話題のナラ枯れ、クワガタへの影響は?

都市部の公園や緑地、山地は近年拡大しているナラ枯れという現象により壊滅的な打撃を受けています。
カブトムシやクワガタがいなくなってしまうのでは?と疑問に思ったり、逆に捕まえるチャンスなのでは?と勘を働かせてナラ枯れ、クワガタと調べた方もいるかもしれません。
そこで今回はナラ枯れ発生以前とその後からもカブクワ採集を続けている私が、ナラ枯れによりカブクワ採集がどのように変化したかを紹介します。
尚、この情報は都市部の平地~低山から得たものです。
ナラ枯れはクワガタを増やした?
まず結論ですが、カブクワの出現は大幅に増加したと個人的には体感しています。

これはシンプルにクワガタの発生には幼虫期を過ごす朽ち木と成虫の餌となる樹液が必要となりますが、ナラ枯れにより多くの朽ち木と樹液が供給されてクワガタの生存に必要な条件が満たされたからだと考えています。
2024年の夏時点ではナラ枯れが神奈川や東京のほぼすべてのエリアに広がっているので、裏を返すと全てのエリアのブナ科樹木でクワガタの発生にいい条件が生まれていると考えられます。これは凄いことです。

例として都市部のとある場所では,、ナラ枯れが来る2020年以前ではせいぜい1周で2~3匹見つかればいい数字だった場所が、立った一周で3桁以上クワガタが見られるポイントに変化したのを体感しました。
雑木林へ足を運べばまず驚くのが樹液を流す木の量です。

以前はせいぜいクヌギとコナラがせいぜいでしたが、今はこれに加え植栽されることも多いシラカシ、アラカシ、マテバシイ、スダジイなどのカシ類を巻き込んでブナ科総出で樹液が出ているという状態です。
これにより明らかにボトルネックであった樹液の出現が解消されたことで、身近な場所でも多数のクワガタが出ているのでしょう。
カミキリムシやボクトウガとナラ枯れの違い
樹液の流出には現在2通りの方法があると考えており、一つが従来通りのカミキリムシやボクトウガ、コウモリガなどの樹木に穴をあける虫によるものです。

もう一つがナラ枯れを引き起こすキクイムシですね。
これはそれぞれ好む木の太さが違うという特徴があります。前者は細い木を後者は太い木を選びます。
ナラ枯れがカブクワに強い影響を与えたと考える理由としては、カミキリムシなどの昆虫に由来する河川敷におけるカブクワ採集の個体数があまり変わっていないためです。

細い木が供給され続ける河川敷では、ナラ枯れ以前と比べても樹液の流出やカブクワの出現の極端な増減は見られません。
一方でそうした虫の出現が殆どなかった太い木々の雑木林環境や山地では、極端なまでのカブクワの増加が見られます。

この観察から雑木林において、他の昆虫が利用できない大径木のブナ科から樹液を流したキクイムシが、クワガタたちの出現を増やしたとみています。
一般的にナラ枯れを起こすキクイムシはカミキリと真逆の大径木を好み、本来は森林の老木を枯らすことで森を再生させる側面もある可能性があります。

こうしたこれまでの樹液流出と異なる生態を持つことから、キクイムシは里山における継続的な管理がされなくなり、巨大となった木々が多数ある都市部~山地の大径木に穴を空ける珍しい存在としてボトルネックになっていた樹液を出し、樹液性昆虫に貢献したのかもしれません。
また、樹液以外にも発生木の面からもクワガタたちに貢献している可能性があります。
発生木も作るナラ枯れ
木々に傷がつかなくなると、木材を弱らせる菌が侵入しなくなるので木々は傷つかず、枯れもせず長期間存在することになります。

すると立ち枯れを利用する虫などは発生する木がなくなってしまうので、見る機会が減ってしまうと考えられます。
逆に言えば立ち枯れや枯死木を利用する虫がたくさん見つかるということは、供給が豊富になっている可能性も考えられます。
クワガタをベースに見れば都市部での発生状況はナラ枯れ以前と比べると異常と言えるほど多く、古い昔の図鑑のような風景が多々見られる程度には現在発生しています。

