2週間ぶりの高尾山、今の事情は?
前回の霧の高尾以降は休みと天気の都合が合わず(雷ばかり)かなり間が空いての訪問となりました。
昨年の観察では既にこの時期にはミヤマが衰退していた時期です。
訪問した結果としてミヤマクワガタはかなり少なく、見られたのは1個体の♀のみ。現地での話を聞いたりしてみても少ないようです。
しかしながら高尾にはミヤマ以外にもたくさんの魅力あふれる虫たちが生息しています。ミヤマを探しつつ出会える素敵な虫たちを、今回遭遇した虫たちの中から紹介していきます。
訪問日のコンディション
訪れた日は7月の下旬です。
既に中腹は涼しい気配が漂っており、風がなくても動かなければ快適な程度の気温です。
風は弱く、月は下弦のタイミングであるため外灯採集には非常に向いたコンディションです。
現地の外灯を見てみれば2週間前よりも明らかに外灯に飛来している甲虫の数が多いです。
これらのほとんどはスジコガネやウスバカミキリ、キマダラミヤマカミキリになりますが、やはり外灯周りを甲虫が飛んでいてそれがクワガタかどうか確認するワクワク感があるというのは大きいです。
取れるかどうかは別ですが、クワガタの飛来は時折ありました。
また、樹液に関しても今年は雨が平年並みに降ったことからよく出ています。
長竿網程度のレンジではポツポツ見える程度ですが、より上空には多くのクワガタが潜んでいるようです。
外灯樹液共に楽しい時期ですがミヤマクワガタだけは少なく、このクワガタだけを目当てにすると結構退屈かもしれません。
外灯と樹液どちらをみていくか
今回は外灯偏重型で観察を行いました。
ミヤマクワガタ以外にも見たい虫がたくさんおり、特に今年はアカエゾゼミとシンジュサンをカメラに収めたいからです。
外灯近くの樹液は見ていきますが、あくまでメインは外灯周りです。
早速変な色合いのカミキリムシが外灯周りを飛んでいました。珍しい色合いに期待して網を振り抜くと?
キボシカミキリでした。翅を開くと他のカミキリにはない色合いをしているようです。桑が近くにある場所ではよく目にする種類ですね。
枯れ木の近くを始め、よく目にするキマダラミヤマカミキリ。
高尾ではがっかりよりの虫です。個体数がとても多いです。
これとウスバカミキリは7月下旬以降の高尾で最もよく目にする甲虫です。現地を訪れた方はきっと見ているでしょう。
樹液周りと異変
樹液周りではコクワガタとノコギリクワガタが見つかっています。
ミヤマは今年は樹液で見れていません。
中歯ノコギリは低い位置で見られましたが、もう1匹の大歯ノコギリは非常に高いところについていました。
私の5mの網で届かないくらいでしたので、通常の網ではまず届きません。
そして今回目に見えない高いところにクワガタが潜んでいる事がよくわかりました。
なぜかというと不気味なことにどんぐりのようなものが落ちてくる音が絶えずしていたんですよね。
カマドウマの仲間が跳ねている音かとも考えたのですが、ライトを照らしてみると何かが上からなんかのタイミングで落ちてきていたんです。
不気味がりながら付近の外灯で待機をしつつ樹液へのクワガタの飛来を待っていると、ちょうどその木から甲虫らしきものが落ちる音がし始めたのです。
10数匹は落ちてきましたし、先程のノコギリも落ちてきました。その要因を探ってみると...?
ムササビです!
ムササビが木をわたったり飛翔した際の振動を感知してクワガタが落ちてきていたのです。
これにより目には見えないけれども上層部にはクワガタがいる可能性が示唆されました。
人が入れないような条件のいい木の上空にはミヤマなどが潜んでいるのでしょうね。
今回の珍しいクワガタ事情
コクワやノコギリは今季普通に遭遇できているので特筆すべき種をあげていきます。
まず人気のミヤマですが、外灯にて♀1を捕まえることができました。
樹液や外灯周りなど今年は少ない印象を受けますが、なんやかんや今季坊主の日はないのでいるにはいますね。
しかし♀続きでそろそろ立派な顎を見たいものです。
♀は比較的早い段階で入手し、山を降りる頃合いの帰宅路の最中にミヤマらしきクワガタが飛来していました。取り逃がしてしまい何だったのかは不明です。
今回は特定の外灯に張り付いて観察をしていたのですが、飛来してきたクワガタは落ちたり周囲の木々に止まることもありますが、どこかへ飛び去ってしまうケースもかなり多いと分かりました。
ハンドライトだと外灯ではかなり不利そうなので、(片手のライトが手間)次回は強力なヘッドライトperun2を持って行こうと思います。
面白そうなので1本の外灯に張り付く検証もしてみようかなと思います。
この日の高尾観察では現地で昨年よりお会いしていたベテランカミキリ採集家の方に同行させていただきました。
外灯を回っているとネブトクワガタ♀の死骸を発見。高尾のネブトは昨年を含めて私は3例目なのですが、外灯が2樹液が1となっています。
高尾のネブトは運の要素がかなり大きいのでしょうが、それを手繰り寄せるにはやはり訪問回数が重要です。
今期目標であるアカエゾゼミやシンジュサンにも同じことが言えますので、気合を入れて行きたいですね。
高尾のカミキリ探し
ミヤマがいないならば他の虫を探せばいいじゃない。
ミヤマ目当ての親子層やそもそもクワガタ以外に興味がない方には刺さらないかもしれませんが、高尾の夜にはミヤマクワガタ以外にも魅力的な虫がたくさんいます。
