珍しい色合いをした緑色の蛾
秋は日が沈む時間も速くなることから外灯にやってくる昆虫が目につきますよね。
蛾の仲間には日没直後に活発に飛来するものがおり、特に秋には変わった色をした蛾がやってくることもあります。
その中で緑色と灰色を混ぜたような迷彩色をした種類がいます。
この蛾はケンモンミドリキリガ。晩秋を代表する冬夜蛾(キリガ)の一種であり、人気のある虫だったりします。
ケンモンミドリキリガとは
ケンモンミドリキリガはヤガ科に所属する蛾の仲間の1種です。
緑ともコケとも捉えられる特徴的な色合いをしており、茶色や灰色を交えて迷彩のような特有の色合いをしています。
夜行性の蛾であり主に11月~12月の寒い季節の日没直後に外灯に飛来するため、その色合いと相まって印象に残る種類です。
成虫はおよそ2㎝程度で目につきやすいサイズ感です。
幼虫は主にバラ科を利用しているとされ、サクラ類などを利用することから出現環境は広いと考えられます。
しかしながらLED化の進む現在では寒い真冬にわざわざ外出する人も少ないので見かける機会は少ない印象です。
冬夜蛾(キリガの愛称)の1種として愛好家から人気の高い1種と言えます。
地衣類擬態とされる蛾
ケンモンミドリキリガの色合いはそれ単体ではかなり目立ってしまいます。
しかし迷彩服が街中では効果が無く、緑の中で溶け込むようにこのキリガの模様も自然下にいるとかなり同化してしまいます。
ケンモンミドリキリガは空中湿度の高い環境や木々に張り付いている地衣類の仲間に擬態していると考えられます。
例として人工物ですがまだらな色合いの中にいるとこのように色が大きく違っても溶け込んでしまいます。
木々や人工物には地衣類の仲間がついていることが多く、特に利用樹種として知られているチドリノキが生える環境などは沢に沿った環境であることも多くこの地衣類擬態は有効であるように感じます。
類似種には色合いと模様が似たゴマケンモンがいますが、こちらは春の蛾であることとケンモンミドリキリガは秋の蛾であることから違う種であると分かります。
寒い冬に観察できる冬夜蛾の仲間
蛾といえばおよそ春先から秋まで幅広く出現する印象が強いかと思います。
キリガの仲間はその愛称で冬夜蛾と呼ばれるようにおよそ晩秋から春先までの気温が10度を下回るような環境の夜に活動をしています。
ケンモンミドリキリガを始め日没直後に飛来が認められるケースも多く、冬季の早い日没と相まってその気になれば探しやすい種類と言えます。
キリガの仲間は多くが外灯をはじめ各種灯にやってくる他、糖蜜と言ってジュースやカルピスなどの甘い汁で誘引できる性質があります。
そのため、LEDなどではない外灯があったり、日没直前に糖蜜をしかけることでちょっとした緑のある場所でも見つけることが可能です。
正確な食草は不明ですが、観察地域の一つである高尾の麓では食草に該当するヤマザクラやチドリノキが豊富にあることから簡単にそれなりの個体数に遭遇することができました。
キリガの仲間は私自身もそうでしたが探し始めてみると想像以上に面白く、秋の終わりにこんなにたくさんの蛾たちが活動しているなんて知らなかったと新しい世界を見た気分が味わえるので面白いです。
特に寒くなってきてからピークを迎えるという点がユニークで、意図的に寒い夜に繰り出して活動しないとなかなか出会えないというのがいいですね。
緑の蛾に毒はある?
蛾といえば気になるのは毒の有無ですよね。
緑色の幼虫には毒を持つ者がいますが、緑色の成虫で毒があるものはいません。
緑色の蛾というのはそこまで多い種類ではありません。特に町中で緑色となればアオシャクの仲間やオオミズアオなどかなり限られるはずです。
もしこのコケに擬態した蛾に興味がわいたならば触れてみるのもいいと思います。
キリガの仲間には擬死するものも多く、クワガタが衝撃を受けて落下するようにポロっと落ちることがあるはずです。
蛾の擬死行動にどのような利点があるのかは不明ですが、科が違っても蛾の仲間に同様の行動が見られるので何かしらの優位な点があるはずです。
ヤママユの様に巨大種であれば枯葉に見えるのですが、草丈に落下して欺くのでしょうかね。
毒はありませんが面白い行動は見られますので、戯れてみるのはお勧めです。
目を凝らしてみるときっと外灯周りなどで見つかると思います。この色合いは本当に綺麗なのでぜひいた際にはじっくり見て欲しいですね。
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