超巨大シャクトリムシ
春から夏ごろにかけて自然の中ではたくさんの昆虫が出現します。

その中でもこの時期に目につくちょっと苦手な人も多いものは幼虫の仲間ですよね。
幼虫の中でも身近なものとしてはシャクトリムシの仲間が挙げられます。
記号のΩのような特有の動きをする小型種の多いかわいらしいイモムシの仲間であり、毒などもない安全な幼虫の一種ですが、その仲間の中にはシャクトリムシの常識を覆すような巨大種がいたりします。
その虫の正体はトビモンオオエダシャク。初めて見るとびっくりしてしまうサイズ感のシャクトリムシです。
トビモンオオエダシャクとは?
トビモンオオエダシャクはエダシャクの仲間の大型のガの仲間です。

成虫は春の3~4月ごろに出現する春の蛾の一種であり、他のエダシャクの仲間などと比べてもサイズ感が3周りぐらい大きい蛾です。
成虫の大きさは開翅長で5~7㎝程度もある大型種です。春の大きな蛾として人気があります。
幼虫は主に春ごろから夏ごろにかけて出現しサクラ類やブナ科など広い植物を食べることで知られています。
私は桜やコナラ、モミジ類などで幼虫を観察したことがあります。

生息域は広く山地はもちろん緑の残る場所があれば都市化の進む場所でも見られることがあります。
一方で幼虫は最大7㎝~8㎝程度の巨大な幼虫になるのにもかかわらず枝に見事なまでに擬態しているため、その姿を見ることは難しかったりします。
幼虫成虫ともに毒はなく、安全に触れ合える非常におすすめの昆虫といえますね。
トビモンオオエダシャクの幼虫はとにかくでかい
トビモンオオエダシャクの幼虫は初めて見つけてしまうと「え?何この大きな幼虫?」と疑問が湧いてしまうぐらいびっくりするはずです。

日本のガの幼虫の中にはヤママユガやスズメガの仲間のように10㎝ぐらいに迫るものもいます。
それらの多くの幼虫は太くて長いというまあ分かるような特徴をしています。
クワガタが大きくなるにつれてその厚みを増していくように大きくなると太くなっていくものです。
トビモンオオエダシャクの面白い点は大きいのに細い点なんですね。
最大で8㎝程度にもなる巨大種でありながらその太さは他のシャクトリムシのように細めなんです。
エダシャクの仲間でここまで大きくなるものは他にはおらず、見つけるタイミング次第ではその時点で種類が確定するような面白いサイズ感です。
枝に擬態するトビモンオオエダシャク
トビモンオオエダシャクといえばその擬態性能の高さで時折話題となります。

擬態は自然の何かに溶け込んだり毒のあるものに姿を似せることで捕食される可能性を低くしたりと多岐にわたる生存戦略の一つです。
細長いトビモンオオエダシャクは何に擬態するのでしょうか?
それはもちろん枝です!

体長が8㎝と最大サイズではあまりにも目立ちそうな大きさですが、屋外でこのシャクトリムシを見つけるのは至難の業です。
私は普通の人よりは自然の中で活動する機会が多いと思いますが、枝を網でガサガサとスウィーピングすると時折入ってくる程度で目視して見つけられる割合はかなり少ないです。
トビモンオオエダシャクはその長い体を生かして幹から生える短い枝や、幹から生える胴吹き枝などに非常にうまく擬態しています。
頭部には突起がついているのですが、こうした突起が程よく芽生えていない目のように見え、その擬態性能の高さがよくわかります。

さらにユニークなのがこの巨体でありながらとりつく足をうまく活用してピンと体を張ることです。
幼虫類というのは頭部の方に食事時に葉を抱える足とお尻の方に体を支える吸盤上の足を持ちます。
このお尻の方の吸着力を活用して見事に幹や枝に張り付き、自身も枝の一部のようにふるまうのです。
遠目から見ればその姿は疑いようのない枝です。
私は筋トレをしていますが、この体の長さで立ち上がり、体を支える筋力はすごいと思いますね。

やってみればわかりますが、あの角度を維持し続けるのには足や体幹の筋肉が相当ないといけないでしょう。
少なくとも私はトビモンオオエダシャクの45度近いような角度は保てません。
マイケルジャクソンのゼログラビティぐらいでないと対抗できないでしょう。
擬態と天敵の多い幼虫
エダシャクの多くはこのように擬態して生活していると考えられます。

なぜそのような技が必要なのでしょうか?
人間の生活ではピンときませんが自然下では常に生き物は何かを食べ何かに食べられます。
幼虫類というのは非常に天敵が多いことで知られており、ざっと上げるだけでも春に繁殖期を迎える鳥たちの餌、寄生性のハチやハエ、肉食性カメムシ、ハチ類やオサムシのような強力な捕食者などなどと色々います。

特に春先の時期には繁殖期を迎えた鳥たちが数多くのイモムシ類を捕まえてひなを育てています。
身近な場所にもいるカラ類は特に強力な捕食者であると考えられ、よくイモムシを捕まえている場面を目にします。
そんな背景がありますのでエダシャクの仲間も全体的に枝っぽく色も緑や茶色のような自然の色に近いものが生存能力にたけていたため、今も多くが生き残っているのではないかなと思いますね。
トビモンオオエダシャクは姿も大きいですが、擬態時に忍耐力は高く見事に溶け込んでいます。大きいですが、擬態能力が高いので死なずに命をつないでいるのでしょう。
トビモンオオエダシャク観察
ここからはそんな魅力あふれるトビモンオオエダシャクを探してみましょう。

トビモンオオエダシャクは成虫が3月の中旬ごろに出現します。産卵し、幼虫が出現して大きくなるのがおよそ4月中旬程度になってきます。
それぐらいの時期から自然下では見ることができるでしょう。
いる樹木については非常に幅広い樹木につくことが知られていますが、春から夏にかけてはコナラなどのブナ科樹木を見る機会が多いためこの木でみることが多いですね。
それからモミジ類は4月の上旬、中旬ぐらいにかけて昆虫がよく来るため、それを掬うことが多いのですがそれに交じっていることがたまにあります。

前述のとおり目視して見つけることはかなり難しい種類であるため、他の植物利用の昆虫を探すついでに副産物的に探してみるのがおすすめです。
ナガタマムシのスウィーピングなどの時に見つかることもありますね。
見つけるのはとても大変なのですが、見つけるとついついうれしくなって捕まえてしまう幼虫です。
見つけることがあればその細部の擬態性能にも目を向けてじっくり観察してみてください。
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