初冬のヤママユ探し
昆虫観察のピークシーズンも終わりを迎え、世間としては紅葉の時期となる11月。
人気の昆虫としてヤママユという大きな蛾の仲間の中でトリを飾るヒメヤママユとウスタビガを観察できる時期だったりします。
高尾におけるヒメヤママユとウスタビガはいつ頃まで観察でき、いつから見つけられるのか?観察してきました。
前回のオオトラカミキリぶりの観察記です。
11月上旬の終わりに夜の高尾へ
時期は11月の11日。
今年は気温も高く秋の彼岸花や金木犀の遅れも目立つことから季節の進みは遅いように感じます。
関東の平野部としてはヒメヤママユはおおよそ10月中旬頃から、ウスタビガは11月の中旬頃から目にします。
11月の11日頃はヒメヤママユの後半戦、かつウスタビガのシーズン開始頃に当てはまる頃合いだと見据えて訪れました。
夏とは大きく異なり日没は17時を回った頃合いから暗くなり始めます。ヤママユの仲間は日没直後に最初の活性があるようで、これに合わせて訪れました。
夏のセオリーで行くとケーブルカーで中腹まで登っていくことになります。
もちろん夏に昆虫採集をした外灯たちも使えるのですが、ヤママユに関しては麓の外灯でも見つけられます。今回は麓外灯を巡っていきます。
11月の高尾山は紅葉があまりにも有名であるため、ケーブルカーが動いている時間~中腹で夜景などを見ている人が降りてくる時間を考慮して、19時半頃程度までは人の往来があります。
日没が早いのも相まって予想以上に人がいるようです。
早速街灯を見ていきましょう!
麓外灯を巡る
この時期の外灯にはほとんど蛾の仲間しかやってきません。
そのため、ヤママユを当てられるかどうかが重要です。
その他にもこのタイミングではまだシーズン初期ですが、キリガの仲間も来ています。
シャッターの締まった外灯付近を見ていくと小型の蛾や中型の蛾がそれなりに来ています。エダシャクっぽい蛾の仲間がよく見つかります。
外灯に大きめな昆虫の影が見え、よく見てみるとシブイロカヤキリでした。
他の昆虫を捕食する越冬性の虫ですが、飛来する蛾を狙っているようです。
凶悪な口をしています。噛まれると血が出ます。
日没直後の外灯を見ていると早速外灯から不自然な翅が飛び出ているのを発見しました。この茶色い翅はあの蛾でしょう!
開始早々ヒメヤママユに遭遇できました。
夏の外灯採集と同じく外灯とその周辺を見ていく必要がありますね。
慎重に網を被せてキャッチしてみると?
♂のヒメヤママユのようでした。
触覚が大きく櫛形になっていて可愛いですね。
色合いも茶色と赤の混じったようなレンガ色で美しいです。
シーズン後半にも関わらず比較的きれいな個体がみつかりました。
やはり大型の昆虫が外灯についているのを見つける瞬間というのは嬉しいですね。
引き続き追加を狙って探していくことにします。
ここで個人的に観察してみたかった緑色の蛾を見つけます。
11月の見てみたい蛾の1種、ケンモンミドリキリガです。
地衣類に擬態しているとされるこの蛾は実物はすご~!としか言えないくらい地衣類です。
そこまで多い種類という認識はありませんでしたが、高尾の外灯ではこの日の2時間半ほどで4匹も見つけられました。
今期見ておきたい種類だったのでこれは嬉しいですね。
外灯周りを引き続きしていくわけですが、ヤママユの仲間の飛来はこれ以上ありませんでした。
しかし、ヒメヤママユの死骸とパーツ、蜘蛛の巣にかかった個体などは3箇所で見つけました。ウスタビガにはまだ早そうです。
この日の結論としては11月11日時点ではヒメヤママユには遅めの時期でウスタビガには早めの時期であったのではないかと思います。
過去の観察では11月中旬後半程度でボロボロのヒメヤママユとウスタビガの新成虫を目にしたことがあるので、ウスタビガの出現もそろそろだと思われます。
二兎を追うものは一兎をも得ずのことわざにハマりかけましたが、とりあえず1匹は見つけられてよかったです。
外灯で見つかった蛾
種の同定ができない物も多いのですが、見つけた蛾を紹介していきます。
マエアカスカシノメイガですかね?ノメイガの仲間であることは分かったのですが現地では不明でした。
どの蛾もそうですが、夜にライトを当てると鱗粉が反射して昼に見る以上にきれいに見えます。マエアカの名の通り翅の縁が赤い美しい蛾ですね。
アカスジシロコケガだと思われます。白をベースに赤色の紐状の模様とお尻の部分はオレンジ色。小指の爪先くらいの小さな蛾なのですが、外灯周りの木を下から照らすとかなり目立ちました。
コケガの仲間は派手な色の物が多くて印象に残りますね。
この子も現地ではコケガの仲間の予測はできましたが種名は不明でした。
こちらはクロミスジシロエダシャクというようです。私は初夏に目にするミズイロオナガシジミにそっくりだなと感じました。
初めてこの蛾を見た方は蝶にしか見えないでしょうね。イカリモンガなども蝶にかなり似ていますが、静止時に翅を閉じていると確かに蛾というより蝶が先行してしまいます。
エゴノキ科を利用するようですが、発生は年一化で夜の活動となると、確かに見かける機会は少なくなりそうです。
良い蛾ですね。
当初ウスギヌカギバだと思っていたこの個体。モンウスギヌカギバのようです。外灯周りで度々見つかり、ウスギヌカギバだとすべて思っていましたが類似種が多いようでもしかすると数種類いたのかもしれません。
この蛾も装飾が豪華でキレイですね。鳥の糞みたいな模様がありますが、ライトの下で見ると輝いているように見えます。
他にも多数遭遇しているのですが、蛾の仲間はとにかく種の同定が難しすぎますね。
久々に夜活動したら楽しかったのでまたヒメヤママユとウスタビガを狙って行きたいところです。
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思ったより楽しくてこの記事の数日後に再度行ってきました。
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ヤママユと並んで密かに狙っているアケビコノハ。枯れ葉擬態、カトカラのような美しい後翅など魅力たっぷりの蛾です。