ミヤマ以上に珍しい虫も多数おり、現地ではそうした虫を求めに来ている方もいます。
前述の通り今回は高尾のカミキリ屋さんに同行させていただきまして、木々や外灯などの貴重な情報をいただきました。
その中で見られた虫たちも含めて紹介していきます。
アカアシオオアオカミキリはナラ枯れにより生息分布が拡大しているカミキリです。
青緑のギラついた光沢が美しく、柑橘系と言われるやや苦みのあるような香りが楽しめるカミキリです。
外灯や樹液に来ていました。
ホソカミキリは高尾では枯れ木で目にする機会があります。名前の通り細いカミキリムシであまり多いカミキリという印象はありません。
一見するとコメツキムシみたいに見えるなという印象です。
ノコギリカミキリは普通種ですがウスバほど多くはありません。
そっくりなものとしてニセノコギリカミキリがおり、偽の方が少ないようです。胸の点刻があるか、ツヤツヤかが分かりやすいポイントですね。
点刻があればニセノコのようです。(web調べ)
タイワンメダカカミキリと言うそうです。
タカオメダカカミキリの名を知っていたので、そういう種がいることは知っていました。
非常に小型の種類で一見すればカミキリムシに見えないですね。
しかしながらトラカミキリのような模様がかっこいいカミキリです。
目が大きく目の位置が高く見えることが由来でしょうか。山椒に付くようで、これは目からウロコでした。
タカオメダカも見てみたくなりましたね。
センノキカミキリはウコギ科利用のカミキリですね。
大型でゴマダラほどのサイズ感があり、翅の樹皮のような模様は高尾における人気種ヨコヤマヒゲナガカミキリに似たものがあり、私は昨年初見のセンノキカミキリをヨコヤマと勘違いしましたが、やはり似ているようです。
ヒゲナガカミキリは巨大な触覚がかっこいい人気種ですよね。
針葉樹利用でモミの樹皮などを食べているそうです。
標本映えしそうですが巨大なためスペースを取ると言っていましたね(笑)
ブナ帯の昆虫たち
ムツモンミツギリゾウムシというゾウムシにも遭遇しました。
外灯に来ていたのですが、ブナ帯の昆虫らしくブナの枯れ木や伐採、外灯などに飛来するようです。
とてもユニークな見た目をしており、これも知らなければゾウムシだと分からないかもしれません。
ミツギリゾウムシの仲間は人気があるようで、SNSなどで調べてみると結構出てきます。ブナ帯の虫で見ればアオタマやヨコヤマ等と同じく一定以上の環境でしか見られないということですね。
ヒゲナガゴマフカミキリはシラカバのような白地に黒い点が入り混じったとても美しいカミキリです。
今回はこのカミキリを見れたら良いなと思っていたのですが、イヌブナなどに付く普通種のようで意識して探してみればポツポツと見つかりました。
触覚が体の2.5倍ぐらいありとてもかっこいいです。イヌブナを利用することから平地では見られません。
そしてトリを飾ってくれるのは高尾の人気カミキリ、ヨコヤマヒゲナガカミキリです。
昨年から探し始めて2023年はどこにいるのか苦労しましたが、現地の感覚や頂いた情報、心強いカミキリ屋さんの同行などもあり、今年は早々に出会うことができました。
ブナの多い高尾のカミキリといえばヨコヤマですよね~。
今年1発目のヨコヤマの出現に大変喜びましたが、当のカミキリ屋さんは同じ日に新成虫の触覚欠けを2匹みつけてしまったので残念がっていました。
今回は同行させていただいた方のおかげで大幅な情報のアップデートをすることができ、楽しい時間を過ごすことができました。
高尾の夜にはこの方以外にもベテランの方たちが多く、情報交換することでその虫に興味を持ったり更に知っていきたいと思う機会があります。
夜の高尾山は実に面白いですね。また近々ミヤマとヨコヤマやアカエゾゼミなどを求めて登りに行きたいと思います。お楽しみに。
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次回は68.2mmものミヤマに遭遇できました。
夜の高尾山関連記事
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前回はこの記事より。霧の高尾でミヤマを探してみました。
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今回見つけたヨコヤマヒゲナガカミキリの昨年の捜索編です。これから探したい方はぜひ。
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今季今後の採集に関しては昨年8月以降の記事が使えるかもしれません。あくまで昨年の傾向なのでほどほどに。
外灯採集で役に立つアイテム
今回強く感じたのは樹液ではハンドライトでも問題ないですが、外灯では飛来した個体を捕まえるために両手を開けておきたいという点です。今季8月以降は所持済みのperun2を持って行こうと思います。この日だけで2匹は飛翔したクワガタを見逃しましたね。perun2は帽子などにつけないと重たいので、そこは注意です。外灯では周囲のスウィーピングや飛翔個体の確保のために長く、大きい網であればあるほど有利です。特に網の口径は同行の方の特大網を見ていて羨ましいと思いました。スウィーピングするならば50が最低ラインの網のサイズな気がします。
虫の種類などにより口径は変わりますが、外灯ならば大きければ大きいほど良いです。