河川敷の穴場樹木アキニレ
河川敷ではクワガタが取れるという話を聞いたことがあると思います。これは事実で、主にヤナギやクルミといった河川敷の大黒柱となる樹木は人気の高い樹木です。
しかしこれ以外にもクワガタたちが来る木があります。それこそ今回のテーマであるアキニレ。
めくれができやすく、カミキリムシにも加害されやすいなど樹液流出の条件がそろいながらもそのマイナーさから知られていない樹木なのです。
今回は差がつく植物の1つとしてアキニレを紹介します。
アキニレとは?
アキニレはニレ科に所属する植物であり、土中の湿度や水分量が多い場所で見られる植物です。
樹高は大きいものでは10m以上となりますが、観察の範囲では極端に大きいものは稀で小~中程度のものが多い印象です。
アキに花を咲かせることからアキニレと呼ばれます。
神奈川の河川時期ではあまり目にしませんが、ハルニレもあり、こちらは春に花を咲かせるという特徴があります。
アキニレハルニレ共に河川敷に生えます。
葉は互生しており、葉の大きさは小ぶりなものが多い印象を受けます。
徐々に葉が大きくなっていく傾向が見られ、例えば河川敷ヒラタの時期にはかなり小型の葉ばかりが目立ちます。
そのため、植物の中では特徴がある葉と言えそうです。
樹皮はかなりめくれが目立ち、ボロボロと剥がれかけていることも多いです。河川敷でマーブル上になっている樹皮を見かけたら観察してみましょう。
アキニレとクワガタ
まず結論ですがアキニレではクワガタが取れます。
樹液の流出には木が植物利用の生き物などにより傷つけられる必要があります。
この加害者の幅により流出のしやすさが決まります。
河川敷の加害者としてはゴマダラカミキリ、ウスバカミキリ、シロスジカミキリ、ボクトウガ、コウモリガなどが有用な生き物となります。
河川敷の例としては大黒柱となるヤナギはこれらすべてに加害されるため、太い幹から細い枝先まで樹液が出ます。
アキニレに関してはシロスジカミキリとボクトウガ、コウモリガの例は観察できていませんが、特にウスバと思われるカミキリによく攻撃されており、樹液が流れているケースが多いです。
ウスバカミキリは雑木林などで特に目にする大型カミキリであり、これに攻撃されるのはとても樹液流出の機会が多いのです。
また、樹皮で話したようにめくれが多くできることから、コクワガタやヒラタクワガタなど特に臆病なクワガタが潜んでいることが多い木でもあります。
大型カミキリの加害後は広がることで良質な洞となるケースも多く、これにより樹皮に幹にとクワガタの好む生息場所が作られやすいです。
昼間でも成果を上げやすいのがいいですね。
しかしながら私の行動圏では優占種(そのエリアの多くを占める)ではないのが残念です。多い植物ではありませんが、知らないと損をする。そんな植物ですね。
アキニレの見分け方
さてクワガタが取れるということでアキニレに興味がわいた方も多いと思われます。河川敷でのアキニレの優先度は3番目です。
ヤナギ、クルミ、アキニレですね。
そのためヤナギやクルミを覚えていない方は河川敷の大黒柱となるヤナギとクルミをまず覚えましょう。(最後に関連記事で学べます)
この2種を覚えた方、これから河川敷に繰り出すぞという方に更なる知識としてアキニレの見分け方を紹介します。
特に夏場のアキニレに関しては同じ植物でありながら葉の大きさが違う点が分かりやすいと思います。
葉はしわ感が強く葉脈の主張がかなり強いので凹凸感はかなり強いです。
縁には遠目からでもわかる強いギザギザがあり、触れると紙やすりのようにザラザラしています。
これはアキニレハルニレに見られる特徴なのでぜひしっかり覚えておいてください。
葉も特徴的でしたが、幹もかなり特徴的です。
ケヤキの樹皮のようにボロボロとめくれている場合がほとんどで、自然に剥がれるために遠目からでもマーブル上に見える場合が多いです。
しかし河川敷の場合には枝ぶりによっては幹が見えないケースもあるので葉で見分けるのがおすすめですね。
上記の点を押さえておけば河川敷の樹木はそう多くありませんので見分けられると思います。
アキニレから出る樹液を探す
アキニレが分かっても樹液が出ていなければ期待は持てません。
一方で出ている場合虫はよく来ており、複数樹液が出ていることも多いです。
例として挙げるとスズメバチ、カナブン、ヒカゲチョウの仲間、ゴマダラチョウの仲間などが多いと思います。
条件が良ければ木々をこれらの虫が飛んでいます。その虫がたどり着く場所を探りましょう。
また、枝を見ていけば上記の虫が張り付いている場面に遭遇するはずです。その場所は当たりのポイントであるため、時間が違えばクワガタが来ています。
これらのセオリーは樹木を見分けてしまえばクヌギなどと同じですね。
アキニレの樹液の雰囲気とは
アキニレの樹液はクヌギのように白く発酵することはありません。
イタヤカエデに似たさらりとにじみ出ているタイプの樹液であり、傷口が湿っている程度のものが多いです。
