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クリのお花で昆虫採集! 5月や6月にカミキリやチョウを探すならクリの花を掬え!

虫の宝庫、クリ

黄色い尾状のお花がクリ

初夏に色々な虫を捕まえたいと思う場合まずお勧めしたいのがクリのお花です。

クリの花はアカシジミなどのゼフィルスを始め、カミキリムシやタマムシなどなどとにかくいろんな虫がやってきています。

一年の内僅かなボーナスタイムなので昆虫採集始めたてでよくわからない人、色々な虫に出会いたい人などはぜひ活用してみてください。

クリのお花

クリはおよそ5月中旬から6月中旬ごろにかけて山地や平地で時期は多少ズレますが花を咲かせてくれます。

平地では5月下旬頃、山地では6月中旬ぐらいまで

ブナ科のお花であるため、形は動物の尾を連想させる黄色い穂状をしており、塩素のような特有の香りを持つことが特徴として挙げられます。

花付きはとてもよいため、花期になると遠目からでも黄色い花火の後のような姿と近づいた時の塩素臭で初心者の方にもわかりやすいはずです。

クリのお花を掬う方法

残念ながらたくさんの虫に会うためには100均のような小さい網では不足しています。

手の届く範囲の増加により昆虫採集がとても楽しくなるアイテム

クリのお花のパワーを味わうためにも長竿網が欲しいです。逆に言うと長竿網がある場合、クリのお花は楽園です。

環境にもよりますが信じられないくらいの虫が入ってきますからね。

方法はシンプルで葉をスウィーピングする要領で花を掬っていきます。なるべく他の花を揺らさないようにするのがコツですね。

クリの花を塊ごとに掬っていくイメージ

天気は晴れの方が良いです。甲虫の飛来具合が違うと思いますが、一方でゼフィルス系(後述のアカシジミなど)は曇りの方が入る気がします。

ゼフは照度によって活性化が決まっている可能性があるためですね。

今回は曇りと晴れの2回分の花掬いで見られた虫を紹介します。

見られた虫の一部を紹介

まずはクリといえばアカシジミです。

白っぽいお花に映える赤色のシジミチョウ

この2種は切っても切り離せないくらいセットで目にする蝶ですね。

ゼフィルスの愛称で知られる美麗なシジミチョウです。樹冠でテリトリーを作る性質上おりてくることはあまりありません。

この仲間は朝夕の限られた時間の飛翔が知られていますがクリのお花にはこの条件を無視した出現傾向が見られます。

恵まれた場所では数種のゼフが見られますが当地ではせいぜいアカとウラナミアカがいい所です。

青い光沢を持つハナカミキリの仲間。とてもきれい。

フタコブルリハナカミキリもこの地域では入ってきます。
人気の高いカミキリムシであり色彩変異が見られることからマニア人気の高い虫です。

特に群青色ともいえる強い青みの有る光沢は他の虫ではなかなか見られないいい色合いです。加えて足には真っ黄色のものや黒みを帯びるもの、黒いものなどがおり面白い虫です。

当地では多い種類ではなく、網の中に入る姿を見るとついつい嬉しくなってしまいます。

クリの花によく来ているアオジョウカイに擬態していると考えられますが、アオジョウカイには強力な毒があるという訳ではないのが不思議です。

アオジョウカイ。フタコブルリハナカミキリに似ている。

アオジョウカイは常連ですね。大型のシルエットがあればこの虫をまず疑うというくらいよく目にします。

前述のフタコブルリハナカミキリに似ていることから飛んでいたりすると無視できない憎いやつです。

webなどの情報をさらりと見た感じでは毒があるわけではなさそうです。似たアオカミキリモドキには体液に毒があるため、勘違いされているのかもしれませんね。

個人的には数だけやたら入るので厄介な虫です。かっこいい虫なんですけどね。

アオカミキリモドキ。どう考えてもアオカミキリに似てはいない。

アオカミキリモドキもよく入ります。網の底から飛びあがって来たり人を木と勘違いして止まりに来たりします。この虫には体液に毒があることが分かっており、うっかり潰すと被害にあってしまうことから中々に侮れない虫です。

体液に毒があり飛翔性がある虫としてはアリガタハネカクシの仲間がいますよね。通称やけど虫で知られる彼らもうっかりはたいたり潰してしまうと水ぶくれができると聞きます。

それと同じ性質があるためとても厄介な虫です。

実は夜行性の傾向が強い虫であり、葉のスウィーピングなどしていると非常によく入ってきます。

ホタルと付くが、ホタルとは全く関係ない。

ホタルカミキリもよく目にしますね。発光するホタルとしてヘイケボタルやゲンジボタルはとても有名です。

彼らのように胸部に赤い模様があるのがホタルカミキリの特徴です。残念ながら発光はしません。

ネムノキを利用し、クリの花と同所で目にすることも多いことから街中の公園などでも目にする機会は多いはずです。

クリの花では有りませんが各種お花を訪れます。

ヒメアシナガコガネは最も入る虫と言えますね。この虫は個体変異?なのかやたらとバリエーションが豊富で数が入る割には飽きの来ないいい虫です。

クリの花を掬って網の底に大量にうごめく虫がいればそのほとんどはヒメアシナガコガネだと思われます。

後ろ足が地味に長く、網から取るのに苦労する虫ですね。

もふもふな毛が多数ある。これにより受粉を助けていると考えられる。

ハナムグリの系統もやはりおおいです。

クリの花を見つけると花の上空をぶんぶんと飛んでいるコガネムシ系の仲間を目にするはずです。ヒメアシナガコガネがほとんどなのですが中にはより大型のものがおり、コアオハナムグリなどの数種のハナムグリが入ります。

クリの受粉に大いに貢献してくれているいい虫たちですね。

今回紹介したのはよく目にする一部の昆虫です。

クリを始め虫たちに人気のお花を掬えば多様な訪花性昆虫に出会うことは難しくありません。

花掬いは特定種を狙うこともありますが、その地域にどんな虫がいるかをチェックすることにも優れており、クリ以外にもいろいろなお花で花掬いが楽しめます。

花掬いをより効果的に行う方法まとめ

長い網を使うべし

こうした花掬いをするならば長竿網はやはり必要です。

5m程度あると1mの網と比べだいぶ掬える範囲が増えて楽しい

花掬いの対象となる多くの樹木は背丈が10mに近いものからそれ以上のものまであります。

この中の花を掬えれば掬えるほど虫に出会えるチャンスがあるため、長く伸びる網を使用するのがおすすめです。

条件が良ければ手の届く範囲の網でも採集はできるのですが、限られた木の中から更に限られた木をみつけることになりとても効率が悪いです

枠の大きい網を使うべし

網のサイズはこうした葉や花を掬うスウィーピングという採集方法では零れ落ちる数を減らすことや逃げる隙間を無くすことからとても効果的です。

葉のスウィーピングでは50~60cm、花ではもっと大枠を使う人も。

私は50㎝の網を使っていますがクリの花を掬う場合にはもう少し口径が欲しいと感じる場面は多いです。

網枠は大きすぎるとスウィーピングで干渉しすぎるケースも出てきます。この辺は実際に利用してみてどれくらいが自分の用途に合っているかというのを検証する必要がありますね。

天候を考慮すべし

昆虫の多くは晴れた日の午前中に活発に花に飛来する傾向が見られます。

晴れと曇りではぜんぜん違う。

また、対象の花が生えている向きによっては午前もしくは午後にしか日が当たらないなどの条件も出てくると思います。一概には言えませんが、可能であれば午前中を選ぶのがおすすめです。

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