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カブトムシ、クワガタは冬に成虫がいるの?意外と知らない冬の過ごし方を紹介。 

寒い時期のクワガタ、何をしているのか

クワガタの出現はおよそ夏の期間に偏っています。

夏に姿を目にするクワガタたち。冬の姿は必ず幼虫なのだろうか?

およそ5~9月程度にまとまっている成虫は、その時期が終わるとさっぱり姿を消してしまいますが、寒い時期には彼らは何をしているのでしょう。

今回は意外と知らない冬のクワガタの活動を紹介していきます。

クワガタは冬を幼虫で過ごす?

今回の結論としてはクワガタは冬を幼虫か成虫の姿で過ごしており、カブトムシは幼虫です。

成虫のまま冬を過ごしているものもいる。しかし目に見えるところにはいない。

ある種では冬は必ず幼虫ということもあれば、ある種では幼虫と成虫の可能性があるなど、同じクワガタのカテゴリーでありながらも実に多様な形態の違いが見られます。

今回の例では身近な種であるコクワ、ノコギリ、ミヤマ、ヒラタ、カブトムシ辺りを例にとりそれぞれの冬の生態を見比べていきましょう。

この記事では成長に関する用語が出ます。卵から成虫まで1年のものが年一化、2年のものが2年一化と呼ばれます。

コクワガタは幼虫と成虫がいる

クワガタの中でも小型種のコクワガタは、小さいから寿命も短いと考えられがちです。

おなじみのコクワガタ。意外と冬場でも見つけられる種類。

しかしながらコクワガタの冬の姿には幼虫と成虫の両方がありえます。

これはコクワガタは小さいながらも越冬するクワガタであるためです。

コクワガタの寿命は自然下では2年程度と言われています。

1年目に蛹化し活動、気温の低下と共に越冬に入り翌年も活動して生涯を終えるというものです。

個体数が多いのはライフサイクルの速さにもよる

そのため、冬場には今夏に産卵されて孵化し、成長している幼虫と成虫で越冬している個体が見つかります。

これに加え割合は少ないですが、幼虫期間が2年になるものがあり、その個体は産卵から2年後に成虫となります。

その場合産卵の翌年の秋ごろに蛹化し、朽ち木の中で新成虫のまま越冬するという行動を取ります。

なので材を割っているとコクワガタは新成虫と既存の成虫、幼虫の3つのパターンで冬を過ごしています。

幼虫は主に朽ち木に広く出現します。

ノコギリクワガタは幼虫と成虫がいる

ノコギリクワガタは越冬するクワガタではないというのは広く知られているかと思います。

成虫は初夏から8月程度まで普通に見つかる

成虫の出現は5~9月程度で、自然下では大半が8月中に死亡しますよね。そのことから冬は幼虫で過ごしていると考えられています。

ノコギリクワガタの成虫の寿命は自然下では3~10か月程度と考えられます。

これはノコギリクワガタにも産卵から成虫までに1年かかるものと2年かかるものがいるためです。

年一化は冬を幼虫で越して初夏頃に成虫となりますが、2年一化では1年目の冬は幼虫、2年目の冬は成虫で過ごします。

後述する研究では羽化から1冬を越して出るとの記録があり、もしかすると3年に一度の出現が最大となる可能性がある。

つまり割合としてみれば幼虫の確率の方がずっと高いのですが、冬場に成虫が見つけられる可能性もあります。

幼虫の生息環境は朽木になりますが、冬にそれを割ってみれば低確率で成虫が見つけられます。

ですがコクワガタと異なり、既存個体の成虫越冬が無いのでその割合はかなり少ないです。

2年一化個体はそもそも低温環境下で生育が遅れている個体や晩夏や秋など産卵時期が遅かった個体がなるものと言われていますので、個体数の割合自体が少ないという傾向があります。その分幼虫期間が長く大型になる傾向もあります。


