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2024年高尾山昆虫観察記13 ヒメヤママユとウスタビガを求めて(中腹と麓の比較編)

秋冬の蛾が面白い

晩秋の大目玉であるヒメヤママユとウスタビガ。

前回のヒメヤママユ。11月10日時点ではあまり多くはなかった。

前回の記事では麓でヒメヤママユ1というなんとも言えない成果となってしまいましたが、中腹に上がって標高を稼ぎ、温度の低い場所に移動すればウスタビガも出ているのではないかと考えました。

今回は中腹と麓の両方で探してみた探索の報告です。

中腹へ

今回は夏に高尾のオオトラカミキリを探しているときに知り合った方と一緒に探索してきました。

17時前の駅。曇りでは既に暗く、その割に人はかなり多い。

この時期のケーブルカーは平日で最終便が17時45分となっています。それに合わせて集合し最終ケーブルカーで登っていくことにしました。

最終ケーブルカー前後でも下りは大混雑のようで、紅葉シーズンの凄さを感じます。

この日は21時頃まで高尾付近にいましたが、山中では夏のように登山者がいました。虫屋は我々以外にはいなさそうでしたね。

中腹の散策

中腹に到着後早速外灯を見て回ります。

ビアガーデンがやってないので、中腹トイレは閉鎖されていた。薬王院のは不明だが山頂以外にない可能性がある。

今日は満月の日だったのですが、晴れ予報に対して実際は曇り。月が隠れて良さそうな感じです。

外灯に関しては夏に利用した外灯の感覚がそのまま扱えます。夏に昆虫の飛来が多かった場所を中心に見ていきましょう。

とはいったものの意外と蛾の飛来はありません。

いつもの外灯たち。空気が寒いと同じ場所でも別の場所のよう。

麓ではキリガの仲間やエダシャクの仲間などが見つかっていましたが、中腹の方では目に付きやすいサイズの蛾が多くはありません。

複数人で行くと移動中も虫トークが盛り上がって良いものですね。

外灯周りを見ているとヤママユっぽい感じのシルエットが見つかります。

翅を広げたヤママユに見える

しかし殆どの場合それは枯れ葉なんですよね。ヤママユ探しあるあるだと思います。

そのまま成果も少なく夏に蛾が多かったエリアに足を運ぶと、外灯周りを飛ぶ大型のシルエットを発見。

網の届かない場所に入った個体を二人で慎重に観察&移動具合の確認報告をしてうまくネットイン。

網の中にはヒメヤママユの姿がありました。とりあえず1匹出会えて何よりです。

大きい蛾はテンションが上ります

前回のヒメヤママユでは三角紙に洗濯ばさみを挟んで可動域を狭める方法を取っていたので今回もそれを想定していたのですが、同行の方がアンモニア注射を持ってきてくださったのでそれを試させてもらうことに。

蛾の魅力に惹かれつつあるこの頃に貴重な体験をさせていただき感謝です。

話によるとアンモニア水はほんの少しで良いようです。蛾の胸部に注射を刺し、アンモニアを注入するという文字では簡単なものなのですが、大型のヒメヤママユでも最初はなかなか躊躇してしまいます。

注射時。刺す感覚に慣れが必要。強くやると貫通してしまう。

♀のヤママユでは注入後に産卵行動が見られるなどなかなか心に来るものはありますね。初めて蝶の胸部圧迫をしたような感覚を覚えます。

その後付近の外灯にて大型のカトカラらしき印象の蛾が飛来。外灯周りを活発に飛ぶその虫の正体は...

