翅の一部がオレンジ色の蛾
初夏から晩秋にかけて巨大な蛾を目にする機会というのが増えます。
その中でも夏にカブクワ採集をしていると見つかりやすいのがオレンジ色の翅をもつ巨大な蛾です。
ムクゲコノハと呼ばれるこの巨大蛾は翅の後ろ側に鮮やかなオレンジ色と目玉のような模様を持つ人気の高い1種だったりします。
ムクゲコノハとは?
ムクゲコノハはヤガ科に所属する蛾の仲間の1種です。
体長は開帳時で8㎝前後程度と巨大蛾のカテゴリーであるヤママユの仲間に匹敵するほどのサイズ感があります。
成虫は初夏から晩秋まで出現し樹液や熟れた果物、外灯などに飛来します。
一見すると茶色の大きな蛾にしか見えませんが、威嚇時や飛翔時、樹液を食しているときなどに後翅の美しいオレンジ模様と目玉模様を見せつけます。
真偽は不明ですが、一部の蛾と同様目玉模様を持つことで天敵となる鳥などに警戒物としてアピールする戦略であると考えられます。
幼虫は主にクヌギやコナラなどを利用することが知られており、身近な雑木林環境でも見られる可能性が十分ある昆虫です。
しかしながら出現は平地よりも山地の方が多いようです。
類似種としてはほとんどいませんが、後翅が黄色いアケビコノハは雰囲気やサイズ感ともに似ています。
色の違いで見分けられます。
樹液を訪れる美麗な蛾たち
蛾の仲間は世間的には目の厳しいカテゴリーであると考えられます。
これは毒を持つ毛虫であるチャドクガやイラガ、カレハガの仲間など一部の蛾が時折ニュースとなって世間を騒がせるためですね。
昔ならば灯に大量に集まる様なども潜在的な恐怖の対象として大きいかもしれません。
しかし成虫は無害である物が殆どです。
それどころか近年蛾の仲間は甲虫の様に各所に出張しなくとも身近で良い種類に出会えたり、蛾という虫の分母が大きいことから多数の種に近場で出会える可能性があったりと昆虫マニアの中で人気も高まっているカテゴリーだったりします。
蛾初心者である私も含めて興味の対象となりやすいのがやはり見た目の美しい蛾です。つまり模様が派手だったり色合いが目を引く種類ですね。
このようなカテゴリーとしてカトカラという愛称で呼ばれるシタバガの仲間がいるのですが、ムクゲコノハはこのカトカラの仲間に近い模様を持つ巨大種として興味のきっかけとなりやすい種類です。
新成虫の鮮やかなオレンジ色は夜の茶色と緑ばかりの雑木林でとても印象に残ります。
外灯にもやってくる
ムクゲコノハですが、樹液にだけ来るわけではありません。
山地に近かったり樹液の有るような雑木林が隣接している環境では灯にも誘引されてやってきます。
私の利用しているmarauder miniやperun2というLED懐中電灯にも夜間採集をしていると飛び込んでくることがあります。
ムクゲコノハは非常に大きいのでその羽音と懸命なタックルに驚かされてしまうことがあります。
外灯などで止まっている場合には翅を閉じてしまっていることが殆どです。その場合には目立つオレンジ色は見えず、ただやたら大きい茶色の蛾として見えます。
特徴が無いとおそらく何の蛾か分からないと思いますが、同程度のサイズ感で茶色いもの(樹皮のような)にはアケビコノハやシロシタバなどほとんど限られた種類しかいませんので特に平地であるならば種の判別は簡単です。
どれも毒はありませんので安心してください。
大きな蛾を採集するならば
チョウの仲間は胸部を圧迫して気絶させることで三角紙にしまうことができます。
腹部が大きい一定以上のサイズの蛾となると胸部圧迫は難しく、さらに暴れるためどんどん剥げていってしまいます。
蛾を始めようと考えている方は注射器とアンモニア水を利用することをお勧めします。
私も以前は三角紙に固定用の洗濯ばさみというやり方をしていましたが、一度アンモニア水を体験させてもらってからは考えが変わりました。
注射針がさせるサイズならば打った方がきれいに残せます。
注射器とアンモニア水はセットで購入しても近場の採集費用程度で済む出費です。
持ち歩きには密閉容器など注意が必要ですが、扱える昆虫の種類がぐっと増えるので虫好きな人や採集をすでにしている人はその幅を増やす意味でも購入してみてはいかがでしょうか。
蛾の仲間は手を出してみると実に面白い種類が多く、ほぼ一年中楽しめるという点で他の虫のカテゴリーとは異なります。
展翅するなら板も
大型蛾の展翅には大き目な展翅板が必要です。
巨大アゲハサイズと呼ばれる5号サイズですね。
このサイズを持っているとムクゲコノハだけでなくヤママユの仲間なども扱えるようになります。
近年値上がりしていいお値段がするようになってしまいましたが、構造は単純なので木工ができる人は自作してみてもいいのではないかと思います。
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