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紅葉の色合いを美しく残す撮影時間の考察

紅葉を美しく思い出に残す

紅葉シーズンを満喫している方も多いことでしょう。

真紅の色合いを映すのに悪戦苦闘

せっかく見に行くなら最大限楽しみたいと思いますよね。
紅葉の写真撮影をしたら色が全然でない。思ったよりも見ているものと色が違うなどの問題は良く発生します。

今回の記事では紅葉観察の際に写真に映す場合いつ頃が良いのかというのを検証してみました。

私自身写真がうまい訳ではなく、現地で試行錯誤してみた結果からの考察です。また、彩度をいじるなどはしない前提です。

紅葉のメカニズムの要点

まずざっくりとなぜ色が変わるのかをお伝えします。写真に映すに当たり発色の良い対象を選ぶのはとても大切だからですね。

高所や水辺付近など温度が低くなるところほど発色が良い傾向

紅葉に重要なのは低い気温と太陽光です。

秋になると植物は光合成効率が落ちるため、葉を落とします。

葉を落とす準備中

落とす前に葉に残る養分を幹の方へ送り、その後落とす準備に入ります。

この過程で緑色素が減っていくので、もともとある黄色色素の割合が増え、黄葉が起こります。

イチョウは赤色素のアントシアニンが生成されないらしい

その後枝と葉での水分や栄養の通道がなくなるのですが、葉に残った葉緑体はその後吸収されることなく光合成をおこない糖分を作ります。

太陽光+低温が一気に入ると色変化も良くなる印象

吸収されないので葉に糖分がたまっていき、これに太陽光が当たると赤色色素であるアントシアニンが作られ、葉の色が変わっていきます。

(細かい点は省いています)

メープルシロップでおなじみのサトウカエデは真紅になる

これは私的な推測なのですが、モミジ類の紅葉が鮮やかなのはおそらく木に糖分が多いからでしょう。

夏の昆虫が来るイタヤカエデは和製メープルシロップで甘いです。

モミジの中でも特に色の濃いサトウカエデは深紅に近い紅葉を見せます。

梅雨の長さなどが実は色付きに関係しているのかもしれない

イロハモミジやヤマモミジが色づきにくいのにはこうした視点もあるのではないかと思います。


美しい色の観察、撮影は時間が鍵!

時期も美しい対象を探すという意味では重要

紅葉を楽しむのに重要なのは時期だと思っている方も多いのではないでしょうか? 

もちろん最も色合いの濃いタイミングで行くのは重要なことですが、私的に重要なのは光だと思っています。

太陽光は生き物のように角度と強さを変えていき、非常に難しい

これはモミジライトアップのような人工照明の話をしているのではなく、太陽光の位置を意識した観察が重要だということです。

特に美しい紅葉を写真に収めたい!という方は良く意識してください。

真紅の対象を朝早い日が低い光で捉えるとそのままの色が残せる

自然の中の色合いが最も美しく目に見えるのは朝早めの時間であると個人的に考えます。

光には虹でおなじみの約7種類の色の波長がありますよね。時間帯によって含まれている光の色合いが違います。

12時撮影。日が高くなると影がはっきりできるため、色が潰れてしまいやすい

紅葉撮影に向かうときには朝寒いから昼頃に行く感じにしようかとなりがちです。

肉眼では鮮やかなのに11時以降の高い日差しで取るとどうにも映らない

紅葉時期には肉眼であっても紅葉は美しく見えます。しかしカメラで映してみるとつぶれたようなイマイチな色合いになってしまうというのはあるあるなんですよね。

正午の光はvividに映るため、色が強すぎて浮いてしまいがち。

太陽の位置が高いと空の持つ色が強くなる(白に近い)だけでなく、強い影が作られるのでコントラストが強くなります。

春の正午の光なので結構強い

赤系は特にコントラストの影響を受けやすいと考えていて、色がつぶれやすくなってしまいます。
(赤色ツツジ正午の例)

白色は明度が高くてメインのものよりも目立ってしまう

例えば曇りの日に空を写すと白色の雲が明るいために明度を持っていかれてしまいますよね。強い白の光は扱いが難しいのです。
(曇りの日に空を入れてみた例。明るさが空に持っていかれてしまう)

冬の9時頃であれば空を写しても青みが強く、対象の色が濃く映せた

こうなると空の明るさが強すぎてメインにしたい対象の色が空の色に負けてしまいます。なので正午付近は避けるのが無難ですね。

色を淡く映したいならば冬の期間は10時以前が個人的にはベスト

つまり光は一日の中でも赤橙黄緑青藍紫(虹の色)の割合が変化しており、朝は波長の長い赤が強い状態から始まり(朝焼け)、日の上昇とともに虹の順番と同様に様々な色が混じり始めます。

日が高くなると木々を抜ける青色が強い光になり、黄色も白くなってしまう

正午の光は角度と色味共に強く撮影には不向きで、日没に向けて再び色味が変化していきます。

ただし色味によって適切な時間も変わってくる。もちろん日当たりにもよる

太陽の位置は季節によって変わるので、これだ!というタイミングは統一できないのですが、紅葉シーズンの関東においてはおおよそ8~10時ごろがいい光なのではないかと個人的に思います。

この時間帯は日の角度も低く柔らかい光であり、かつ日が上がってきているので色味が出やすい時間帯であると個人的に考えています。

春13時頃(左)と16時頃のたぬき像の変化。白が強い左と赤色成分が多い右、柔らかさも大きく違う

色味の比較を春のツツジにて。

正午付近のツツジと4時ごろのツツジでは同じ設定でも色味が異なってみえます。午後遅くなるにつれて光の中の赤色の成分が強くなることが影響すると思われます。加えて日の角度が作る影の印象が分かりますね

春の午後17時頃に低い日差しで撮影したケヤキ。柔らかい緑色に見える

構図云々は置いておいて色合いは朝早めの時間の日がきれいに感じます。肉眼でも色が柔らかく見えますが、カメラだとより顕著に発色良く見えますね。

春、朝6時頃のミヤコワスレ。植物撮影はやはり朝なのではないか?

(春の朝6時撮影のミヤコワスレ。淡い紫色がはっきり写せた)

日の角度も印象が変わる要素

日の位置もかなり重要な要素です。自分と太陽光の位置によって色合いは大きく変わります。

逆行ベースは派手派手な感じ。低い太陽光でないと映らない印象

葉をキラキラ光らせたいなら太陽の方を見るようにして逆光で映すのがいいですね。

順光はどの時間帯も見たままが移せる印象。空を映すなら早い時間or遅い時間

目に見た色合いで映すなら太陽が照らしているのと同じ方向から撮影する順光。

順光と逆光の間で、自分の立ち位置で色合いが変化する。影もよく捉えられる

明暗の差を出すならば太陽に対して横から撮る斜光などなどいろいろな光条件があります。

色合いを映したかったり空の青さを一枚の中に収めたい場合には早い時間か遅い時間を意識してみると普段とは異なる色合いが残せるのではないかと思います。