蓼食う虫も好き好き

知っているとちょっとお得で日々の観察が楽しくなる自然の魅力を発信します。画像の無断転載は禁止です。

2024年高尾山昆虫観察記12 ヒメヤママユとウスタビガを求めて外灯周り(麓編)

初冬のヤママユ探し

昆虫観察のピークシーズンも終わりを迎え、世間としては紅葉の時期となる11月。

久々の夜高尾。この時期の夜で蛾にスポットを当てるのは初。期待。

人気の昆虫としてヤママユという大きな蛾の仲間の中でトリを飾るヒメヤママユとウスタビガを観察できる時期だったりします。

高尾におけるヒメヤママユとウスタビガはいつ頃まで観察でき、いつから見つけられるのか?観察してきました。

前回のオオトラカミキリぶりの観察記です。

11月上旬の終わりに夜の高尾へ

時期は11月の11日。

晩秋の高尾。枯れ葉に溶け込むヤママユの仲間たちを求めて。

今年は気温も高く秋の彼岸花や金木犀の遅れも目立つことから季節の進みは遅いように感じます。

関東の平野部としてはヒメヤママユはおおよそ10月中旬頃から、ウスタビガは11月の中旬頃から目にします。

11月の11日頃はヒメヤママユの後半戦、かつウスタビガのシーズン開始頃に当てはまる頃合いだと見据えて訪れました。

外灯を見て感覚を掴んでいくのが目標

夏とは大きく異なり日没は17時を回った頃合いから暗くなり始めます。ヤママユの仲間は日没直後に最初の活性があるようで、これに合わせて訪れました。

夏のセオリーで行くとケーブルカーで中腹まで登っていくことになります。

中腹以降は灯りも多くメイン会場と言える。ビアガーデン終了につきケーブルカー最終便は早くに終わる。

もちろん夏に昆虫採集をした外灯たちも使えるのですが、ヤママユに関しては麓の外灯でも見つけられます。今回は麓外灯を巡っていきます。

11月の高尾山は紅葉があまりにも有名であるため、ケーブルカーが動いている時間~中腹で夜景などを見ている人が降りてくる時間を考慮して、19時半頃程度までは人の往来があります。

日没が早いのも相まって予想以上に人がいるようです。

早速街灯を見ていきましょう!

麓外灯を巡る

この時期の外灯にはほとんど蛾の仲間しかやってきません。

外灯巡回。単純だが久々のよる活動に胸が踊る。

そのため、ヤママユを当てられるかどうかが重要です。

その他にもこのタイミングではまだシーズン初期ですが、キリガの仲間も来ています。

シャッターの締まった外灯付近を見ていくと小型の蛾や中型の蛾がそれなりに来ています。エダシャクっぽい蛾の仲間がよく見つかります。

日没直後ながら早々にチャエダシャクらしき蛾に遭遇。寒いのによく来ている。

外灯に大きめな昆虫の影が見え、よく見てみるとシブイロカヤキリでした。

越冬性の種類で今日は気温も高かったためいたのだと思われる

他の昆虫を捕食する越冬性の虫ですが、飛来する蛾を狙っているようです。

凶悪な口をしています。噛まれると血が出ます。

上から見たバッタ感とは裏腹に悪魔のような口。トラウマになる子どももいることでしょう。

日没直後の外灯を見ていると早速外灯から不自然な翅が飛び出ているのを発見しました。この茶色い翅はあの蛾でしょう!

開始早々ヒメヤママユに遭遇できました。

張り付いているヒメヤママユ。飛んでいるところに出会うよりも止まっていることのほうが多い。

夏の外灯採集と同じく外灯とその周辺を見ていく必要がありますね。

慎重に網を被せてキャッチしてみると?

