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外灯や壁に来る細長い蛾みたいな虫の正体は?初夏や秋に大量発生することもあるヒゲナガカワトビケラ

細長い蛾が大量発生

蛾の仲間に見えるこの虫の正体はトビケラという昆虫。大量発生することも。

およそ初夏と秋ごろの二回、主に水辺が近くにあるような環境にて外灯や壁に大量の細長い蛾のような虫がくっついていることがあります。

こんなに細長い蛾がいるのかと一見思ってしまうかもしれませんが、その正体はトビケラという昆虫の仲間かもしれません。

そこで今回は細長い姿をしたヒゲナガカワトビケラと細長い蛾の仲間の一部などを合わせて紹介し、彼らを通じた自然の面白さを見ていきたいと思います。

ヒゲナガカワトビケラとは?

ヒゲナガカワトビケラはヒゲナガカワトビケラ科の昆虫の1種で、昆虫としてはカゲロウ目の仲間の虫です。

季節になると壁などにこのように張り付いていることがとても多い

体長は15㎜~20mm程度、横幅は非常に細く、3~4㎜ぐらいの非常に細長い姿をしています。

トビケラの仲間は水中と陸地を行き来する非常にユニークな性質を持つ昆虫であり、身近で例えると水中のヤゴから陸地のトンボへと環境を変えるトンボ類と近いような行動を取ります。

食性は詳細は不明ですが、主に流水息の岩の下に張り付けた特有の巣のようなものを作り、そこに流れ込む有機物を摂食して過ごしています。

トビケラがいたやや上流域の川の雰囲気

時期になると蛹の状態で石の上などの陸地へ移動し、そのまま成虫になります。

羽化のトリガーがシビアなのか一斉に成虫が出現することが多く、河川敷周辺の外灯などに大量に発生しパニックを引き起こしたりすることがあります。死骸が堆積して車のスリップ事故などにつながることもあり危険です。

成虫は水中、陸地共に多くの生き物の餌資源としても有用であると考えられ、我々人間もこれらの幼虫を利用してきた背景が実はあります。

蛾とヒゲナガカワトビケラの違い

蛾の仲間はオールシーズン外灯や壁に出現しています。

こんな感じの雰囲気が似た蛾は確かにいる。写真は蛾の仲間。

そして綺麗な水辺に主に生息していることから特に都市部の周りでは見かける機会は減ってきているものです。

ゆえにトビケラの仲間を認識されている機会が減っており、これによりこの虫が壁や外灯に来ていると蛾のような虫にしか見えず細長い蛾に見えます。

実際のところ蛾の仲間には細長い種類のものもおり、ヒゲナガカワトビケラは雰囲気が蛾に近い点もありますので勘違いしてしまうのもよく分かります。

同じく蛾みたいな虫として話題のチュウゴクアミガサハゴロモ。蛾に似た虫はホットトピックである。

当ブログでは同じく蛾に似たチュウゴクアミガサハゴロモの記事が人気となっていますが、これもなんとなく蛾に似た雰囲気を持っています。

翅が大きくべたりと張り付き、外灯や植物にやってくるチュウゴクアミガサハゴロモと姿は細いが外灯や壁に張り付いて止まっているヒゲナガカワトビケラ。

人々が蛾と勘違いする生き物はきっと身近な壁に張り付いていて翅を持つ物をそう認識するのかもしれません。

実際のところ細長い蛾とヒゲナガカワトビケラの判別はとても簡単です。

触角が非常に長いので蛾の仲間との判別は簡単

ヒゲナガとは漢字で髭長を指します。虫においてはこの字がある場合触覚が長いことが非常に多く、このトビケラもよく見てみると頭部に非常に長い触覚が2本ついています。

体長を越すほどの長さがあるため、細長い蛾とので判別に困ったらここを確認しましょう。

後はシンプルですが、出現環境が必ず水辺の近くになります。幼虫が必ず綺麗な流水息にいるためですね。

トビケラは跳ぶので虫嫌いの方は注意

このトビケラですが、人に嫌われる要素を持っています。

張り付いているトビケラに触れてみると、びっくりするほど暴れる

それが超速の動きです。壁や外灯に張り付いている本種は非常におとなしく静かなものなのですが、逃がそうと思ったり捕まえようとして触れた瞬間に飛びあがり動き回ります。

その速度はゴキブリをも凌駕し、虫に慣れている私でもオオウ!とリアクションしてしまうほどです。

トビケラは本来忙しなく飛び回っている生き物です。

特に壁などで刺激したケースでは次の止まり場としてあなたが選ばれる可能性も高く、腕や体にくっついて這いまわった後にどこかで大人しくなるか、再び飛んでいく場合が多いです。

虫嫌いな人はパニックになること間違いなしなので、このトビケラの扱いには気を付けましょう。

綺麗な水辺に出現する

こんな虫見たことがない?日常的にみる?両極端の反応があるはず

ヒゲナガカワトビケラなのですが、この記事を見ている人はそうそうこいつなんだよ!この蛾みたいなやつ!という反応と、何だこの虫?こんなの見たことないよという両極端な反応になると考えられます。

