どう見ても枝な蛾
昆虫界隈にはナナフシを始め見事な擬態を見せてくれる種類もおいですよね。
ひとえに擬態と言っても毒のある虫に擬態するものや自然環境に溶け込むものなど様々なものがあります。
その中でも自然に溶け込むことで有名なものが今回のツマキシャチホコです。
枯葉擬態で有名なムラサキシャチホコに対し、枯れ枝擬態という面白いものが見られます。
ツマキシャチホコとは?
ツマキシャチホコはシャチホコガの仲間に所属している体長およそ4㎝前後の蛾です。
幼虫はコナラやクヌギなどを利用しており、雑木林環境で見ることが可能です。
成虫は枯れ枝に擬態していると考えられ、クヌギやコナラのやや白い新鮮な枝にそっくりな見た目をしており、知らなければ昆虫だと分からないほど見事な擬態を見せてくれます。
成虫は夜行性で、主に外灯に飛来しているところに遭遇することが多いです。
出現時期はおよそ7~8月程と短く、夜間に頻繁に行動する人や雑木林近くに住んでいたりしないと遭遇するのは難しいかもしれません。
ツマキシャチホコと擬態
生物の進化はダーウィンの進化論があまりにも有名ですよね。
キリンの首は餌を食べるために首を伸ばそうとして伸びたのではなく、多くの個体がいる中で首の長い個体がより広範囲の餌を食べることができたため、その形質が受け継がれてきたというものです。
擬態の昆虫にも同様のことが言え、ツマキシャチホコの枯れ枝に擬態する能力は数千年の歴史の中で進化してきたものであると考えられます。
例えば枯れ枝の中にツマキシャチホコを入れてみればこの通りです。
この蛾の凄い所はクヌギやコナラの枝をここまでするかというばかりに真似ている点ですね。
枯れたクヌギやコナラは樹皮が白みがかっていることも多く、折れた場所は白い切り口が見られます。
樹上で枯れた枝は木に付きながらも確実に褐色腐朽菌や白色腐朽菌によって分解されていきます。
そしていよいよ耐えられなくなったところで折れて落下してくるんですね。
白色腐朽菌の割合が多いからか切り口はこれらによって白化していることもあり、ツマキシャチホコの後翅の模様や頭部の模様はこれを完璧に再現していると考えられます。
この後翅の白模様は完全に斜めに割けた枝を再現していますよね。
さらにこの蛾の面白い所は飛翔時と停止時でポーズが違うところです。
開いていると樹皮っぽい蛾なのですが、それをカモフラージュするために縮こまります。
シャチホコガの仲間に見られる体高の高さを利用して枯れ枝の丸みを再現しているのです。
触覚や足も可能な限り引っ込めることで、ある程度の距離から見れば落ちた枝そのものに見えるんですね。
これにより上部から見ても横から見ても違和感なく溶け込んでいます。
ツマキシャチホコの見つけ方
私がこの蛾を見つけたのはかなり偶然が強かったです。
一つ確実に言えることは、この蛾は先に姿を知っていないと見つけられないということですね。
私の場合には道路の端にたまたま擬態しているツマキシャチホコを見つけまして、こんなところに綺麗に断面がある枝が汚れなどなくついているか?という疑問から見つけることができました。
虫を見る目はそれなりに鍛えているつもりでしたが、それでもギリギリだったんですね。
擬態モードのツマキシャチホコを目視するのはとても難しいので見つけたい方は雑木林周辺の外灯を探してみるのがおすすめです。外灯直下や周囲の葉についていればそんな場所に枝はつかないので簡単に見つけられると思います。
擬態昆虫としてとても面白い生き物なので、ぜひじっくりと観察してみて欲しいですね。
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