カミキリ屋憧れのトラニウス
トラニウスという愛称は昆虫界隈では有名なものです。

学名に由来する愛称を持つ虫はそれはそれはいい虫であり、多くの方に愛される存在です。
カミキリならばホソコバネカミキリの仲間のソリダやアルマン、サハリン、オダイ、フォルモサというように個別に相性があるものや、サペルやネキダリスのような仲間の総称に対して使われるものもあります。
トラニウスはこれでいうとネキダリスやサペルディーニと同じ呼ばれ方です。
トラニウスは本州ではトラフホソバネカミキリのみが見つかるようで、他のトラニウスは離島に生息しています。
こうしたことからトラニウスはトラフホソバネカミキリの愛称として多くの人に認知される人気の虫となっているのです。
そんな虫を探し求めるも敗北が続き、思わぬ形でもらうことができたので紹介していきます。
トラニウス採集
トラニウスの採集は関東の平野部では6月中旬ごろから7月中旬程度、山地を含めると7月下旬ごろまでになるようです。

最も良い時期は6月下旬から7月上旬ごろになると思われます。
有名な探し方はアカメガシワの新鮮な立ち枯れに来る個体を捕まえるというものですね。
今年はアカメガシワのいい木を秘かに見つけており、そこに来ていないかと期待しています。
時間についてですが、このカミキリの出現は薄暗い時間帯の報告が多いように感じます。虫仲間によればやはり薄暗い時間帯を好むとの情報がいただけましたので、夕方などに見ていくのがいいですね。

話によればかなり暗い時間とのことですので、アカジマトラカミキリなどと近い感覚なのかなと思います。あくまで参考にしつつ、張り付いて探していこうかと思います。
また、このカミキリはウバタマやアオマダラタマムシのように♂が周囲の葉上で♀待ちをする行動も知られています。周辺のスウィーピングを行っていきましょう。
時期は6月下旬、この木に来なければいないだろうと言えるぐらい条件がよさそうに見えるアカメガシワのポイントを訪れます。
こうしたいい木には平地ならばゴマフカミキリやケシカミキリの仲間、クビアカトラなどが徘徊していることが多いものですが、どういう訳か良さそうに見えるこのアカメガシワにはカミキリを始め虫が来ていません。

おいしそうな条件に見えるのに昆虫からすると何かが違うのでしょうか?例えば朽木に付いた菌類の類が異なるとか?
アオマダラタマムシ採集の時に虫仲間に昨年トラニウスが取れたという場所に案内してもらいましたが、そこは立ち枯れの大人の二の腕位の小さな材に来ていたそうです。
それを考えればこの木に来ないなんてことはなさそうなのですが。
また、分布的な意味でもこの地域では記録こそありませんが、近隣で死骸を昨年見つけており、いることは明らかとなっています。
なぜいないのか?全く分かりませんね。

この日はよく分からず、何か要因があるのではと別日に託します。
1週間ほど空いて訪れた2日目。材の状態も多少変わってトラニウスが来ているのではないかなとワクワクしてきます。
が、相変わらずアカメガシワの木にはヨコヅナサシガメがいる程度でカミキリの類の姿は見えません。

ダメもとでビーティングを行い飛び立つカミキリがいないか、周辺のスウィーピングで何とか確保できないか試しますが、成果は上がりません。
今期行っているアオタマムシの採集などでは天気や風、温度の条件とそれから材の程度により飛来する個体数が大きく変わる体感があります。
アカメガシワに飛来するトラニウスにとっていい時期と思えたタイミングでの採集だと思いましたが、成果を上げることはできませんでした。なぜ?

また、高尾山においても今期は秘かに狙っていました。昨年お会いした虫仲間のKさんという方がlonghorn beetl fauna in takaoという高尾のカミキリムシ層を調査した本を出版し、それでトラニウスの情報を得ていたためです。
高尾では意外にもアブラチャンを利用しているとのことで、これは盲点というかそんな生態があるんかいという感じです。
まあ探してみるといないんですけどね。
ということでトラニウスメインの採集が2回副産物で探してきたのが3~4回ぐらい続き、いずれも坊主となりました。
トラニウスのプレゼント
そこから1か月ぐらいたち、今季のトラニウスは終了だったなぁと思っていると虫仲間のIさんからプレゼントが。

偶然トラニウスを見つけたとのことで頂いてしまいました。採集記でありながらもらった個体かよという突っ込みは置いておいて、いずれは自分でも捕まえてみたいですね。
肝心のトラニウスなのですが、いやはやホソバネの名に恥じない素晴らしい造形をしていますね。
ホソコバネカミキリの仲間は上翅が退化していますが、トラニウスは細くなりつつも上翅が残っています。

その細い翅から見える下翅がこれまで見てきたカミキリと比べ大きな違和感を生み出します。
なぜこんな進化をしたのか気になりますね。
名前のトラフはハチ擬態のカミキリにつけられているものもいますが、止まっているとハチのように見えますね。細い翅はもしかするとアシナガバチなどの止まったときの翅を再現したものなのでしょうか。

それからサイズ感は思ったよりも0.8倍位小さかったですね。
事前に見ておいてよかったと言いますか、ルッキングで見つけるには黄昏時の薄暗さもあってちょっと苦労しそうです。スウィーピングはやはり行った方がよさそうな感じですね。
そんな感じで採集においては成果を上げられませんでしたが、実物の生体を見ることはできましたのでトラニウス採集記1として投稿することにしました。
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