カブトムシは幼虫だけ

カブトムシは越冬しないことで知られています。

冬、唯一幼虫のみ。

成虫の寿命は短く、およそ8月頃には自然下では姿を消していまう個体が多いです。

成虫の寿命は1~1か月半程度です。このことから冬場は幼虫で過ごしています。

クワガタと異なり、カブトムシの成虫の寿命が8月にまとまるからか2年一化の例は殆どないと思われます。

これはカブトムシの幼虫の成長が非常に速いこととも関連しています。つまり冬場は殆どの場合において幼虫です。

12月頃までに最大の幼虫となる。

面白いのが晩夏~冬の期間の3~4か月で終齢幼虫(成虫になる直前)まで育ち、冬を越すという点です。

つまり冬場に彼らの生息環境を掘ると、ブリブリに育った巨大幼虫をたくさん掘り当てることが可能です。

幼虫はクワガタと異なり、落ち葉が堆積して発酵した腐葉土に出現します。

産卵から成虫までが1年でまとまっているので非常にわかりやすい昆虫と言えます。

ミヤマクワガタは幼虫と成虫がいる

ミヤマクワガタも成虫は越冬することができません。

人気クワガタ。低地では幼虫の可能性が高いが標高があれば成虫もいる

成虫の出現は6~9月程度で自然下では8月中に大半が死亡していると思われます。

ですがミヤマクワガタの寿命も3~10か月程度あります。ここまで読んだらお分かりかと思いますが、ミヤマにも年一化と2年一化がいます。

さらに3年一化の例も確認されています。

ノコギリで3年一化の例は私は知らず(研究では示唆するものがあります)、身近なクワガタの中では唯一なのではないかと思われます。

小さい個体は冬幼虫の可能性が高いかも。

つまり冬場においては幼虫(年一)成虫(2年一)、幼虫(3年一)、成虫(3年一)の可能性が考えられます。

3年一化は雪の期間が長い高標高地などで知られる例なので、身近な自然下では起きないので実質的にはノコギリクワガタと同じく冬には幼虫(年一)と成虫(2年一)になりますね。

ミヤマは2年一が多いと言われていますが、暖冬の影響か平地では年一化が増えて小型化している傾向が見られます。

また、幼虫は根食いといわれ、露出した材よりも地中の太い根に出現することが知られています。

ヒラタクワガタは幼虫と成虫がいる

ヒラタクワガタは成虫越冬することがよく知られています。

コクワと同様成虫が冬を越せる。冬には幼虫も成虫もいる。

大型個体もいることからその寿命は2~3年と非常に長いです。一方で発生は年一化~2年一化の可能性が考えられます。

私自身のヒラタ観察の経験が薄いのでヒラタの生活を研究した論文、「山梨県の低地で見られるクワガタムシ2種(ヒラタクワガタ及びノコギリクワガタ)の飼育ー生活史の特徴と生活戦略の考察ー」(大澤)を参考にさせていただくと、この研究の中でヒラタクワガタの幼虫は年一で出現するものと晩夏及び翌年の夏に出るものがいるとの結果を残しています。

つまりヒラタクワガタには年1以前に当年中に出るものと年1のものがいると考えられます。

この場合同研究内では初夏に蛹化し、羽化した成虫が蛹室で越冬することを確認していることから、冬場のヒラタクワガタには幼虫と新成虫(蛹室内)、既存成虫(越冬)の3パターンが存在していると考えられます。

越冬成虫の例。冬場でも見つかる可能性がある。

今回の記事では多く人が観察する機会のあるコクワ、ノコ、カブト、ミヤマ、ヒラタの冬場の過ごし方を紹介しました。

こうして比較してみるとその冬場の過ごし方にはそれぞれのポイントがあり、これを基に彼らの出現特性が推測できそうです。

生態を理解すればより採集のチャンスが増えそうなものですね。
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参考文献

大澤正嗣 山梨県森林総合研究所研究報告NO.24 山梨県の低地で見られるクワガタムシ科2種(ヒラタクワガタ及びノコギリクワガタ)の飼育ー生活史の特徴と生活戦略の考察ー,2004,2025,2/11
https://www.pref.yamanashi.jp/documents/67331/byfri_2005_24_9_14_oosawa.pdf