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高尾山で見かけたギンリョウソウやムヨウランなどの腐生植物と半共生のラン科エビネの大株

高尾山は植物観察に最高


初夏の植物探しが最高に楽しい高尾山。温かい年には4月後半にはギンリョウソウが出始めます。

こんな真っ白な姿でありながらちゃんと植物です。

多くの植物が持つ緑色の姿は、理科や生物の授業でおなじみの葉緑体が持っている色です。

真っ白な姿ということは光合成をせずにどうにかして栄養を得ているということになります。

そこで関わってくるのが土中に生息しているカビの仲間などを始めとする菌類です。

ギンリョウソウは土中の菌糸から栄養を得るという変わった生態が注目を集めます。

ところが実は緑色の多くの植物も土中の菌類や微生物と共生して不足する栄養を得ています。

ギンリョウソウやムヨウランなどの腐生植物が面白いのは、菌糸を通じて土中と地上の植物を結ぶ生態系を覗き見ることができるからです。

腐生植物が好む環境とは?


彼らが生える場所はすなわち菌類が好む環境になります。

写真の通り湿り気は高確率で植物の発見と関連しています。そしてムヨウランならきのこの仲間のベニタケの仲間、オニノヤガラならナラタケ(木を枯らすキノコ)の菌糸など、特定の菌糸と連携を取るものもいます。

そのため、闇雲に探すよりも菌のことを学んだほうが楽しく探せます。

極論見つからなくても土を眺めて土中の菌糸に思いを馳せることができます。発見できることは本当に稀です。

高尾山で見かけたムヨウラン。無葉(むよう)の名の通り葉がなく、葉緑体を持ちません。

樹木と共生するベニタケの仲間などの菌糸とつながることで、栄養を得ます。ベニタケの仲間はコナラ類などの近くで見つかる事が多く、(体感)コナラやクヌギが優先する林床下で見つけられました。

下の地面に注目してみると落ち葉が堆積した地面ですね。土中の菌糸が好む環境で、薄暗くジメッとした腐葉土的な環境に見られました。
殆どの方は知らなければ気がつけないでしょう。

ユニークな生態を持つ腐生植物


このように発生環境が限られるからか、彼らは種子散布に関してもなかなか面白い戦略を持ちます。

例えばギンリョウソウは前述の通りジメジメ環境に生えやすいですが、同じようなジメッとした環境を好むゴキブリの仲間に種子散布をしてもらっています。

種子に甘い部分を持つことで、ゴキブリの餌となり、種も遠くへ運べます。

ランの仲間の場合もやはり次の種が恵まれた環境にたどり着ける可能性はかなり低いです。

そのため大量の種を作りそれを風で飛ばすという戦略を取ります。

こちらはエビネというランの種です。

エビネは光合成もしつつ土中の菌糸からも栄養を得るランの仲間です。

1つの実にとんでも無い数の種が入っています。これらが風で飛ぶため、エビネの大株が有ると周辺の沢沿いなどの風が下るエリアにかけてエビネが見つかることが多いです。

こちらのエビネは高尾山ではありません。

しかし今ではまず見られないであろうエビネの大株です。

こういった大きい株があると本当に周辺でよく見つかります。

土中の菌糸と共生する彼らは移植するとうまく成長してくれないことが多いので、下世話なことはせず自然の中で眺めるのが最高の楽しみ方です。

高尾山にもエビネは有るのですが、見つけたものは自生ではなく植栽されたものだと思われます。

いずれにしても菌との共生性のランを見つけるには、それらしい環境情報を仕入れてひたすら歩くしかありません。

具体的な場所を示すことは盗掘被害につながるので避けるべきです。

しかし時期と気合があれば、よくある種類を見つけることは可能です。

しなだれるようなサイハイランも見られます。

この5月6月は多くの珍しい植物が姿を見せる時期でも有るので、薄暗い地面に注目してみると思わぬ植物に出会えると思いますよ。

最後に私が出会った高尾山のランの名前を書いておきます。エビネ、サイハイラン、キンラン、ギンラン、ササバギンラン、ムヨウラン、カヤラン、ツレサギソウ、クモキリソウですね。いずれも1株だけでも山に登る価値がある植物です。探すのはめちゃくちゃ大変ですが、ランと土中の菌などの理解を深めると出会えるかもしれませんよ。
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共生関係で言えばカラスノエンドウとアリの関係も面白いです。動けない植物が身を守る戦術を身に着けた例ですね。

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高尾の植物ではスミレもとてもオススメです。中には珍しい種類も見られますよ。