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2024年高尾山昆虫観察記6 アカエゾゼミを求めて。

8月中下旬の高尾山事情

天候の都合により2週間も前回より間が空いてしまいました。

高尾の夏のライトアップ期間。ほんの僅かな時期なのでこれを楽しむのも吉。

今季は既にミヤマ、ヨコヤマ、ネブト、アオタマなどの高尾の人気昆虫に出会っており、8月はエゾゼミやアカエゾゼミを狙おうとしていただけに痛い期間です。

都合があったタイミングで早速アカエゾゼミをメインターゲットとして夜の高尾を訪れました。

8月中旬以降のコンディション

訪れた日は満月に近いコンディションで、この季節にしては蒸しており、風も少ないという感じでした。

20時頃から開始。この時間頃までは採集者もいた。

本日は仲間とともに訪れているため、終電を気にせず結果としては6時間ほど滞在しました。

現地の感覚としてはウスバカミキリを始めオオスジコガネの仲間など外灯周辺を飛んでいる甲虫の数はかなり減ったという印象です。

虫は減ったがいないわけではないという印象。

しかしながら外灯周辺にはカミキリムシの仲間を始め虫は来ており、クワガタ以外を目当てとした訪問は楽しめそうな印象です。

満月というコンディションのためか人はかなり少なく、採集ケーブルカー以降は山に滞在しているのは我々だけでした。

今回のクワガタ事情

この時期に気になるのはクワガタ事情、特にミヤマクワガタですよね。

コクワガタならば問題なく捕まえられるが、取るものでもない。

外灯に来るアカエゾゼミやヨコヤマを狙いつつミヤマも狙えるので副産物としてもちろん探してきました。

が、今回のミヤマクワガタは残念ながら0です。

前回8/2の感じを見るに8月上旬程度までがミヤマ狙いのタイミングか。

目視0飛翔0であり、時期的にミヤマクワガタ単体を狙う採集というのはもう厳しいのかなという感じです。

コクワガタやスジクワガタらしきドルクス系の種類は変わらずみられます。それらに混じり今回はノコギリクワガタも見つけることができました。

樹液自体はポツポツ出ているので巡り合わせ次第ではまだミヤマにも出会えるとは思いますが、ピーク時と比べると明らかに期待感は薄いです。

アカエゾやヨコヤマを探していく

ここ最近のお目当てとなる昆虫は外灯周りで見られるため、主に外灯を中心に探していきます。

虫の来る外灯の傾向は、結局は無さそう。巡り合わせ次第な予感。

アカエゾやヨコヤマは文字通り外灯で拾えるそうです。

夜の高尾にはそこそこ足を運んでいますが、残念ながらどちらも一度も拾えたことがありません。

10数回通っても巡り合わせ次第では出会えないのが昆虫の面白いところ。ふらっと取れたりする。

この内ヨコヤマヒゲナガカミキリは高尾といえばヨコヤマと言えるくらいメジャーな種類であるため、探している方も情報などもまあまあ目にします。

一方でアカエゾゼミに関しては情報も古いものが多く現地で探している方も少ないためか最新の情報が分かりませんでした。

昨年のヨコヤマ。8月の高尾はヨコヤマ目当ての人ばかり。

そういうものは見つけたくなってしまうものですよね。

記念すべき第1回で遭遇した方と何度も遭遇して情報を頂いた。

アカエゾに関しては昨年に頻繁にお会いしたクワガタ屋の方が現地で外灯下にいた写真を見せてくれたくらいのもので、高尾の昆虫の中ではネブトなどに並ぶ位置づけをされています。 

過去含め遭遇できていないことからも難易度は高いですね。

外灯巡回とアカエゾゼミとの遭遇

今回は外灯周りの枝たたきを積極的に行っていきます。また、人数が多いので周辺も見てもらいました。

目視できない場所にいる虫たちを落とす手法。

その結果、この時期はカミキリムシと蛾の仲間とカメムシが非常に多いことがよく分かりました。

外灯周りではウスバやノコギリ、クワカミキリなどを中心に見つかります。いつぞやのキマダラミヤマたちはどこかへ消えてしまったようです。

また、この時期に特に多いのがこの虫たちです。

小さいけれどもかなりかっこいい虫。糞よりも外灯で見つかるほうが多い。

ゴホンダイコクコガネですね。昨年同様この時期が新成虫の発生時期らしく今回最もよく目にした虫と言えます。

♂にはアトラスオオカブトのような角がありなかなかにかっこいいです。これとカドマルエンマコガネらしき糞虫も多かったです。

ヤママユの証拠として翅の一部。

外灯周りに大型の蛾が出現。これを捕まえてみればヤママユガでした。秋の訪れを教える蛾ですよね。

人気の高い蛾ですが、季節が確実に進んでいるのを感じてしまいます。

カミキリで一番多いのはノコギリカミキリ。ウスバは衰退。

外灯周りを飛んでいる大型甲虫はウスバとノコギリばかり。クワガタはいませんが、人数が多いと虫を見つけてあれやこれや話しているだけでも集中力が持つものです。

とある街灯の下で透明な羽のセミがカマドウマの仲間に食べられているのを発見しました。

シルエットが違うことがわかったので近づいてみると...?

初遭遇が死骸なのはたまにあるが、追い求めている虫だとなかなかにショック!

