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かわいい蝶の代名詞、茶色の小さなイチモンジセセリを観察してみよう。

秋の人気種、セセリチョウの仲間

ストック写真の都合上イチモンジセセリのまともな写真がこれだけ

セセリチョウの仲間といえば知る人ぞ知るかわいい蝶の仲間です。

しかしながら虫を知らない方からすれば早く飛ぶ蛾程度の認識しかなされておらず、あれってチョウの仲間なんですか!?と驚かれることもしばしばあります。

今回はそんな不憫ながらも皆から愛されるイチモンジセセリという秋のセセリチョウの代表種を紹介し、ファンが一人でも増えるよう紹介していきます。

イチモンジセセリとは

イチモンジセセリはセセリチョウ科に所属する体長2㎝程のチョウです。

白模様が縦に並ぶ性質がある

翅を広げずに止まる性質があるものの雰囲気は蛾に近い印象を受けるため、蛾の仲間と勘違いしている方もいます。

体色は茶色というよりは黄土色と混ざった茶色でしょうか。泥の色などが近いのではないかと思います。

翅には由来となる数字の1のように並んだ白点が見られます。

イチモンジセセリ(左)とチャバネセセリ。非常に似ている。

この模様は出現期により若干の違いが見られ、夏型では1が強く、秋型になると1の字のより頭側に白点が見られます。

成虫にはおよそ初夏から秋の終わりごろまでの非常に長い出現期間があります。関東圏では秋ごろに見かける機会が圧倒的に多く、初夏頃には時折見つかる程度です。

イネ科の群落。その辺の草地に普通に見られる環境。

食草はイネ科の草本を利用しており、ススキを始めとする草原にて普通に目にすることができます。

類似種はフォルムはほとんど同じですが、白点の配列が異なるなど種の多様性の観察に非常に適しています。

身近で見られるものはチャバネセセリとイチモンジセセリで9割を占めるかと。

春から秋口まで様々な種が代わる代わる出現し、中には希少なものが、中には普通種ではあるものの模様の異なるものがいたりして何かと観察が楽しい蝶の仲間の1種ですね。

ススキのなじみ深さから我々の生活にもなじみの深い種類です。大きな複眼はぬいぐるみの様に愛らしく、この蝶をかわいいと思う方は少なくないようです。

イチモンジセセリを探してみよう

この蝶を探すのは難しくありません。条件さえあるならばアゲハチョウの仲間よりもはるかに簡単に遭遇することができます。

河川敷はイネ科の大群落。珍しい種類も見つかる。

この蝶の食草は前述の通りイネ科の仲間です。

ススキ草原の代表的な蝶ではありますが、街中でも見かけます。

ここから推測できるのは町中にあるようなイネ科草本も利用しているということです。

道路沿いなどススキの生える場所は限られる。

実のところ街中ではススキはそう多くあるものではありません。しかしエネコログサやチガヤ、各種芝の仲間などはあらゆるところで目にしますよね。

恐らくそういう植物を利用して発生していると思われます。つまり継続的な空き地環境があれば出現の可能性があるということですね。

幼虫の利用植物が分かれば次は成虫の餌資源となるお花の蜜です。

他の蝶が来ている場所にはだいたいやってくる。

これに関しては好みの幅は広いようで、花壇に植えられているような園芸種からその辺の外来種にまでやってきます。

代表的なものを上げるとマリーゴールドやキバナコスモスなどのキク科、メドーセージやチェリーセージなどシソ科、センダングサの仲間など外来キク科などやはり花の形で訪花性昆虫の対象を絞っているようなものに来ています。

センダングサの仲間やメドーセージなど、園芸用の植物に来てしまう。

環境が分かれば後はイチモンジセセリを探すだけですね。

セセリチョウの仲間にはメジャーな2種がおり、イチモンジセセリとチャバネセセリです。

イチモンジセセリとチャバネセセリ。違いは前述の通り白点の並び方。

どちらも普通種なのですが、どちらかというとイチモンジセセリの方が見かけます。

2種はイチモンジセセリが1の字に白点が並ぶのに対し、チャバネセセリは空に浮かぶ星のようにまばらに白点があるという違いがあります。

間違えようがないくらい分かりやすいのでよく見てください。

かわいいイチモンジセセリを観察

イチモンジセセリは可愛いですよね。まず複眼の大きさが体に対してかなり大きいのがチャームポイントです。

せせりの仲間は総じて目が大きい。

これだけ大きい目をしていますからさぞ動くものには敏感なのでしょう。実際活性が高いセセリチョウは近づけません。

しかし花壇で餌に夢中となっているイチモンジセセリの鈍さはとんでもないです。

花巡りをしている彼らは信じられないほど逃げない。

近づいても逃げないのはもちろん、手でつかめそうになっても逃げない個体もいるくらいです。

鈍すぎる個体では手に乗ってくるものなどもいます。

日頃は俊敏なのに食事中だけは隙だらけなのがかわいいですよね。

秋型になると1の字の白点の内側に白模様が出る個体が増える。これは夏型っぽい。

また、個体変異が大きいのも魅力です。

翅の模様には季節による傾向が見られるのはもちろんですが、同じ季節型でも白点の並び方が違うものが結構います。

遺伝による影響なのでしょうが、面白いですよね。
イチモンジセセリに非常に似た絶滅危惧種の種としてオオチャバネセセリというものがいます。

新潟にて遭遇したオオチャバネセセリ。大きいのはもちろん白模様もブレる。

イチモンジセセリの中にはそれに似ている雰囲気のものがおり、普通種でありながら期待を持たせてくれるドキドキ感が楽しめます。
魅力的ですね。

この蝶は翅をあまり大きく開きません。構造上空きにくいのかもしれません。

食事中などは完璧に閉じてしまっています。しかし、ふとした時に開いてくれる気まぐれな性質があります。

上から見るとこんな感じ。一般的な蝶のイメージとはだいぶ違うため、蛾と間違われることも。

この時には普段は片面しか見えない白点の模様がぐわっと両サイドに広がることで星が広がるかのように見えます。

君の模様はこんなにも綺麗だったのかい?と新しい一面をしれて嬉しくなります。可愛いですよね。

払ってはまた来るの繰り返し。写真も取りやすい。

何よりこのセセリチョウの仲間というのは飛翔がかわいいですよ。特に食事中は花に対してかなり貪欲にやってきます。仮に花にいる個体を払っても再び花にやってきますからね。

放しては戻ってくる、放しては戻ってくる。まるで糸の無いヨーヨーの様です。遊んでいるうちに君かわいいなと刷り込まれてしまいます。

このようにイチモンジセセリは可愛いポイントがたくさんあります。これも彼らが身近な食草を利用し個体数が多いためにたくさん遭遇することができるからです。

今回の記事を読んで魅力を感じてしまった人は様々な場所で出会える蝶ですからぜひとも触れ合ってみてください。

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