黄昏時に飛ぶヤンマを求めて

トンボ類はあまり興味の湧いていないジャンルなのですが、身の回りにはそれはそれはトンボが大好きな方が何人かいるため、そうした方の話を聞いているうちにちょっと面白そうだなと思っていました。
特にコバルトブルーが有名なマルタンヤンマは、虫に興味がない人でもタマムシが好きなように、その美しい青色でトンボにさほど興味がない私も見てみたいなと思わせる良さがあります。
そこで今回はトンボに詳しいY君とともにマルタンヤンマで有名な石神井公園を訪れました。
石神井公園の昆虫採集事情
石神井公園での昆虫採集ですが、昆虫採集は禁止されていません。

ですが、トンボ撮影の方とトンボ採集をする人の間で過去に色々と問題が起きているようです。
基本的には採集をして持ち帰るのではなく、ヤンマとの空中戦を楽しんで持ち帰らずに逃がしてあげるのが基本スタンスとしてはいいかなと思います。
都市公園の条例では植物や魚類、貝類鳥類などの採集は禁じられていますが昆虫類は指定されていません。

ですが、こうした条例の部分は拡大解釈されて昆虫採集も禁止だと言うように誤認されている方もいます。公園の指針としては園内の看板にあるように持ち帰らないことをベースと考えたほうが良いのかなと個人的には思いますね。
今回の記事で我々も捕まえていますが、全てリリースしています。
石神井公園のヤンマ事情
石神井公園駅で集合し石神井公園へと向かいます。私はこの公園に興味があったものの結構な距離があるために訪れる機会はなく、初の訪問となります。

公園に入って驚いたのが抽水植物を含む大きな池の存在ですね。湖畔の縁でボケーっとしているだけでも癒やされるようなとてもいい雰囲気をしています。
公園について早々たくさんのトンボたちが飛んでいる場面に遭遇し、これが噂の公園かぁと驚きました。

私はトンボ初心者なのですが、同行のY君は非常にトンボの知識が深く、次々にトンボを見つけてあそこに止まっていますねと教えてくれます。
早々に出現したのがウチワヤンマです。

本当に腹部の先端がうちわのようになっており、特有のシルエットから分かりやすいですね。
いつか見てみたいと思っていましたのでこれは嬉しかったです。石神井公園ではウチワヤンマの個体数は多いようです。
一方でエリアに寄って池の環境が違うからか多いエリアと少ないエリアは別れていました。

開放水面にはよくオニヤンマと間違えられているオオヤマトンボや白い模様が特徴的なコシアキトンボが非常によく飛び回っていました。
トンボ類は個体数が多いと枝先などによく止まっているんですね。この日枝先にはウチワヤンマが非常によく止まっており、目視した多くの止まったトンボはウチワでした。
石神井公園を散策する
石神井の奥側に来ると抽水植物の種類も豊富になり、飛び回っているヤンマはギンヤンマなどが混じってきます。

他にはコフキトンボというのも混じっていたり、シオカラトンボなどのおなじみの種類もいました。

公園自体がとても広いのですが、それに占める池の割合が非常に多く、鳥やトンボにはたしかにいい居場所だなという感じです。
肝心の黄昏ヤンマですが、日中は日の当たらない適度な暗所で枝や幹に捕まっているそうです。それを探しつつ移動していきます。

石神井公園のSNSでツマキシャチホコの幼虫がちょうど朝投稿されており、散策を初めて早々に遭遇することができました。
成虫は結構目にしますが幼虫との遭遇は初めてです。モンクロシャチホコの幼虫に近い雰囲気を持っていますね。

派手なオレンジ色に危なそうな毛と集団で行動しているようです。ツマキだろうと思いつつ調べるのは面倒くさいしいいかと種の特定をしなかったのでふれあいはありません。
広い池の外周を回りつつ黄昏ヤンマの休憩を見ていきます。
多くの場合休んでいるのはコシアキトンボでした。

しかしさすがはY君。
見事に茂みの中に止まっているヤンマを発見し、その姿を見せてくれます。
そのヤンマの種類は...

マルタンヤンマのメスだそうです。たしかに翅は一般的なヤンマと比べるとかなり茶色いですね。にわかからすると羽の色以外はコシボソヤンマに似ているなぁと思いました。

ぶら下がりのヤンマを見つけられたことと坊主は回避できたことで非常にモチベーションが上がりますが、その後はトンボ類の大きな進展はありませんでした。

しかし池の止まり場にゴイサギがいたのは良かったですね。なかなか実物に出会うことがなかったのでゴイサギだぁとちょっと嬉しい気持ちになりましたね。
黄昏時の始まり
日が落ち始め、太陽が真横になったあたりから驚くくらいの個体数のヤンマが地上40mくらいの高所を飛び始めます。

いやはやこれには驚きましたね。
そもそも夕方の時間にこんな池の環境にいることがないので知りませんでしたが、多くのヤンマ類が飛び回っています。
Yくんによればマルタン、ギン、オオヤマあたりが混じっているということで環境的にはヤブやネアカも混ざってくるかもとのこと。

最初は全部同じに見えていたヤンマ類ですが、黄昏時が進むにつれて低所に降りてくるようになり、マルタンヤンマは見分けられるようになりました。
話によれば種類ごとに飛び方のクセなどもあるようで、面白かったですね。

私が初めて黄昏のヤンマを狙ってこれはいいなぁと思ったのは夏らしさですね。
見上げていた明るい空が段々と赤やオレンジに変わっていき、その中を飛んでいる黄昏のヤンマたち。
ひぐらしの鳴き声と合わさってかなり夏らしい光景が日没前の40分ぐらいの時間に凝縮されていましたね。

そんな風景に見惚れながら、隣ではY君が飛翔しているヤンマをこれはギン、あれはオオヤマ、今横切ったのはマルタン!と見分けています。
肝心のヤンマの採集なのですが、これは難しいですね(笑)マルタンは弾丸のように素早く突き抜ける飛び方をするようで、チャンス自体は結構あったのですが黄昏時の見づらさもありかなり苦戦します。
Y君は飛んでいるマルタンの雌雄の判別ができるようですが、一度だけマルタン♂の青色が我々を横切る場面を見ることができました。

なんとか捕獲したマルタンはメスとなり、オスの美しい姿は見ることができませんでしたが、黄昏時に飛び回るあのヤンマたちの姿と美しい風景を見れたらそれだけで満足してしまうぐらい充実した40分ほどの時間でしたね。

今回初となる黄昏ヤンマの採集ですが、とても良かったです。
私と同じようにトンボ類にはあまり興味がないという方でも、あの夏らしい情景の空気感を味わえる黄昏ヤンマの採集は一度経験してみることをおすすめしたいですね。