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庭木のカエデや紅葉の害虫? テッポウムシでおなじみのゴマダラカミキリと緑のアオカミキリ。

大事なカエデの仲間に穴が!


庭木のカエデの仲間はよくカミキリムシに加害されます。

木の幹に注目してみると、写真のように幹が割れて小さな穴が空いていることがあります。これを放置しておくと最悪木々が枯れてしまう可能性があります。

本日はモミジを加害する2種のカミキリの加害痕と見た目を紹介し、対処の仕方や成虫の探し方などを紹介します。

モミジ加害の多くはゴマダラカミキリ

モミジへの加害昆虫で圧倒的に多数なのがゴマダラカミキリです。割合で言えば95%位を占めるのではないかと思います

こちらがゴマダラカミキリの姿です。「こいつ庭にいた」という声が聞こえてきそうなくらいよくいます。

黒のベースに白点がかっこいいカミキリムシです。見ての通り体が太いですね。つまり成虫の脱出痕もかなり大きくなります。

こちらがゴマダラの脱出痕です。

フトカミキリの仲間らしい丸い形をした痕を残します。

後述のアオカミキリの物は横に裂けるような痕で、ゴマダラの物は丸い痕。非常に幅広い樹木を攻撃するので、ゴマダラの場合モミジ以外の植物にも注意が必要です。

脱出痕があればおおよそ誰が潜んでいるか予想できそうですよね。

また、フラスという木くずを探してみるというのも大切です。

カミキリムシは幼虫が木の内部に穿孔する昆虫であるため、潜入されると木くずと樹液が混じった特有の形の塊が出ます。

これがフラスで、穿孔性昆虫の被害を知ることができる唯一の手段です。

希少なアオカミキリの例

紅葉加害の中型カミキリには珍しい物もいます。アオカミキリというカミキリで、割合的には5%以下くらいのカミキリです。

アオカミキリは非常に美しいカミキリで、カエデ科(モミジ)の仲間のみを加害します。

加害痕は40~50cm程の間隔が開く傾向が見られ、ゴマダラのように地際の太い所に集中するようなこともありません。

発生はどのエリアでも多くはなく、虫好きからするとその姿を見ることができればラッキーと言えてしまうくらい多くはない虫です。

成虫出現時期は6月~7月頃で、既に加害済みの弱ったカエデ科に飛来する傾向があるように思われます。

弱った枝などに入るため、枝先が枯れていないか確認してみましょう。

アオカミキリは近隣エリアなどでの採集記録があれば比較的遭遇しやすいですが、情報がない場合普通種でありながらかなり遭遇難度は高いです。

いる場所では町中やショッピングモールの庭木としてのモミジにもいますし、ここのように山地のイタヤカエデにもいました。

絶滅危惧種に登録されているわけでもないんですが、どの場所も個体数は多くありません。もしお庭にいたならば、情報提供することで県によっては貴重な種の分布情報になるかもしれません。

成虫採集には6~7月にカエデ類の幹から枝先を眺めるルッキング採集か、アカメガシワ、カラスザンショウなどの花掬いを行う必要があります。

お庭のモミジが気になる場合には、初夏のこの時期にモミジが加害されていないか見てあげましょう。アオカミキリの発生時期は僅かなので、発見は楽です。

カミキリムシの探し方


正直なところ生体を見つけるのはなかなかに難しいです。

ですから幹に残されている痕跡を頼りにその存在を見つけていくことになります。

例えばこのイタヤカエデには裂けたような傷がたくさんあります。

イタヤカエデは和製メープルシロップであり、カミキリに加害されると甘い樹液が流れて虫がやってきます。

写真中央にカナブンがちらりと見えます。

イタヤカエデなら昆虫の存在、イロハモミジやヤマモミジなどの場合には幹に残る加害痕でカミキリがついているか判断することができます。

庭木的な視点で言えば加害痕にスプレーで幼虫を駆除できます。

成虫の探し方

虫好き、庭木好きの両方が気になるのは「では成虫はどこにいるんだ?」という視点でしょう。

カミキリの場合こうした日当たりの良い枝先を虫網でガサガサすることで捕獲することができます。枝先を叩いて落っことすのも有効です。

また、幹よりもこうした伸びた細枝の方が樹皮が柔らかく、かつ葉などの混雑で衰弱しやすいのでついていることが多いです。ポイントを絞ってルッキングしていくと彼らのフォルムは目立つので発見できます。

モミジをよく観察して虫を探そう


カミキリムシは木を枯らすこともあるため嫌われがちな虫ではあります。

ゴマダラはモミジだけでなくミカンやツツジの仲間など幅広い樹木を加害しますが、アオカミキリに関してはカエデの仲間でしか発生することができません。

そして駆除の場合カミキリムシ類としてまとめて処理されてしまいます。

この記事を見てくださった方にはぜひモミジで見られるメジャーな大型カミキリには2種類がおり、食性の違いや姿の違いなどがあることを意識していただければと思います。
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