これはエゾゼミの死骸ですね! エゾゼミはモミ帯に出現するセミで、巨木のモミなどの枝先に付くことから目視することもなかなかに難しいセミです。

先月のアオタマムシの記事ではサブターゲットとしてエゾゼミの声を聞くことを掲げていましたが、その時や本日も夜鳴いているのは確認していました。

エゾゼミが鳴いていたモミ。取れるわけがない。

緑色の体と胸に入るMのような模様が特徴的です。

完品の死骸ならば持ち帰りたかったところなのですが、こうまでボロボロでは今回のように写真に収めておくのがせいぜいですね。

しかしエゾゼミが落ちているのは初めて見ました。この外灯周辺はセミ密度が濃かったりするのかもしれませんね。

そのままヨコヤマを求めて外灯とイヌブナを巡りました。ノコギリ、センノキ、蛾の仲間にクダマキモドキやウマオイなどは見つかるのですが、ヨコヤマもなかなか簡単には見つかりません。

一瞬ヨコヤマと見間違えるセンノキカミキリ。印象に残る。

その後ミヤマなども探したのですが成果はなし。山頂エリアにはアカアシオオアオカミキリがとんでもない密度で出現していました。

アカアシオオアオカミキリとカトカラしかいない。

下りの路でムササビなどを見つつエゾゼミの死骸があった場所付近を訪れると、別の透明なセミが落ちていたことを同行者が教えてくれました。

遠目からでも分かるオレンジの裏側を見つけて駆け寄ると...!

待望のアカエゾゼミが来た! 久しぶりに夢中で体が動く感覚を覚えた。

アカエゾゼミです! このセミに出会いたいと思ってからずいぶん苦労させられてしまいましたが、なんとか今シーズンに出会うことができました。

腹部は黒いので通常型のアカエゾゼミですが、アカエゾであることが何より重要です。

腹部は黒いが、これもかっこいい。アドニスを捕まえたときの感動が高まりそうなもの。

嬉しいことにエゾゼミの死骸を発見していましたので、緑オレンジ味の強いエゾではないことを確認してみます。

翅に入る模様が有名ですよね。

エゾゼミ(左)とアカエゾゼミ(右)写真の翅右側の黒模様の数が違う。

アカエゾは翅に2つの模様があるのに対し、エゾは4つあります。見比べてみれば一目瞭然ですね。
このことからこのコはアカエゾゼミだと分かります。というのもエゾゼミにはオレンジ味の強い個体がおり、一見わからないものです。

実物はかなりオレンジ感が強く、私の補正込みでもかなり美しい昆虫であると言えます。

今年1番出会えて嬉しかった虫で間違いない。

ついつい欲が出て腹部までオレンジのアドニス型を見てみたいと思ってしまいましたね。

なお衰弱で落下したようでこの個体は翌日星になりました。

気合を入れてヨコヤマ叩き落とし

アカエゾとの遭遇によりアドレナリンまみれとなってしまったので、ミヤマやネブト、ヨコヤマなど外灯周りにいる可能性を考慮してより一層枝たたきに気合が入りました。

結構いろいろな虫が落ちてくるので、気合次第でいい虫も落ちてくる。

下りや帰り道に集中力が切れるのは採集あるあるかと思いますが、このアカエゾとの遭遇が流れを変え、枝をバンバン叩いていると早速カミキリが落ちました。

私自身は枝叩きモンスターになっていたので気づいていなかったのですが、同行者は地面や壁などに虫がいると冷静に教えてくれるので複数人で行く強みを感じましたね。

なんかカミキリがいるよというので 白っぽいか?と尋ねると白い部分もあると帰ってきました。

近づいてみると!

ヨコヤマも取れた! 外灯で採集したのは初めてだったのでやはり嬉しい。

ヨコヤマヒゲナガカミキリでした! 今季は早々に高尾のカミキリ屋さんとの同行で遭遇できましたが、自力で見つけられるとやはり嬉しいものです。

触覚完品、跗節が右前足かけていますが、野外ならば十分過ぎる個体ですね。

ヨコヤマヒゲナガカミキリの探せば探すほど魅力的に見えてくる感じがかなり好きです。

2回前の高尾で見つけたヨコヤマ。艶感はやはりシーズン初期のほうが強い。

当初は高尾の珍品カミキリらしいからという理由で探していましたが、単純にブナ帯で見られる美麗な虫として今は夏に狙いたい虫にランクインしていますね。

ヨコヤマとアカエゾの2ショット。

昨年追い求めた虫と今年追い求めた虫。夢と努力が詰まっている。

追い求めた虫たちの並びに喜んでしまいます。片方だけでもその日に捕まえられればホクホクな昆虫なのに両方とも出会えてしまうとは。これだから夜の高尾に惹かれてしまうのですよね。

今季出会った高尾の代表的な虫たち。どれもが1匹を求めていく価値のある昆虫。

ミヤマを求めて夜の高尾に来た方は多いと思います。

しかしミヤマだけで終わらせてしまうのはあまりにももったいないと思うので、当ブログを読んだ方はヨコヤマやアカエゾなどの虫たちにも目を向けてみてください。

昆虫沼の入口は実はすぐそこだったりしますよ。

今季は欲のままアドニス型のアカエゾを求めてもう数回通ってみようかと思います。昼の部ではオオトラやアカジマトラを狙ってみるつもりです。お楽しみに。
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次回、ヨコヤマヒゲナガカミキリルッキング採集編です。

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前回はこの記事です。

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夜の高尾の総合記事はこれより。昨年7回と今期6回で夏の移り変わりとともに虫の出現などが分かります。