イタヤカエデ、虫がつくのか?
「イタヤカエデにはクワガタが来る」こんな話を聞いたことがあるという方は多いと思います。
私自身も過去記事にてイタヤカエデにはクワガタが来るので見分けて探そう という趣旨の記事を書いています。
しかし読者の中からはクヌギやコナラなどのメジャー種以外にわざわざ見る必要がある? 生えるエリアが違うのになんでカエデなんて探さなければいけないのか。そもそも取れるかどうかも怪しいなどという疑問が上がってきそうなものです。
そこで今回の記事ではイタヤカエデだけで採集を行い、その成果を紹介します。記事を読み終わる頃には興味津々だと思いますので樹液の出方や採集方法に関する記事も紹介しておきます。
イタヤカエデとは?
イタヤカエデは主に山地の沢沿いなどに生えるカエデの仲間です。
樹高は大きいものでは15m以上になるものも有り、とても大きい植物です。
なんといっても樹液の甘さが有名であり、和製メープルシロップとして地域によってはこのイタヤカエデの樹液を扱っている場所もある程度の甘みがあり、自然界ではごちそうであると思われます。
葉は紅葉の仲間を一回り大きくしたような形をしており、おおよそ人の手のひらよりも大きいくらいのサイズ感があります。
カエデの仲間は葉の形によりほか植物と見分けがしやすいですが、この特徴によりカエデの仲間の中でも見分けやすい種類と言えます。
カエデの仲間にはアオカミキリ、ゴマダラカミキリなどの比較的よく見かける樹木穿孔性の虫からスズメバチなども訪れるため、樹液も頻繁に流れています。
発酵しないサラサラとした樹液であるため、イタヤカエデの樹液を事前に認識していないとなかなか意識的に探せない知る人ぞ知る穴場の植物と言えます。
イタヤカエデ樹液採集
イタヤカエデに関しての見分け方などは既に別記事にて説明しています。
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なので本記事ではこれを理解した前提で採集記に入ります。
河川敷のオニグルミ、ヤナギと並ぶほど私が見てほしいというイタヤカエデ。なぜ見てほしいのかという魅力が伝われば嬉しいです。
6月下旬、下見の時点でイタヤカエデが多い場所を本記事の場所として選びました。イタヤカエデは前述の通り沢沿いを始め地下水が豊富な環境に生えていることが多いです。
このイタヤカエデですが枝ぶりは木のサイズにより大きく変わってくる印象があります。
ルッキングで枝を一応見ていきますが、この木に関しては蹴りや枝を叩くなどもセットで行ったほうが良いです。
最初のイタヤカエデは周りをルッキングした感じでは木の周りを飛ぶカナブンやスズメバチなどがいるようには見えません。
確かにスズメバチやカナブンなどの樹液に飛来する虫は樹液を示すヒントとして使えますが、飛んでいないからと言っていないとは限りません。
既に述べたようにイタヤカエデの樹液は発酵せずサラサラとしています。匂いが弱いからか既に樹液に張り付いている虫がいるケースが多いんです。
なので目視でいなければ蹴りや叩きに入ります。
イタヤカエデの樹液流出に貢献しているのは主にカミキリの仲間です。特にアオカミキリが有用であると思われ、この虫は細枝~幹まで幅広い場所に穿孔します。
特に枝先に入ることが多いので葉の重なっている枝先が良質なポイントである場合が多いです。
網で叩いていきましょう!
バシッと衝撃を加えてやると...?
ノコギリクワガタが3匹落ちてきました! どうやら細枝に樹液が出ており、ついていたようですね。
イタヤカエデの何がいいって細枝についているんで落としやすいんですよ。
クヌギやコナラはナラ枯れを除いた場合樹液流出の多くはシロスジカミキリやミヤマカミキリ、ボクトウガなどに由来しますがこれらは太めの幹に穴が空く場合が多いです。
衝撃で落とせない場合が多いんですけれども、イタヤの場合は真逆で幹にいるよりも圧倒的に枝にいます。
長い竿などがあれば軽い衝撃でぼとぼと落とせるのが魅力です。
樹液流出が細枝を利用するカミキリに由来するため、木々により当たり外れが大きいのが難しいところです。
枝を叩いて落ちたということは他の枝にもついていそうですね。
別の枝も叩いていきます。
おかわりノコギリクワガタが落ちてきました。枝たたきで追加+2匹のノコギリが追加です。
今回はちょっとうまくいきすぎですね。上振れの例として覚えておいてください。
枝を叩いたあとですが、幹からも刺激を与えていきましょう。太めのイタヤですが、とりあえず蹴りは試します。
とりゃ!