つまりはこの樹液に虫が覆いかぶさる形でついているため、何もない所に虫がついているように見えます。
樹液の雰囲気はこのように木くずが出ていることが多いので、これを目印にして枝先までしっかりルッキングしてあげるのが見つけるためのコツです。
アキニレと洞
河川敷採集ではぜひとも掻き出し棒を用意しておいてください。
雑木林の樹液流出は今はナラ枯れを引き起こすキクイムシに由来することが多く、洞などが見られることは稀です。
一方で河川敷は各種カミキリムシや蛾の仲間など、より大型の樹木穿孔性昆虫に由来するため、洞ができているケースは多いです。
となると夜行性のクワガタがそうした洞に潜んでいる場合が多く、それらを取るためにはライトと掻き出し棒が必要です。
持っていれば取り出せる可能性が生まれるため、ぜひ所持することをお勧めします。
これを準備していない人がうろやめくれを破壊してクワガタの住処を破壊するという利己的な行為をしています。(持っててもやるやつもいる)
掻き出しバトルは自然の生き物相手の知恵比べであり、とても楽しい頭脳戦です。ぜひとも河川敷ならではの勝負を楽しんでほしいですね。
アキニレでクワガタが取れる理由
これはイタヤカエデの記事でも紹介しましたが知られていない樹木というのは取れる可能性が高いです。
アキニレの場合には樹木の認知度もそうですが、樹液の流出の雰囲気や洞、めくれなど昨今の平地クワガタ採集ではやれない採集方法を取る場合も多いです。
そのため河川敷のセオリーを知っている人、かつヤナギやクルミ以外に目を向けたくなる採集経験がある人などのスクリーニング機能によってアキニレを探せる人というのは限られてくるため、クワガタが取られずに残っている場合が多いです。
細枝で樹液が出る樹木なので枝全てや洞全てを見逃すことなく見切ることが難しので同じく残っている場合が多いです。
この辺は地域の採集者のレベルにもより、平地の河川などであれば親子などの割合も多いため取り残しも多いですが、他県の有名産地などの河川敷などになると訪れる人のレベルが高く、かつ根こそぎ取る人などもいるために全くいないなんてこともあります。
そこらへんは運の要素なので諦めずに挑戦し続けることが重要です。
河川敷のアキニレで見られた虫
実は今期更新したヒラタクワガタの記事にてアキニレは見ています。
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ここのものはタイミングではヒラタが良そうだなと思いましたが、5月の段階では他のクワガタなどはいませんでした。
しかし神奈川レッドデータに記載されているチャイロスズメバチが来ており、驚いたものです。
さらに驚くべきとしてはコムラサキがたくさん来ていたのです。
コムラサキはヤナギを食草として利用し、各種樹液を訪れる蝶です。
この蝶、2006年のレッドデータでは絶滅危惧1B類に記載されており、オオクワガタと同ランクのとんでもない種類なのですが、なぜか5匹ほど見つけました。
ヤナギが豊富であるために個体数の回復が進んでいるのかもしれません。
ある意味ではヒラタや各種クワガタなどよりも嬉しい発見でした。
時期が進んだ今、アキニレではコクワ、ノコ辺りのクワガタがついています。別の山地ではアキニレでミヤマクワガタを捕まえたこともあり、侮れない樹木です。
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例えば神奈川ミヤマクワガタの例として紹介しているこの記事のミヤマはアキニレで取っていたりします。
今回の記事で紹介したようにアキニレにはクワガタが取れるための条件がとてもよくそろっています。
意識的に見つけるのは難しい植物ですが、事前に知っていれば確実に差がつく樹木なので、この夏の採集では探してみてください。
河川敷採集で役に立つアイテムの紹介
夏季の河川敷は下草が繁茂し、イネ科などにマダニやツツガムシが潜伏しています。河川敷採集で避けられないリスクなのですが、薬剤でできる対処はしておくのがおすすめ。ディートなのでお子様には使えません。前述のマダニ+湿った河川敷ではマムシのリスクが高いです。藪漕ぎでは蜂の巣も怖いですし洞での格闘には時間もかかります。クワガタに見えにくいとされる赤ライトが利用でき、待機時間にも十分使える大容量バッテリーのライトは頼れる相棒としてとてもおすすめです。
差がつく樹木の関連記事
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山地で差のつくイタヤカエデ。クヌギやコナラ、河川敷とも異なる環境に生えますがその効果は大きいです。
さらなる発展を狙いたい人は是非。
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雑木林では見ることのない河川敷の大黒柱も紹介しています。樹液に蹴りに洞に最高の樹木です。知らないならばぜひアキニレより先に理解してください。