クワガタの2次発生という熱いテーマ

カブクワ採集を少し調べると2次発生という文字を目にする機会があるはずです。
晩夏頃に大型個体が出てくるというもので、カブクワ界隈では一種の伝承のように語られているこの2次発生。
個人的にどんな原因で起こるのか気になったので、持っている情報から紐づけて考察してみようと思います。
都合はかなりいいので、こんな見方もあるんだ程度にお願いします。
2次発生はあるのか?
2次発生はあると思われます。

まずそもそも2次発生があるのかという疑問は湧いてきますよね。
これについては成虫の鮮度などを図ることが難しいので判別に困りそうです。
しかし2次発生で有名なミヤマクワガタは、新成虫には金色の毛が生えているという特徴から発生初期の判断がしやすいと思われます。

私の観察地域である高尾山ではミヤマクワガタはおおよそ7月上旬~8月上旬ぐらいにまとまって出てきますが、シーズン後半となると毛が落ちて擦れた個体が多いです。
ですが、8月中旬に入った時期からでもピカピカの新成虫は多くありませんが見つかります。7月上旬ごろに材から出たとしたらお盆まで生きてもここまで綺麗には残らないでしょう。

ミヤマクワガタの発生は年一由来の当年蛹化したものと、2年一化由来の前年秋に成虫になったものがいます。
なので新成虫の出現は気温などの要因をトリガーとして一斉に始まりそうなものだと考えています。
実際ミヤマのピークシーズンは多産地では6月上旬~7月中旬ぐらいにまとまっています。これは当年蛹化と2年一化の個体が一斉に出るためだと考えています。

が、しかし、なぜか時期を外して出てくるものがいます。これはやはり2次発生があるのでしょう。
ということで遅い時期に出てくる個体はいる可能性が高いです。
2次発生個体とは何か?出現の要因を探る
これについては答えは不明ですが、私の仮説では年一化個体(成虫まで一年)の蛹化の遅れと、2年一化個体(成虫まで2年)がどういう訳か晩夏に出てきたと考えています。


そう考えないとつじつまが合わないかなと思います。
そしてこのつじつまに合わせるとノコギリクワガタとミヤマクワガタの2次発生も説得力が湧きます。

ノコギリやミヤマクワガタには卵から1年をかけて成虫になるものと、2年をかけて成虫になるものがいます。
前者を年一化、後者を2年一化と言います。

年一の個体は最初の冬を幼虫で越して、翌初夏に蛹化し、成虫となります。
仮説1として年一由来の個体ですが、産卵が遅かったケースの個体が、2年一化にはならないものの当年中の通常より遅い時期に蛹化してお盆頃に出てきた可能性があるのではと思います。

例えばミヤマはピークが6~7月上旬ぐらいにあることを考えると産卵もそれぐらいにまとまります。
6月中の早期産卵と7月の産卵では単純に考えて1か月のサイクルの違いがありますから、翌年発生も1か月ズレるのでは?というものです。


前年8月頃に産卵すればその個体は6月産卵の個体と比べて2か月遅く成長することになり、本来初夏に蛹になるものが夏本番頃に遅れ、成虫の出現はお盆頃になるというものです。どうでしょうかね?

2年一の個体は最初の冬を幼虫で越して、翌年も幼虫で過ごし、秋から初冬にかけて蛹化し冬を成虫で過ごします。晩夏から秋に産卵された個体がなると言われています。
とすると仮説1に加え仮説2として2年一化でどういう訳か夏終盤まで出てこなかった場合が考えられます。
2次発生は大型個体が多いというのが通説ですが、幼虫期間の長い2年一化個体は餌資源を蓄える期間が長いのでより大型になることと合致します。

一方で2次発生には大型ではない新成虫もいることから、それ以外の要因もしくは2年一でも小さい個体がいる可能性が考えられます。ここが解釈できるとよさそうですね。

ここでカブクワの幼虫の生育に関する要素を考えてみると、カブトムシの生育に関する研究「カブトムシ幼虫の腸内環境と微生物相互作用」(和田,2021)の中で要因となりそうな部分があります。
それは飼育材となる朽ち木の窒素分が多いか少ないかでカブトムシ幼虫の体重が変化するという点です。
この研究ではカブトムシ3齢幼虫の例ですが、炭素窒素比率が高いクヌギマット(窒素が少ない)とその比率が低い腐葉土(窒素が多い)での1か月の飼育において3齢幼虫の体重は前者で8%減少し後者で14%増加したという部分があります。


クワガタにそのまま当てはまるとは言えませんが、2年一化で幼虫期間が長くとも、成長環境の朽ち木が持つ養分が低ければ2年一化と言えども大型に成長しきれない可能性は十分にあるように思えます。

つまりここら辺の情報を組み合わせていくと出現する個体は大型が多く、中型や小型も混じるという2次発生の特徴にも合致し、ある程度説明ができるのではないかなと思います。
問題はではなぜ晩夏に出るのかというところです。

仮説1の蛹化が遅いケースなら説明がつきますが、2年一化のケースでは少なくとも初夏の時点で成虫になっているのですから、遅く出る点についてイマイチつじつまが合いません。
生態的に遅く出るメリットがあるということになるはずですが、うーん。

無理やりこじつけるとするならばカブクワはシーズン初期には♂が多く、後期には♀が多いという傾向が見られます。後期採取で♀ばかりというのはありますよね。

残り組の♀を狙って遅く出ているとする説や、真夏のカブトムシが樹液を独占している時期を避けるなどが戦略的には考えられそうでしょうか?もしくは飼育下で見られるように♂が短命で♀は意外と長寿命であるなども考えらえるでしょうか。
ただし晩夏で樹液が少ないことや♀の居残りが低いことを考慮するとイマイチな気がします。

2次発生に仮説の両方が絡んでいるとするならば、シーズン初期にピークを迎えるクワガタたちの♀を奪い合う競争を避けるために晩夏以降に出てくる♀(カブクワは♂♀比率はおおよそ半分と言われるので2次発生♀や蛹化の遅い♀もいるはず)を狙い、子孫を残しているあたりでしょうか?
この晩夏の部分は課題となりそうです。
二次発生は多くのクワガタで見つかるとされていますが、なかなかその根拠は見当たらないのでそれらしいことを考察してみました。参考程度に読んでくださいね。
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樹液、木の種類、どんなところを見るか?などのカブクワ採集に役立つ情報をまとめました、夏に採集をするならば大いに役立つと思います。活用してください。
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冬の内に色々情報を仕入れておいて、今年は早期から採集を楽しんでいきましょう。
参考文献
カブトムシ幼虫の腸内環境と微生物の相互作用(和田典子 2021)