキリや果実に直接加害するカメムシ類と比べると脅威度は低いと推測します。

一方でお庭の植物など身近な植物でも利用できる点は侮れません。

この虫は農家さんや植木屋さんだけではなく、植物に関わっている全ての人に害をなす可能性があるという点ではその影響は小さいながらも大変な相手になるのではないかと思いますね。

引用ページ
"令和6年度病害虫発生予察特殊報(第1号)" ,神奈川産業センター,令和6年8月14日,
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/108747/20240814tokusyuhou.pdf

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斑点が出る場合にはハダニの仲間やグンバイの仲間などが考えられます。