ノコギリとコクワが落ちてきました! この1本のイタヤカエデで一体何匹取れてしまうのでしょうか?
今日はノコギリクワガタまみれでしたが沢沿いで気温が涼しくなるとミヤマクワガタもついていることがあります。
さて少し移動して他のイタヤカエデも見ていきましょう。
ここも斜面でジメッとした雰囲気の場所です。イタヤが好きそうな場所です。樹液はどうでしょうか?
こんな細枝にカナブンが張り付いています。アリも来ていることから樹液が出ていることがわかりますね。ここも期待ができそうです。
ルッキングをしてみると...?カナブンが枝先に張り付いていますね。ミヤマなどは今日はいなさそうです。しかし蹴ってみないとわからないのがイタヤカエデの面白いところです。
とりゃ ボトッ
ここで問題が発生です。イタヤカエデは沢や斜面に生えていることが多く、落ち葉が堆積していてボトッと音は聞こえても一人ではどこか見つけられない始末。
一方でそうした水分環境が多い場所だからこそ、木々はより水を吸い上げることができ、樹液もたくさん出るんですよね。
土壌中の水分が重要ということは?梅雨明けなど雨が降ったあとのタイミングがいいということでもあり、真夏になるとイタヤの樹液は枯れてくることも多いです。
結果的に4つほどコクワ系統が落ちてきた軽い音を聞いて見つけられず、唯一拾えたのがこちらのノコギリのメスです。
音のうち1つはノコかミヤマのサイズ感の音だったのが悔やまれます。
私自身イタヤカエデだけで採集する機会ってなかったんですが、これはクヌギやコナラの採集とは見るべきポイントやアクションなどが違い楽しいですね。
なによりイタヤに付くクワガタって大きいんですよね。ロマンも十分あります。
この日はイタヤカエデを7本ほど見て回り、ノコギリが6コクワが1、その他音だけで+4ほどのクワガタがいました。
素晴らしい成果だとは思いませんか?きっとイタヤカエデに興味が湧いてきたはずです。
イタヤカエデはなぜ取れるか?
イタヤカエデだけの採集記を通じてこんなに虫がいるならばもっと有名なはずと思う方も多いことでしょう。
イタヤカエデはクワガタ界隈ではかなり有名です。しかし、
①クヌギやコナラでしかクワガタが取れないと言う思い込み
②樹液の流出に関わる昆虫とその性質の理解
③当たり外れが大きい
④生える環境が通常の雑木と大きくかけ離れている
⑤樹液流出と水分の関係
などなどの要因により初心者の目を欺いています。
クワガタ採集に関してはクワガタは夜行性であるため、皆が探しているような場所を見ていたり、webやyoutubeなどで情報が出てしまっている場所を探してもシーズン中はほとんど取れません。
一方で上記で上げた条件の通り採集者のレベルに応じて挑んでくるものを絞り込むイタヤカエデの環境や樹液流出の要因などの情報は、クワガタ以外にも自身でクワガタ採集につながるノウハウを学ぼうとしていく人でないとたどり着けません。
これにより多くの人を選別しているので挑む人が少ない結果イタヤカエデはクワガタが採れるのです。
イタヤカエデで成果を上げるために
まずは自身の力でクワガタを見つける力を身につけることです。
クヌギやコナラで成果を挙げられない人がイタヤカエデでミヤマを探し求めても大体はイタヤがわからず無駄に終わることでしょう。
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このブログではクワガタの基礎を網羅した記事がありますのでそちらを是非活用してください。
基礎を網羅したうえで必要となる昼間の下見、イタヤカエデの生える環境、樹液の流出箇所などの情報はこの記事中に読み返すと盛り込まれており、基礎部分だけ理解できればイタヤを探せるような問題解決ができる記事構成にしています。
ミヤマを探したい方、いろいろなクワガタを捕まえたい方、大型を捕まえたい方などにオススメできる木なのでしっかり理解してライバルと差別化しましょう。
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2種類の探し方はイタヤカエデで特に有効です。採集方法に関するノウハウもしっかり理解しておきましょう。
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イタヤでの採集で使いたいアイテムの紹介
記事で紹介した通り枝を叩く道具はぜひともほしいところです。長竿は叩き棒としてだけでなく志賀昆虫網と繋げることで長竿網として使えるほか、手の届かない場所への採集を助けてくれます。虫をやるならこの夏は是非長竿網を。夜のイタヤは沢沿いに生えるため怖いです。明るいライトがあると視野確保だけでなく落下する虫の発見にも大きく貢献してくれます。
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