水辺に現れる黒と白のトンボ

初夏から真夏頃にかけて水辺を歩いているとトンボがきっと目に入るはずです。
その色は黒と白!?珍しいのかもと気になりませんか?
オニヤンマやギンヤンマのように大型で身近なトンボは多くの人が一度は見たことがあるかと思います。
それ以外にも赤トンボや青っぽいシオカラトンボの仲間など身近なトンボには色がありますよね。
今回紹介するコシアキトンボはモノトーンが特徴的な色をしています。どんなトンボなのか見ていきましょう。
コシアキトンボとは?
コシアキトンボはトンボ科のトンボの1種です。

成虫は主に開けた開放水面に出現し、その模様は黒と白。ベースは黒で腰の一部が白色に抜けているような印象を受けるパンダのような模様のトンボです。
黒字をベースに見ていったときに腰の部分が抜けていることから腰空きトンボと名付けられたのが由来であると言われています。
実際には腰が空いているという感じはなく、むしろこの白模様の方が目立つように思います。
成虫は主に5月から8月頃にかけて出現し、開放水面の上を俊敏に飛び回ります。

水面上では縄張りをパトロールしているらしく、同種で非常に激しい追い回しの戦いを繰り広げています。
成虫は肉食性であり、同じく水面環境に出現する蚊の仲間を始め色々な昆虫類を捕食しています。
コシアキトンボの生息環境について
コシアキトンボの生息地はトンボの仲間であるために水辺環境になります。

ひとえに水辺と言ってもトンボの生息環境は複雑に分かれており、水が流れる流水息と止まっている止水域、周辺環境が開けているのか森なのか、水辺は細いのか太いのか、周りは明るいのか暗いのか、などなどの要素は種により異なります。
コシアキトンボは開けた水辺環境に出現しますが、田んぼや湖、沼など水面が広く空いていれば水の条件にはうるさくない印象があります。
例え人工物でできた水辺であっても水辺の上面が広く空に開いていればこのトンボは出現するようです。
飛翔力と継続飛行能力は高く、基本的に飛び続けているトンボです。

遭遇するときにはそのほとんどが水の上を楽しそうに(人の主観)飛び回っている場面になります。が、個体数が多い所では黄昏ヤンマのように枝に止まっているコシアキトンボを見ることができました。
普段飛び回っている分印象が大きく変わる瞬間です。
個人的なこのトンボの観察では抽水植物もないような開けた開放水面が最も良く見つかるように思います。
黒と白のユニークな模様が綺麗なトンボ
コシアキトンボの模様は類似性がなくなかなかにユニークなものだと思います。

おおよそ生き物にはスズメバチとアシナガバチのように似た姿のものがいたり、ジャコウアゲハの姿を真似るクロアゲハ類のように擬態していたりすることがありますが、コシアキトンボの配色は似たものはあまりありません。
黒と白というとゴマダラカミキリやモンキアゲハなどが似たような部分的に白の配色を持っています。哺乳動物でいえばパンダ。

スズメバチの黄色と黒の配色や赤と黒のような派手な色が警告色と言って他者への危険性を示すサインであるように、コシアキトンボがこの配色を持つことにも意味があると思われます。
昆虫ではありませんが例えばシマウマの色を縞々ではないものと縞々のものに分けると縞々でない方が吸血性昆虫により攻撃されたという話があります。
コシアキトンボのその色の効果は不明ですが、捕食者や天敵の中にこうした色を見づらい何かしらの要因があると考えられます。
人間的な視点で見るとコシアキトンボの色は非常に見つけやすいと言いますか、黒色の部分は水面の反射と相まって見えにくいのですが白色の部分がトンボの飛翔速度と相まって素早くちらついて見えます。

虫体は捕らえづらいので、人の視点で見ると移動先を読みにくくするような効果があるのかなと思います。
虫は紫外線が見えているのでその色合いや効果には人の視点からでは読み解くことができない要因があります。
コガネムシの光の反射実験を行ったものでは光の反射の内右巻きと左巻きの光の内右巻きのものを反射しない(肉眼では見えない)ため、人には緑に見えていても紫外線を介してみるとコガネムシの色は黒に見えてものに溶け込んでいるというような研究があります。

コシアキトンボの派手な色も人以外の目で見ると驚くべき効果があるのかもしれません。
コシアキトンボと同所的に見られるトンボ
コシアキトンボはそこまで珍しいトンボではないため、広い水辺に行けば出会えるトンボです。

しかし必ずいるわけではありませんので、同じような水辺環境に出現するトンボを紹介してこのトンボがいればコシアキトンボもいるかもねという種類を紹介します。
オオヤマトンボはコシアキトンボと同所的に居ることが多いですね。
オオヤマトンボは特に広い開放水面を好むトンボであるため、オオヤマトンボがいればコシアキトンボもいる可能性があります。

逆にコシアキトンボがいるからオオヤマトンボがいるとは言い切れません。
ショウジョウトンボは広い止水域に出現するため、コシアキトンボと同所で見られることがあります。

止まる傾向が強いため、水面にはコシアキ、水面の外周などにはショウジョウトンボというような配置が見られます。真っ赤なトンボなので分かりやすいのもいいですね。
シオカラトンボは部分的に見られることがあります。

コシアキトンボがいればシオカラトンボもいる事がありますが、シオカラトンボがいればコシアキトンボがいるとは言い切れません。シオカラの方がより人の環境に近いという印象があり、より人工物などで見られることが多いですね。

写真はありませんが、抽水植物のある開放水面ではギンヤンマやウチワヤンマなどが同所に見られることもありました。
コシアキトンボの探し方
色合いが面白く、飛翔が速いコシアキトンボの採集を楽しみましょう。

前述のとおりこのトンボは開放水面に出現しますので、そういった環境を探していくのが確実です。
グーグルマップなどを活用して青色の水を示すサインがある場所を探してみるのがおすすめです。
その際、池などの外周が入れる環境なのかなども確かめておきたいですね。
水辺環境は水回りが補修されていると水辺に大きく近づけるため、虫の種類の観察がしやすくなります。

そうした条件のいい水辺を見つけたならばコシアキトンボの黒と白色がはっきりと飛んでいるのが見えるはずです。
見えない場合には上のトピックで話した同じ環境に出現するトンボを頼りに探してみましょう。
人によってはそのトンボを見分ける方が難しいこともあるかもしれません。そんな時は公園のトンボ情報などを調べてみることをお勧めします。





その情報にコシアキトンボが無くても、より人気のギンヤンマやオオヤマトンボなどの情報は出ていることが多いです。既存の情報から上手くコシアキトンボがいる環境を読み取りましょう。
採集についてですが、トンボにはメッシュネットが有効です。

空気抵抗が少ないので素早く網を触れる他、空気との接地面積が広い分網が水にぬれたりしても乾燥するのが速いという利点があります。
コシアキトンボはヤンマに負けないぐらい活発に動き回るため、トンボ科でありながらもスリリングな採集が楽しめますよ。水に落ちないよう気を付けながら開放水面の縁に来た個体を狙うのがおすすめです。
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