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アケビコノハは珍しい? 黄色い模様が美しい大きな蛾の紹介

アケビコノハ、美しく珍しい虫?

およそ初夏から晩秋までにかけて夜の外灯などを中心にアケビコノハという蛾を目にすることができます。

虫好きな人で嫌いな人はいないんじゃないか?というぐらい魅力的な蛾

枯葉擬態の性質や外灯にやってくる理由は以前紹介した記事があります。(秋の蛾関連記事タブより)

擬態、美しい翅かつ大きい、遅い時期まで採集が可能、トラップによる採集など非常に面白く、魅力的な昆虫ですが、なかなか出会えないという現実もあるかと思います。

そこで今回はアケビコノハの珍しさを中心に紹介していきたいと思います。

アケビコノハとは?

アケビコノハはヤガ科に所属する大型の蛾の仲間です。

前翅、後翅ともに特徴があり面白い

枯葉にしか見えない見事な前翅と鮮やかで見惚れてしまう黄色い後翅の組み合わせが大変美しい夜行性の蛾です。

成虫は主に4~11月とかなりの長期間目にすることが可能です。これはアケビコノハの食草がアケビを始め非常に身近なものであり、成虫越冬を行うためです。

幼虫はつる植物のアケビを利用し、その奇妙な見た目から注目を集めますが写真が無いのでここでは紹介しません。

夜の森で遭遇したアケビコノハ。LEDライトに引き寄せられた。

夜行性であり、主に外灯周辺、カキなどの熟れた果実、樹液周りなどで目にすることが可能です。

個体数は多い訳ではありませんが、平地から山地まで広く分布しているおかげで意識して探してみると見つける機会はあります。

成虫の体長は開帳時でおよそ10㎝前後、頭部には天狗をほうふつとさせる突起があります。

突起は口。熟れた果物などに刺して汁を吸うとの記述がある。見たことはない。

待機時には翅を完全に折りたたみ枯葉に擬態するモードと後翅を開いて威嚇?するようなモードがあります。

前翅以外は体や翅の裏までも黄色をしていますが、擬態時にはその全てが隠れてしまうため、事前に認識していないと見つけるのは難しいでしょう。

見つからないアケビコノハの珍しさ

アケビコノハですが食草はつる植物のアケビです。

フェンスがあると絡みついていることが多い

園芸のヒイラギナンテンを利用する事例もありそのどちらとも非常に身近な植物です。

特にアケビは自生種であり、鳥散布ですからチョットした林縁に足を運べばあります。

アケビコノハは年2化と言われる。適切な時期に探す必要があるのか。

しかしながら探してみると幼虫も成虫もなかなか見つかりません。

これについては食草が広範囲すぎて逆に対象を絞りにくい可能性があるのではないかと考えられます。

公園のみかんにいたアゲハの幼虫。食草が限られるので探すのが楽。

例えば庭先のアゲハチョウは街中で産卵できる樹木がある場所が決まっているために特定の場所で簡単に見ることが可能ですよね。

アケビコノハは食草となるアケビが林内に非常にたくさん分布しているため、人の通れるような通路沿いなどでなくとも他の場所でも十分発生できてしまいます。

林縁でなくとも人の入れない場所にアケビは簡単に侵入する。目につきにくくなる。

このことが見つけにくい要因なのではないかと思います。また、つる植物であるアケビは5枚の葉を持ち非常に密度が高い植物です。

覆いかぶさるようにして幼虫の姿を隠してくれるため、天敵忌避効果も強いのではないかと考えられます。

植物で覆われてしまうとその下は非常に見にくい

そもそもアケビはつく虫も少なく、アケビコノハを探す方くらいしか見ないと思われます。

逆に言えばアケビコノハを知らなければ見向きもされない植物ですので、見つからないのも当然と言えます。

アケビコノハの擬態。自然下にいたら分からない。木についていればなんとか。

さらに成虫は枯葉擬態をしています。

この擬態は昆虫界でも見事なもので、他の虫の採集に慣れているような人でも溶け込んでいたら見つけられない程の擬態です。

これによりアケビコノハの発見はたまたま通った場所にいて飛んでくれた、外灯など灯に来ていた、熟れた果実などに食事に来ていたというかなり限られた状況になるため、見つからないのだと思われます。

過去の遭遇ではこの虫単体を探したことはないがいずれも灯り

しかし、食草が普通種であることから個体数自体はそれなりにいるものと思われます。

例えば各種公園協会や博物館などの記事を探ってみると、アケビコノハは比較的街中であっても見つかっている記事が出てきます。

同じ境遇を感じるアオカミキリ。広く薄くショッピングモールの植え込みから山地までいるが、どこでも個体数は少ない。

普通種ですが目につく機会が少ないので珍しいと勘違いされている虫なのではないかというのが結論ですね。

アケビコノハの探し方

アケビコノハはカブトムシやクワガタ虫を探すような手法ではなかなか見つけられません。見事な擬態をしていますからね。

有効な手法としては彼らから来てもらう戦法が有効です。

最大7000lmのライト。カトカラ、アケビコノハ、ムクゲコノハ、フクラスズメなどのヤガ科の蛾はLEDライトによってくるらしい。

まず山地を始めアケビがあることを確認した林縁部などの周辺の外灯周りです。

山中で探してみた感覚としてはアケビコノハはLEDにもよってくる性質があるようです。山中を強力なライトで照らしていると飛来することがありました。

LEDに誘引されると逃げられないらしい。地面に撃墜を繰り返していた。

もう一つ有効な手法が蜜や熟れた果実などのトラップを設置することです。

特に晩秋であれば厄介なスズメバチなども活動していませんのでアケビコノハに対して効果的に働かせることができます。

樹液のトラップと同様に酢や黒糖、お酒を混ぜたジュースなどを利用するのも手

有名なのはカキですね。グジュグジュなカキを使いましょう。




浅く広い範囲に分布すると考えられるアケビコノハは性質を利用しないとなかなか遭遇できない虫です。

なんといっても美麗。そして晩秋までさがせる。

しかしいざ見つけた時の他の蛾にはない厚み、大きさ、枯葉感、美しい翅などは虫というものに興味を持つのに十分な素質があります。

私も非常に好きな昆虫の1種で毎年探すのを楽しみにしている昆虫です。

秋の蛾関連記事

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外灯に来る性質などの基本情報はこの記事より。
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晩秋に出る巨大蛾は他にもいます。ヒメヤママユとウスタビガ、11月と12月に出る大型種の紹介です。