クワガタの発生には朽ち木や土中に埋没した水分が枯れないような朽ち木が必要です。
ナラ枯れによる例として座間市にある座間谷戸山公園では2020年に261本を伐採したと記事がありますが、あの規模の公園で261本も伐採したとなれば潜在的にはどのエリアでも処理が間に合わない程のペースで枯れ木が生まれていたと考えることができます。

枯れ木が雑木林や林内に点在しているだけでもただでさえ攻撃されるのは太い木ですから、枯れ木利用の昆虫からすれば非常にいい利用資源になったと考えられます。

これはナラ枯れ以前では少ない、もしくはあまり記録が無かったとされるサトウナガタマムシや、ナガクチキの仲間、クロホシタマムシや、アカアシオオアオカミキリ、ルイスホソカタムシなどがナラ枯れの拡大と共に関東圏で次々発見されたことがキクイムシの影響を裏付けているように思います。
これら枯れ木性昆虫の増加は、処理しきれていないブナ科樹木を利用して増加しているはずなので、同様に朽ち木を利用するクワガタたちも増加していると考えられますね。

おそらくナラ枯れが木を枯らすだけならばクワガタの大発生にはつながらなかったはずです。
(ルイスホソカタやクロホシ、サトウナガのような枯れ木利用だけの虫は増加したはず)
発生の条件となる樹液と朽木の両方がそろうことでクワガタにとってはいい環境が整備され続け、2024年夏時点でもまだその余波が楽しめていますね。
ナラ枯れはクワガタ採集も簡単にした!
ナラ枯れですが、その規模がかつてのカミキリムシなどによる樹液と比較にならないものなので、非常に簡単に樹液の木を見つけてカブクワを捕まえることができます。

今現在、樹液の出る木を見つけるのは難しくありません。
カブクワを2021年以前に探して見つからなかったよと諦めてしまったかたは、現在は探さないのがもったいないくらい簡単に遭遇できます。
しかも木の見分けなども必要ないくらいです。

私はこれをナラ枯れ樹液採集と呼んでいますが、初心者にこそお勧めしています。
ここまでで話したキクイムシが木を枯らす性質を逆手に取った探し方ですが、詳細はそれをまとめたものがあるのでそちらにてお話します。
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これから探す方は下げられるハードルは下げておきましょう。
カブトムシは樹液の利益を得ている!
ここまでの話はクワガタを中心にしていましたがカブトムシではどうでしょうか?

ナラ枯れは樹液と発生木に大きく貢献します。
なので樹液を利用するカブトムシにおいてもその個体数は見つけやすくなっています。

ただしカブトムシは朽木のおがくずや腐葉土を餌として出現するので、現在の環境ではいる場所にはたくさんいるが、いないところにはいないという極端な出現となる場合が多いように感じます。
よくカブトムシの大量発生が話題となりますが、そういうのは敷地内に腐葉土置き場があったりします。そうしたサインがあるならば採れる可能性は高いと言えますね。
ナラ枯れの影響で今後クワガタは一時的に増えるかも
ナラ枯れの影響を受けた木はその年中に枯れるものもあれば生存するもの、翌年以降じわじわと枯れてしまうものなど多数の個体差による変化が見られます。

いずれにせよ影響を受けて樹液が流れた木からは定点的な観測で2年出続けるのは確認していますので、しばらくは樹液が出るものと考えられます。
また樹液には虫が来ない樹液と虫の来る樹液があることを確認していますが、虫の来ない樹液を出していた木の樹液が2年の月日を経て虫が来る樹液になった例も個人的に観測しています。
ナラ枯れは落ち着いた時期へと移行しましたが、これを考えるとしばらくは現状のままでも樹液性昆虫は楽しめると考えています。

発生木の供給も立ち枯れが多すぎて処理しきれていなかったり放置された木々が多いならば供給され続けそうです。
加えて雑木林では大径木がなくなったことによりうまれたギャップにブナ科の若い樹木が入り込んで、細い木を利用するカミキリムシ類が今後復活してくれるのではないかとにらんでいます。

ナラ枯れでは非常に多くの樹木が枯れましたので、もしそのような展開になれば長期間の間クワガタ採集は楽しめるようになるかもしれませんね。
今後も定点的に出現を確認してナラ枯れピーク時との比較を行いたいと思います。
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ナラ枯れを始めとして樹液の見つけ方や採集時期など、カブクワ採集に役に立つ情報をまとめました。今年採集したい方に役立つ網羅性の高い記事がたくさん読めます。
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