上から見ると地味だが、翅の下には美しい銀色模様がある。

フクラスズメでした。飛んでいても後ろの銀模様はなんとなく見えますね。こちらもアンモニア注射を試みます。

これまでは酢酸エチルタッパーに入れて弱ったところを三角紙に入れていましたが、アンモニア注射は手間も少なくかなり効果的でいいですね。

来春にはエゾヨツメやイボタガを狙うつもりなので必要道具となりそうです。

フクラスズメを景気に来年はカトカラも集めてみたいものです。

キシタバ、オニベニシタバ、シロシタバ今までであってなぜ取らなかった。

夏の高尾の楽しみ方が年々変わっていくとともに、自身の知識と興味で同じ場所でも見る場所対象が変わる自然の魅力を痛感します。

去年の観察記は夏だけでしたが今年は夏、秋、初冬。来年はもう春から高尾で出会いたい虫たちが多すぎてスケジュールがパンパンです。


話は現場に戻り、夏場に良い外灯の付近に到着。

蛾の欠点は種がわからないこと。

今年ヨコヤマヒゲナガカミキリを始めて捕まえた街灯を見に行くとその外灯にだけやたら多数のキリガ類がついていました。

残念ながら分かるのはケンモンミドリキリガ位なものですが、特徴ははっきりとしているので図鑑など購入したら後ほど調べてみようと思います。

色、模様、大きさ、なにか特徴がないと素人にはわからない。

この辺で小雨が襲来。森の中で影響は薄いものの2つのエリアを除いて蛾の出現がかなり薄いことから麓へ移動することにします。

麓で引き続き散策

今日同行してくださった方は既に春のエゾヨツメやイボタガの経験もある方で、麓で実際に見つけたときの外灯や時間などの有益な情報をくださいました。

麓の適当な灯りを見て回る。

前回の観察機ではヒメヤママユ1程度で終わってしまった麓なのですが、月の隠れている今回はそれなりにいい虫の飛来が見られます。

まず活発に飛んでいるオレンジっぽい印象の小型蛾。

飛翔段階では一体何なのか不明でしたが、ネットインして休んだところで確信を得ます。

次回から酢エチタッパーで弱らせてアンモニア注射する予定。

この枯れ葉のような特有の小型種はアカエグリバでしょう。エグリバの仲間の中でアケビコノハとアカエグリバはかなり精度の高い枯れ葉擬態を見せてくれます。

このアカエグリバは小型で体高があるため、アンモニア注射に苦戦してしまいました。結構剥げてしまいましたが、今期見たいと思っていた蛾の1種なので思い出の1個体となります。

程よい頻度で見つかるため、この時期の採集の割には意外と飽きがこない。

そして麓外灯に止まる大型の蛾。これはヒメヤママユですね。この時期のヤママユは非常に大人しく、急がなくても大丈夫なのが嬉しいところです。

ゆっくり確実に捕まえると、♂のヒメヤママユでした。

翅先が擦れているものの比較的きれいな個体です。ヒメヤママユサイズなら注射にも慣れてきました。

今日は♂♀ペアで取れたのでこれで満足。後は観察を楽しみます。

個人的にはヒメヤママユよりも嬉しい一種。

ここで麓の旗に探している虫を発見。大型の枯れ葉に擬態しています。これはもう迷うこともないですね。アケビコノハです!

なんやかんや飛来直後のアケビコノハに遭遇するのは初なので(たいてい夜明けの残党を見つける)なかなかうれしいです。

魅力しか無い虫。探すとなかなか見つからないのでラッキー。

そして直近のアケビコノハの〆に苦戦した経験からここでもアンモニアパワーを実感。この頃には必須アイテムと認識していました。

この直後外灯付近の旗にてヒメヤママユを発見。これは小型♂の完品なようでかなりキレイです。

自然下ではなかなか見られなさそうな個体。これでかなり小さく、♀の半分くらいしか無い。

同行者の方にこちらは譲りました。ヤママユは枯れ葉のように落ちてくるよという話を道中していただきましたが、思いがけず落下したヒメヤママユはまさに枯れ葉のように一切羽ばたくことなくひらひらと落下してきて感動しました。

これは夜の採集でないと見られませんね。

そんなこんなで17時に中腹に登り21時までぐるぐると周り、ヒメヤママユ3アカエグリバ1フクラスズメ1アケビコノハ1 他キリガなど多数見つかりました。

ヒメヤママユに関しては中腹にて探すメリットはそこまで多くないように感じましたね。

今回ウスタビガには出会えなかったので、気分次第ではウスタビガの出る時期にまた訪れたいと思います。

晩秋の蛾探しは楽しいですが、そこに虫屋の方がいると更に面白いですね。満足度の高い観察でした。

おまけのタヌキ

599ミュージアムの周辺に生息しているらしい

人のいなくなった商店街周辺ではタヌキの軍団が見つかりました。同行者によれば夏に子どもだったタヌキ集団を見ていたとのことなので無事おとなになったようです。疥癬などはなさそうで、そこそこ人馴れしています。可愛い大きさでしたね。
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次のウスタビガ編。おそらく今季最終回となります。気合があればウスタビガリベンジがあります。

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前回はこの記事。本記事のわずか3日前なのですが、晴れで月が出ていたのが今回との差かもしれません。
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今季高尾山観察記の1話です。今季は夏から晩秋まで昨年と比べてだいぶ活動期間が増えました。来年は更に増えることになりそうです。