これはこのトビケラが比較的綺麗な水辺に出現し、流速がそこそこあり、小さな岩が積もった様な環境に出現するためです。

カワゲラやトビケラの仲間は水の指標主として扱われる程水にうるさく、基本的にはとても綺麗な水辺に出現します。

比較的綺麗な水辺に現れるホタル

分かりやすい例でいうとホタルがいますよね。ホタルよりもワンランク上の水辺に出現するのがトビケラ類やカワゲラ類の多くです。

都市部ではホタルが綺麗な水辺の例として紹介されますが、実際はそれよりも上があるんですね。

このラインにはアブやブヨなどの害虫も出現します。

トビケラを撮影した場所の夏場には吸血性のウシアブが!

特にトビケラが見つかるような場所では吸血性のアブの被害なども同所的に見られる場合がありますので、色々と情報を得るのに役に立つ虫です。

逆を言えばアブやブヨがいるならばおおよそこの仲間も見られます。キャンプや県外などに遊びに行く際に危険生物に関する情報をネットで仕入れたりする際に役に立ちます。


トビケラを利用する人と生き物

ヒゲナガカワトビケラという種名にはピンと来なくてもトビケラにはピンときませんか?そうです。食利用されてきた背景があるあの虫です。

なかなか食べるという発想には現代人はならないが、大量にとれるという点では優秀な食材なのだろう

ざざむしの名でおなじみの佃煮などにする昆虫の正体こそこのヒゲナガカワトビケラたちのトビケラ類なのです。

つまり生息環境が良ければ佃煮にしてしまうほどとっても取り切れないぐらいの個体数がいます。前述のとおり彼らは普段は石の裏などにいるため目につきません。

トビケラ幼虫の写真がないのでカワゲラ。こうした石の裏側に潜んでいる。

しかし彼らの生息域へ足を運べばカモ類やカラスなどの鳥を始めとした生き物すらもこの仲間を食べているような動きをしていることがあります。

イメージとして豊かな河川。岩の多い場所に特にいる。

個体数が多い生き物というのはすなわち捕食によりそれだけ個体数が減るということですよね。

自然界では彼らは上位捕食者の貴重な餌資源として必要な存在です。

特に陸上へ進出した成虫は陸上の動物たちの餌となるだけでなく水辺のトンボ類やカマキリなどの肉食性昆虫の重要な餌資源となります。

水中から陸上へと進出するハリガネムシにはその輸送役が必要である

なお、食物連鎖を通じて肉食性昆虫へ移行するハリガネムシは、水中から陸地へ移動する虫の体内を経由すると言われていますが、トビケラの利用率は低いようで、カワゲラやカゲロウ類を利用するとの話があります。

これは生体的な視点から見るとイメージが湧きやすいかと思いますが、ハリガネムシは水中の泥上の部分にたまごがあるとされています。

こうした水辺に堆積している泥をハリガネムシは利用する

トビケラは流水息の石の下に巣を張り、そこに溜まるように流れ込んだ有機物を摂食すると言われているので、トビケラにハリガネムシの元(シストという休眠状態)が入ることは少なく、逆にカゲロウやカワゲラのような底の有機物類を食べるような生き物がハリガネムシの宿主(寄生する相手)としては有用であると考えられています。

このように同じ水の中にいる生き物で成虫が陸地へ出る物であっても、僅かな生態の違いなどが異なりそれが多様であることで生態系は成り立っているのです。面白いですよね。

トビケラが大量発生!お家の壁などが虫まみれ

細長い蛾のような虫ことヒゲナガカワトビケラは環境が良いと大量発生します。

知らないと非常にびっくり困惑してしまうこの虫との遭遇ですが、この虫自体に加害性は無く毒もありません。

また、成虫は食事をしないことからも寿命が非常に短く、1週間程度と言われています。

1年の内彼らは2回ほどの発生期があるため、年に2週間ぐらい彼らがたくさん出る時期があります。

そしてその前後には少数ながらも発生し続ける期間がありますので、年の1月半ぐらいは彼らを頻繁に見かける機会があると言えます。

しかし、安心してください、彼らは蛾とは異なり水中に卵を産みますから、植物が食べられたり、外灯が卵で覆われるということもありません。
短い命の彼らをそっと見守ってあげて欲しいですね。

ただし橋などでの大量発生は非常に危険ですので、そのわずかな時期の大量発生場所の利用は避けましょう。

今回は蛾と勘違いされるヒゲナガカワトビケラにスポットを当てて紹介しました。

いるところには大量に、いないところにはほとんどいない面白い生き物です。ぜひ探してみて、見かけたら突いてみてください。

それからざざむしの佃煮を見つけたら見てみましょう。幼虫の姿を確認できますよ。

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