シンジュキノカワガが無事成虫へ
11月の記事で遭遇していたシンジュキノカワガなのですが、11月頭に終齢幼虫として見つけた個体が蛹となり、12月の五日に成虫として無事羽化してきました。

蛾の繭を無事に羽化させたのは私としては初めてでしたが、わずかな期間でも面倒を見ていただけあり成虫が出現したときにはおお~っと思ってしまうくらいいいものでありましたのでこの美しい蛾の姿と今回の飼育でこんなことをしましたよというのを紹介していきます。
シンジュキノカワガとは?
シンジュキノカワガは中国から偶発的に飛来する偶産種として以前は知られていた蛾の一種です。

幼虫はニワウルシ(シンジュ)を利用し近年では関東などを中心に定住及び大量発生することが認められています。
幼虫はおよそ夏ごろから発生し、秋ごろには成虫が出現します。成虫は晩秋から冬季にかけても記録されることがあり、その時期に虫を探す人が少ないことからもまだまだ発見の事例は多くありません。
幼虫の採集までのプロセスは以前の記事で紹介していますのでそちらを参考にしてください。
蛹化した終齢幼虫
前回の記事で紹介しましたが本記事でも摘要すると11月の頭にシンジュキノカワガの終齢幼虫を採集し、虫かご内で蛹化場所を作成したところ幼虫が蛹化したことを確認しました。
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幼虫はダンボールで作った壁を活用するかと思いきや巻き付けたティッシュを潜って蛹化しました。
事前に昆虫に詳しい方かつシンジュキノカワガの羽化をさせていた方に話を聞くと秋季の例では蛹化から2週間程度で成虫が出現するとの話を聞けました。
そこで11月中には成虫が出現するのかなと思っていました。
シンジュキノカワガが蛹越冬なのか成虫越冬なのかそれとも回遊魚のように死滅してしまうのかはよくわかりません。

しかし近年分布が拡大しているように思えますので温暖化などによって生き残れる個体などが出てきているのではないかなと思っています。
虫かごから縦型のPPボトルに蛹を移し、クワガタ幼虫用のスプーンを立てかけて掴みどころを確保して羽化に備えました。
11月中には羽化せずしかしお尻がピコピコ動いているので寄生や死亡していないことはわかっていました。

もしかして蛹で越冬する気なのかな?と思っていましたが、12月5日の早朝にふとPPボトルを見ると!
シンジュキノカワガが羽化していました。まだ翅が乾いていません。

シンジュキノカワガはPPボトルの壁などは平気で登れるようです。そして羽化のタイミングは日の出前から直後ぐらいになりそうですね。
成虫を一時的に隔離する
この日は日中は仕事だったので急いでシンジュキノカワガが羽を伸ばせる場所でかつ飛び回ってもすれないような環境へ移動します。

これはオオクワガタ幼虫用に仕入れていたマットのガス抜き用のケースと、コバエを防ぐ用のヒーター用カバーを用いました。
まだ翅が乾いていないので締めるわけにもいかず、かといって狭いところで放置すればボロボロになってしまうからです。
この時期は気温も低いので活動自体は低いと考えられます。しかしPPボトルはどう考えても駄目でしょう。
この広い容器で一時的に隔離します。頼むぞ~

夜になって帰ってくるとこのケース内で翅がしっかりと乾いたシンジュキノカワガが見られました。
日中に日のあるタイミングで姿を撮影しておきたいので、翌朝を待ちます。

おはようシンジュキノカワガ。ということで無事にシンジュキノカワガの姿を撮影することができました。標本にしたら後程美しい前翅と後翅の対比も紹介しますが取り急ぎ生存時の姿を紹介しておきます。
シンジュキノカワガは樹皮に擬態している
シンジュキノカワガは通常は翅を閉じており、いわゆる蛾的な止まり方はしません。

前翅は樹皮のように灰色をしており、凸凹としたような模様があります。繭の時もそうでしたがカモフラ性能は高そうです。
一方で腹部や後翅には鮮やかすぎる黄色が見られます。
生きていくには不便なように思えますがもしかすると人の目では黄色に見えているだけなのかもしれません。

シンジュキノカワガは標本にすると非常に映える昆虫です。同じように後翅に美しい色を持つものにカトカラというキシタバの仲間がいます。
蛾の仲間の中でも大変人気がある仲間なのですが、こうした色合いなこともあって昆虫界隈ではこの虫が話題となっています。
自然化でシンジュキノカワガの成虫を捕まえるのは大量発生の場所ならともかくこの擬態性能などもあってなかなか大変だと思います。

幼虫を捕まえて今回のように羽化させてしまうのが最も綺麗に確保できるでしょう。
蛹化から成虫は結構適当だった
実は蛹を羽化させる経験は初めてだったのですが、シンジュキノカワガは割と適当でも羽化させることができました。

冬季の期間では蛹化から羽化まで約1か月もの期間がかかりました。
秋の事例では12日ごろに蛹化して26日ごろに羽化した記録がありましたので積算温度などをトリガーにしているのかなと思います。
時期に応じて細かく変化していく可能性が考えられますので、期間は広く見積もっておくのがよいかなと思います。
蛹化場所と特性についてはシンジュキノカワガは身を隠すような隠れ家を作りますがこれは樹皮や木材を削って作っている可能性があります。

今回ダンボールで蛹化させるとそうした隠れ蓑は作られませんでした。

本来の繭を見たい場合にはPPボトルなどにシンジュや何かしらの木材を投入して本来の姿を見てもよいですし、今回のように段ボールなどで簡易的な蛹化場所を作ってあげてもよいと思います。
繭の管理はPPボトルにティッシュを置いて放置で大丈夫でした。霧吹きなどはいりませんでした。
羽化後はPPボトルに張り付いていましたがスプーンを登ったのかどうかまでは不明なので一応成虫がつかまれる用の棒などを立てかけてあげるとよいかなと思います。
羽化は今回は朝6時の時点で翅を乾かす段階に来ていましたので日の出前から直後ぐらいに出てきたのではないかなと思います。

羽化のタイミングを見たいならば秋で2週間冬で1か月後を目安にそれぐらいの時間に起きて見守っていれば羽化の様子が見られるかもしれません。
気温が上がると成虫は飛び回ります。しっかり姿を固めるためにも羽化を確認したらPPボトルや虫かごからもっと広い100均のケースをカバーで覆ってあげるのが思ったより良いかなと思いました。

写真撮影後、標本用に〆てしまいましたが、その際には暴れてほしくないので早朝の寒い時間に小さなPPボトル容器へと移し冷凍庫で〆ました。
体が細く大型種であるために酢酸エチルなどで〆るのはちょっと怖かったですね。
併せて生体を三角紙に包んだりするのも難しそうです。冷凍で〆て三角紙に移して保管。死後硬直が溶けたら標本にしてみようと思います。

寄生バチやハエなどにも運良く寄生されておらず、とても素敵な羽化体験となりました。ありがとうシンジュキノカワガ。
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