初夏頃に出現する大きな緑の蛾

過ごしやすい気候が続く春から初夏において、夜の外灯や建物の壁などに大きな緑色とも水色とも捉えられるような大きな蛾を目にする機会があります。
その蛾こそ大人気昆虫であるヤママユガの仲間の1種、オオミズアオ。虫好きからも愛される大きな蛾です。
今回は大きな緑色の人気昆虫、オオミズアオについて色々と見ていきましょう。
オオミズアオとは?
オオミズアオはヤママユガ科の昆虫の1種です。

虫好きなら誰もが知っていると言っても過言ではないその色合いと大きさ、虫嫌いの人が一目見て悲鳴を上げそうな色合いと大きさが特徴の蛾です。
体長は非常に大きく、開翅時には10㎝を超えます。
体色は主に緑と水色を混ぜたような特有の色合いをしています。

前翅と後翅には目玉のような模様がついており、眼状紋(がんじょうもん)と呼ばれるヤママユの仲間によく見られる特徴の一つです。
後翅は下部に向けて流れるようについており、止まっていると非常に優雅な雰囲気を見せてくれます。

オオミズアオの出現はおよそ4月の下旬頃を目安に始まり、そのまま8月下旬頃まで継続的に続きます。
人気の昆虫でありながら大きく分けて年に2回ほど発生期間があるため、探しやすく出会えてうれしい人気も納得の虫ですね。
成虫にはヤママユの仲間の共通として口がありません。寿命は正確には不明ですが、1週間程度と言われることが多いです。
オオミズアオの毒性
多くの方が気になるのはこんな大きい蛾に毒はあるんですか?というところですよね。

オオミズアオ及びヤママユの仲間には毒はありません。なので勇気があれば触っても問題ありません。
一方で大型の蛾であるため、飛ぶことで暴れて自身の毛が抜けてまったりしてしまうことはあります。
そうした蛾の毛を吸い込むことで嫌な思いをすることがあるかもしれないので気を付けましょう。
オオミズアオの眼状紋
ヤママユを始め一部の昆虫に見られる眼状紋には、鳥などの天敵からの攻撃を下げる効果があると言われています。

ヤママユを始めとするこの模様を持つ生き物たちの中には後翅に模様を持ち、威嚇の時にその目玉模様を見せると考えられる種類もいます。
オオミズアオについては4つの目がパッシブで機能していますので、自然界では知らずの内にこれで助かっているかもしれません。

出典が不明となりますが、過去読んだものの中でかごに眼状紋を持つ蛾を入れてかごを回しながらヒヨドリに目玉模様を見せると、見えると同時に鳥たちが慌てたといったものがありました。
眼状紋が具体的に何に擬態しているのかは不明ですが、ヤママユの中にはヘビそっくりの模様を持つシンジュサンがいることや、類似のイボタガがフクロウ擬態であることなどを考慮するに、おそらく鳥の天敵となる存在の目玉に見えるようになっているのでしょう。
人間からするとチャームポイントにしか見えませんね。
オオミズアオは絶滅危惧種なの?
オオミズアオは遭遇機会が少ないように思えますよね。

しかしながらこの蛾は利用樹種に都市部の街中でも多いサクラ類が含まれています。そのため、ヤママユの仲間の中でもかなり遭遇しやすい種類ということができます。
日本のレッドデータを見てみるとオオミズアオはどの県においても指定されていません。
つまりそれほど身近な蛾なのです。一方でこんな虫は見たことが無いという方や、初めてこんな大きな蛾を見つけてびっくりしたんですという方もいますよね。
ヤママユの仲間の活性は遅い時間
これは我々の日常生活とヤママユの活動時間が重なっていないためです。

私もこの蛾に遭遇するのは夏の7月8月が多いのですが、それは夏の虫を求めて夜活動することが増えるためです。
ヤママユを始め多くの蛾の仲間は、夜行性と言って日が落ちてから活動します。そして多くのヤママユは学術的には不明ですが、採集仲間の意見を集めると真夜中に活性があると言います。

虫にさほど興味がない方が彼らの活性ピークまで外にいることは殆どないので、この蛾に遭遇するのは夜外灯や壁に来てそのまま居残りした子たちとなるのです。
真夜中には大きな蛾が外灯周りを飛んでいる非常に眼福な光景を見られることがあります。
オオミズアオの人気の理由
オオミズアオを始めとするヤママユガの仲間は、蛾の仲間の中でもかなり人気が高いカテゴリーです。

どの程度かというと蛾を中心にやっていない人でもヤママユの仲間はつまんでしまうという方が殆どだと思います。
この蛾は色合いがユニークであること、大きく見栄えやフォルムがいいこと、姿が可愛らしいことなどの理由から虫屋の中で嫌いという人にはあったことがありません。

ヤママユ系はどれもぬいぐるみやマスコットそのものです。凄まじいほどにモフモフしており、顔も毛むくじゃらで可愛らしいです。複眼も大きく、じっと止まっていると繊細な置物の様です。
そしてこの蛾の魅力というか儚さが食事もせずに成虫を過ごすという点にあると私は思います。
大人になってからは食事もせず一般的な寿命が1週間ということは過ごせる夜は6~7日なわけです。
その合間にパートナーを見つけ子孫を残さなければなりません。


彼らは♂♀で触覚が異なり、♂の触覚は♀の発するフェロモンを感知できるようになっています。
これにより効率的に異性との出会いが行えるようになっているのです。

外灯によりおびき寄せられた彼らはそれを出会いの場として利用しているのか、それとも引っ張られて迷惑しているのかは不明ですが貴重な夜の時間をついやされてしまっているかもしれませんね。
そんなバックストーリーがまた彼らはいい虫だなと感じさせてくれるのです。
オオミズアオに出会うには?

オオミズアオに出会うにはSNSなどで出現情報を探すのが確実です。
都市部でも比較的見られる種類なので、オオミズアオという名前で検索をかけると出現しているかがわかります。

この蛾は春の大型蛾であるイボタガの終了時期くらいから出現するため、毎年4月下旬頃から出現が始まります。
その時期から5月中程度と7月頃から8月頃にかけて2回目の発生があるとされていますので、興味のある方はその時期に外灯などを巡ってみると出会えるかもしれません。カブクワ採集のついでに出会えると嬉しいですね。
オオミズアオでない場合
この記事を見て緑色の大きな蛾がオオミズアオでなかった場合には、スズメガの仲間のウンモンスズメかもしれません。

ケヤキなどを利用するため、こちらも町中で目にする可能性があります。本タイトルにある緑色の大きな蛾に合致します。
大きな蛾関連記事
pljbnature.com
春の巨大蛾としてイボタガが挙げられます。非常に人気の蛾で、フクロウに擬態しているとされるものを探しに行ってきました。
pljbnature.com
夏頃に樹液で見つかるオレンジ色の大きな蛾はムクゲコノハです。
pljbnature.com
夏、秋、初冬、春にかけて見つかる枯れ葉そっくりの黄色い大きな蛾はアケビコノハです。擬態名人で人気が高い昆虫ですね。
pljbnature.com
秋冬の人気種、ヒメヤママユとウスタビガの紹介です。季節的な問題もあり、その時期の大型種として人気が高いヤママユの仲間ですね。
pljbnature.com
記事中でも紹介したヤママユガです。翅を広げると10cm以上、15cm近いものもいる巨大種です。