ぐるぐる巻きの不思議なお花
自然の中を散策していると、特にこの初夏の時期にはスッと立ち上がり、軸にぐるぐると巻いたピンク色のお花が目に付くのではないかなと思います。

茎にぐるぐると巻いたような面白い特徴を持つその植物は、季節のお花の中でも身近で特に印象に残る方が多いのではないかなと思います。
その植物の正体はネジバナ。なんとこの見た目で希少なランの仲間の1種だったりします。
今回はなぜか芝生環境によく表れる奇妙なぐるぐる巻きの植物について紹介していきます。
ネジバナとは?
ネジバナは高さ10㎝程度の芝生的な環境に現れるラン科の植物の一種です。

地面からスラリと立ち上がる茎と、ピンク色のお花をぐるぐると巻き付けるかのように開花させ、人々の目に面白い格好の植物として映ります。
出現時期はおよそ5月から8月程度までと意外と長く、街中の環境であっても芝生や植え込みを始め幅広い環境で目にすることができます。

特に重要なかかわりを持つ芝が都市部においても身近に植えられていることが多いため、植生が単一化しやすい都市部の中でも花の色合いや形状などから気になる方が多い植物になると思われます。
花は基本的にはピンク色をしており、細部をよく見てみるとグミのような砂糖でコーティングされたような光沢があり非常に美しいものとなっています。

ラン科の植物であるため、花はちゃんとラン科の構造をしており、花の正面にはラン科に特有のずい柱というおしべとめしべが合体した特有のものがあります。
これが目玉のように見えるのがラン科のお花の多くに見られる特徴ですね。
加えてラン科といえば土中の菌糸などとの共生が有名です。

ブナ科の根圏で活動する菌糸と共生するキンランやギンランのようにラン科は土中の何かしらの菌類とから栄養をもらい受け渡す特別な関係を結んでおり、その出現場所というのはかなり限定されます。
ネジバナと共生
ネジバナの出現環境は意外と広く、こんなところにも生えているんだと驚くようなことがあります。

主に草地環境に出現する植物ですが、田園環境など水分が多い場所にも出現することがあり、他のラン科に比べても生息環境の好みにはうるさくないように思います。
身近に現れる場所ではイネ科の草本群落と関連が強いように思われ、芝生、や雑草のオヒシバメヒシバなどからなるイネ科の群落なんかにも出てくる印象です。
そうした環境にはキク科の植物やマメ科の植物、アヤメ科の植物などなど色々な植物が混生していますのでネジバナはそうした草地環境に広く出現する菌と共生しているのかもしれません。

ネジバナの種子の発芽を研究したものである「ネジバナと菌根菌の関係性を探る ネジバナの種子を発芽させるにはどうすればよいだろうか」(繁森 2017)の中ではネジバナの出現場所に優先する植物としてはオヒシバ、ウラジロチチコグサ、タチハイゴケ、ニワゼキショウの4種が優占する可能性が示唆されています。
種子の発芽に必要となる菌類はオヒシバがから見つかっているようで、このネジバナがオヒシバなどを始めとした草本群落から見つかるのにはやはり共生関係をベースとしたトリックがあるようです。

確かに過去のネジバナの発生場所を考えてみるとオヒシバはある可能性が高いように思います。
ネジバナの巻く向きと巻かないもの
ネジバナの花の巻き方は非常にユニークであり、遺伝子の多様性が見て取れるものとなっています。




例えばつる植物は種子応じて巻く向きが決まっていますがネジバナにおいては右巻き左巻き、その巻く強度と程度は個体によりかなりばらつきがあります。
巻いているからネジバナという名がつけられているわけですが、珍しいものとしては全く巻かないものもあります。

私は愛称でネジレナイバナと呼んでいます。
垂直方向に立ち上がるこうしたネジバナは個人的には階段状で連なっているので訪花性昆虫的には活用しやすいのではないかなと思います。
巻いている方は人間のクライミング的な視点で考えるとなかなかに腕力が必要そうで歩いて登るのは大変そうな印象を受けます。
でもネジバナって昆虫が来ている印象はあまりないんですよね。

ラン科の仲間にはキンランギンランのように花に蜜を持たないものの存在が認められています。
ネジバナももしかすると同じように蜜を持たずに花の形状だけを保ち、地上徘徊性の生き物などを活用して花に立ち寄ってくれた生き物などを利用しているのかもしれません。

例えば腐生植物のギンリョウソウは一切光合成をしない暗い林床に生える菌利用の植物です。
一見すると虫なども来ないように思われる植物ですが、地上徘徊のゴキブリやアリなどが花には訪れて種子の散布に貢献するそうです。
草地に生えていればそれだけでそうした徘徊性の虫が訪れてくれる可能性はあると考えられそうに思います。

昆虫たちは花に蜜があるかどうかというのを学習していると考えられ、アゲハチョウのように好きな色を学習している生き物というのも他にも広くいるものと考えられます。
花に蜜がないと仮定すればそこでご褒美をもらえない個体はネジバナにくることはなくなるといえますが、まだそうした学習を経ていないものならばご褒美がなくともいくつかの花を徘徊したりする可能性はあるのではないかなと思います。

こうした様々な仮説を考えてみるとネジバナの多くがぐるぐると巻いているのは受粉するうえで何かしらの利点があると考えられますし、必ずしも巻いていないのは巻かなくても利点を享受できる場合があるからではないかと考えられますね。
私は地上部から上がってくる生き物が関連しているのではないかなと思います。
ネジバナを観察してみよう
長々と勝手に考察してきましたが、ネジバナはとても美しいお花です。

それだけでなく目に見えない空間を創造するのにもうってつけの対象であることがよくわかってもらえたのではないかなと思います。
ラン科の菌との共生は種により割合も異なり、自分で光合成をする程度も変わります。

ネジバナのように発芽に他の菌の力を必要とするものから着生性の面白いものまでおり、花の形状もランの仲間の中でもかなり違ったりします。
ランといえば花の造形にばかり目が行きがちなものですが、目に見えない土中で繰り広げられている菌糸のネットワークを想像できるのもラン科は特に面白い視点かなと思います。

ネジバナは前述の通りオヒシバと強い関連がある可能性が示唆されていますので、オヒシバがある場所に足を運んでみてネジバナが生えているか観察してみてください。
参考文献 「ネジバナと菌根菌の関係性を探る ネジバナの種子を発芽させるにはどうすればよいだろうか」
繁森有紗 科学と生物 2017
https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=900
目につく植物シリーズ
pljbnature.com
葉の上に身ができる不思議な植物ハナイカダ。アリによる種子散布などが考えられる植物ですね。
pljbnature.com
木の上にできる緑色のモコモコはヤドリギです。ポケモンでおなじみですね。
pljbnature.com
白い液を出すボンド草でおなじみの植物もありますよ。
pljbnature.com
腐生植物の観察も楽しいですね。