いかにも危険そうな赤いカミキリ
5月頃になると赤い毒々しいカミキリムシを目にします。
竹の付近を飛んでいたり白いお花が好きなようでとても目につくのですが、真っ赤な色合いからこいつは危険な虫なのでは?という不安が浮かびますよね。
このカミキリムシには毒はありませんので安心してください!
今回は竹を利用しその害虫と扱われるベニカミキリという美しいカミキリを紹介します。捕獲難易度も低いので初心者にお勧めできるカミキリムシですよ。
ベニカミキリとは?
ベニカミキリは体長15mm程のやや小型のカミキリムシです。
真っ赤な体に黒い触覚や口、そして胸のところに黒い模様がベタッとある特徴がかなり分かりやすいカミキリムシです。
幼虫の利用植物は竹であり、成虫の出現も竹環境に近い場所になります。
九州の森林総合研究所の記事によればベニカミキリは一年一化であるものと幼虫で1年過ごしその秋に羽化し翌年に出る二年一化のものがいると指摘されています。
ただし該当写真に類似種のヘリグロベニカミキリが並んでいることから混同されている可能性も考えられます。
真っ赤な色合いをしたカミキリの中でももっとも普通に見られることから、赤いカミキリを見つけた場合にはまず本種を疑うのが良いと思います。
危険な赤いカミキリムシ?毒は?
この真っ赤な色合いを見て疑いの目を持つのは自然相手に対して正解です。
ベニカミキリに毒はありませんが、自然界には真っ赤で毒を持つ生き物というのが多く見られます。(赤いクワガタことヒラズケンスイやドクガの幼虫など)
基本的には赤や黄色、変な光沢のある虫は分からなければ触らないということを徹底した方がいいです。
ではベニカミキリは毒をもたないのになぜ赤色をしているのでしょうか?
このお話は擬態に共通するトピックとなります。
擬態には毒をもたない生き物が毒を持つ生き物であるかのようにふるまうベイツ擬態と毒をもつものと毒をもつものが似たような姿をしているミュラー擬態という2種類のものが有名です。
ベイツ擬態の例はジャコウアゲハ(毒)に擬態するアゲハモドキなどが挙げられます。
ベニカミキリの擬態先は不明ですが、赤色の有毒生物はいます。
何千年の進化の歴史の中で赤色の個体がなぜか生き残れたということから自然界にはこうした赤色を避ける何かが働いていると考えられますね。
同じ赤いカミキリとしてはホシベニカミキリが身近な種として挙げられます。
タブノキという海岸沿いに自生することが多い植物を利用するのですがタブノキが街路樹として植えられることが増えたので身近な場所でも目にするようになりました。
最もレアな種類はアカジマトラカミキリです。(写真無)
ケヤキの古木を利用すると言われているカミキリで、神奈川西部ではいると思われるもののなぜか見つからない種類と言われています。
ベニカミキリにそっくりなヘリグロベニカミキリ
上記2種に加えて雑木林環境でも赤いカミキリを目にすることがあります。
カエデの仲間やコナラ?エノキなどの枯れ木についていることも見たことがあります。この虫はヘリグロベニカミキリと言い、餌資源の幅が広いものの対応樹種も広いためあまり見つからないカミキリです。
ベニとヘリグロベニは見た目こそそっくりなのですが、ヘリグロには背中に1対の黒点があるという特徴的な違いが見られます。
ここに種の多様性の面白さがあり、ベニカミキリは竹類を専門に食べるので一度発生している環境を当てることができれば長い間それなりの数を観察することができます。
一方でヘリグロベニは利用可能樹種が多いことから局所的にたくさん見られるというのは少ない印象です。
餌資源の利用方法によって出現の度合いが変わるというのはよくある話なので、虫を捕まえたいという方は意識してみてください。
例えばクワガタは山に全般的に広くいますがカブトムシは落ち葉を貯めた腐葉土がある場所に集中しますよね。そういう感じです。
ベニカミキリを捕まえるなら?
ベニカミキリはその色合いから飛んでいても目立つ昆虫です。
毒が無いと分かればその色は魅力的なものに変わりますよね。
ベニカミキリはお花が大好きな昆虫です。春~初夏にかけての昆虫は白色のお花が大好きであるため、竹がある山地、雑木林環境の近くの白いお花を見ているといる可能性が高いです。
活動時期は5月~6月下旬ごろまでで5月下旬頃が晴れも多くて見つけやすいと思います。
おススメ樹種はミカンの仲間やクリのお花、ウツギ類、低木であればコデマリなどの小さい花によく来ています。
特にこの花の嗜好性が高いというのはあまり感じられず、チョウの仲間やコガネムシの仲間などでにぎわっているお花であれば目にします。
また、竹林の外周を巡回するというのもおすすめです。
竹の樹間をよく飛翔しており、衰弱した竹に産卵しようとしているものと思われます。
竹林には3~4月頃に打たれた竹が積み上げられている場合も多いです。
こうした春の竹というのは成長途中のものが多いので成長しきったものよりもでんぷんの含有量が高いと言われています。
竹を幼虫の餌資源とするベニカミキリにとってこの時期のタケノコ堀のついでに打たれた環境は非常に適した場所なのでしょうね。
ある意味ではベニカミキリは昔のクヌギコナラ薪炭林環境のように、人間が適度に手を入れることで生活してきた虫なのかもしれません。
ベニカミキリは毒の無い虫です。
しかし赤い虫には毒を持つ者も多いですから、カミキリムシらしい触覚と口、そして竹林の付近であるなどの昆虫の生態に合わせた採集をすることでそのリスクを極限まで下げてみてください。
目立ってかわいいいい虫ですよ。
pljbnature.com
カミキリ採集に興味のある方におすすめの記事です。