♂のヒメヤママユのようでした。

とりあえず坊主を回避できて安心。同行者がいたのでヤママユ1匹は遭遇したかった。

触覚が大きく櫛形になっていて可愛いですね。

色合いも茶色と赤の混じったようなレンガ色で美しいです。

シーズン後半にも関わらず比較的きれいな個体がみつかりました。

やはり大型の昆虫が外灯についているのを見つける瞬間というのは嬉しいですね。

引き続き追加を狙って探していくことにします。

ここで個人的に観察してみたかった緑色の蛾を見つけます。

すごくキレイな種類。キリガにハマる人の気持が分かる。

11月の見てみたい蛾の1種、ケンモンミドリキリガです。

地衣類に擬態しているとされるこの蛾は実物はすご~!としか言えないくらい地衣類です。

そこまで多い種類という認識はありませんでしたが、高尾の外灯ではこの日の2時間半ほどで4匹も見つけられました。

今期見ておきたい種類だったのでこれは嬉しいですね。

迷彩能力が高すぎる。

外灯周りを引き続きしていくわけですが、ヤママユの仲間の飛来はこれ以上ありませんでした。

しかし、ヒメヤママユの死骸とパーツ、蜘蛛の巣にかかった個体などは3箇所で見つけました。ウスタビガにはまだ早そうです。

月もかなり出ているのでその辺の条件もあるのかもしれない。

この日の結論としては11月11日時点ではヒメヤママユには遅めの時期でウスタビガには早めの時期であったのではないかと思います。

過去の観察では11月中旬後半程度でボロボロのヒメヤママユとウスタビガの新成虫を目にしたことがあるので、ウスタビガの出現もそろそろだと思われます。

過去に別の場所で見つけた子たち。時期的にはそろそろだが。

二兎を追うものは一兎をも得ずのことわざにハマりかけましたが、とりあえず1匹は見つけられてよかったです。

外灯で見つかった蛾

種の同定ができない物も多いのですが、見つけた蛾を紹介していきます。

蛾は意外とキレイな気持ちが先行する。夜の印象は昼と大きく違う。

マエアカスカシノメイガですかね?ノメイガの仲間であることは分かったのですが現地では不明でした。

どの蛾もそうですが、夜にライトを当てると鱗粉が反射して昼に見る以上にきれいに見えます。マエアカの名の通り翅の縁が赤い美しい蛾ですね。

美しい。なぜこんな色をしているのか問い詰めたい。

アカスジシロコケガだと思われます。白をベースに赤色の紐状の模様とお尻の部分はオレンジ色。小指の爪先くらいの小さな蛾なのですが、外灯周りの木を下から照らすとかなり目立ちました。

コケガの仲間は派手な色の物が多くて印象に残りますね。

この子も現地ではコケガの仲間の予測はできましたが種名は不明でした。

翅の後ろのオレンジ色部分などシジミチョウにそっくり!

こちらはクロミスジシロエダシャクというようです。私は初夏に目にするミズイロオナガシジミにそっくりだなと感じました。

人気の蝶、ミズイロオナガシジミの姿。

初めてこの蛾を見た方は蝶にしか見えないでしょうね。イカリモンガなども蝶にかなり似ていますが、静止時に翅を閉じていると確かに蛾というより蝶が先行してしまいます。

エゴノキ科を利用するようですが、発生は年一化で夜の活動となると、確かに見かける機会は少なくなりそうです。

良い蛾ですね。

模様が独特で面白い。よく目にする種類ではある。

当初ウスギヌカギバだと思っていたこの個体。モンウスギヌカギバのようです。外灯周りで度々見つかり、ウスギヌカギバだとすべて思っていましたが類似種が多いようでもしかすると数種類いたのかもしれません。

この蛾も装飾が豪華でキレイですね。鳥の糞みたいな模様がありますが、ライトの下で見ると輝いているように見えます。

他にも多数遭遇しているのですが、蛾の仲間はとにかく種の同定が難しすぎますね。

フクラスズメ。この時期~翌春まで見つかる大型の蛾。カトカラっぽい銀光沢が美しい。

久々に夜活動したら楽しかったのでまたヒメヤママユとウスタビガを狙って行きたいところです。

pljbnature.com
思ったより楽しくてこの記事の数日後に再度行ってきました。

高尾山昆虫関連記事

pljbnature.com
前回の記事はオオトラカミキリに敗北した記事です。高尾の虫に興味がある方はカテゴリータグの高尾山昆虫採集記がオススメ。

pljbnature.com
ヤママユと並んで密かに狙っているアケビコノハ。枯れ葉擬態、カトカラのような美しい後翅など魅力たっぷりの蛾です。