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ヤマガラの有毒植物エゴノキの実利用に見る生態系の面白さ

毒植物を利用するヤマガラ


ヤマガラという町中などで普通に目にすることができるオレンジ、白、黒色を混ぜたようなスズメ程のサイズの鳥がいます。

小柄な鳥で別に珍しい種類というわけではないのですが、異種族の鳥からなる混群の形成や毒植物を利用するなどその生態にはなかなかに面白いものが見られます。 

今日はこれからの季節にバードウォッチングがより楽しくなるようなヤマガラとエゴノキの関係を紹介します。



有毒植物エゴノキ


エゴノキは庭木としてもよく植えられていることから個人の庭レベルから野山の自生まで幅広い場所で見られるエゴノキ科の植物です。

エゴノキの仲間を利用する生物はとても幅広く、虫こぶ類やゾウムシ類など自然と生き物のつながりを観察していくのにとてもいい題材です。

科の特徴としては5月頃に下向きの白いお花を咲かせます。

これは脚力の強い昆虫に花粉媒介を任せるための植物側の戦略であり、クマバチを中心としたハチ類がよくお花を訪れます。

全草に有毒成分であるサポニンを含み、実などを水で洗うと洗剤のように泡立ちます。

この毒の成分があるため、自然界でこの実を利用する動物は今回のテーマであるヤマガラくらいしか目にしません。

花期について


5月頃に白いお花を大量につけます。代表種はエゴノキとハクウンボクの2種で、どちらもよく目にします。

初夏の昆虫たちが集まる虫スポットでも有り、花期にはエゴノキ科にしかつかない多くの昆虫が訪れます。
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エゴシギゾウムシやエゴツルクビゾウムシが代表種です。

果実と毒について

花後に実ができ始め、おおよそ9月頃に実が熟します。果実はかなり特徴的な形をしており、楕円形で一見するとドングリのように見えます。
熟した後はどんどん乾燥していき固くなって地面に落ちます。
この柔らかい時期~食料の少ない冬の時期にヤマガラが栄養を求めて実を利用します。

ヤマガラについて


1年中やや山地の環境で目にすることができる普通種の鳥です。

生態的特徴

模様はオレンジ、黒、白の3色が目立ちます。

なんとなく似ているような鳥

最も目立つ色はオレンジ色で、冬季にはジョウビタキという配色の雰囲気が似た鳥がいます。

良く小型のメジロやエナガ、コゲラなどと混群を作っており、この群れを探すことでかなり簡単に見つけることが可能です。

鳥の中で唯一エゴノキ科をかなり好んで利用することから、エゴの実の時期に木の近くで張り付くことでかなり近くまで接近することができます。

成鳥は昆虫類を始め植物の芽や実を利用します。

ヤマガラはエゴノキを優先的に利用する

いつまでもエゴノキ科の実を探すヤマガラ。嬉しそう。

ヤマガラのエゴノキ利用はとても有名です。多くの鳥がいる中で例えばヤマガラ所属の鳥の混群は冬季にカラスザンショウというミカン科の植物で目にすることがとても多いです。

混群は複数の鳥から構成されていますが、その多くが好む種類を集団で利用することでスイミーのように猛禽類への警戒の目を休めずに常に食事が取れるのでしょう。

一方でヤマガラに会おうとエゴノキで待機してみればこの木に来る鳥は本当にヤマガラしか来ません。

これはもしかするとエゴノキ側の種子散布戦略の1つなのかもしれません。

鳥と植物の相互利用は有名な話で、種子が鳥の体内を通過すると発芽率が上がると言う話もありますね。

見ているとその場で忙しなくあれこれ行動しています。

何より鳥のくちばしはエゴの実のような丸いものを掴むことに特化しているわけではないので、結構落っことします。

移動できない植物からすれば20%でも30%でも嘴から逃れることができれば新天地で新しい株を増やすことが可能なのです。
このように見ると果実利用の鳥たちが種子散布に大きく貢献していることが分かります。

そしてこの偶然としか思えないような種子散布戦略はヤマガラ⇔エゴノキ間だけではなく、多くの鳥やリスなどの種子利用をする生物間で見られる現象なんですよね。非常に面白いものです。

毒植物利用の生存戦略

植物側のメリットを伝えてきました。毒植物が利用できることは動物側にも大きなメリットがあります。

それはもちろん自然界における餌資源範囲の拡大です。混群の話がありましたよね。

カラスザンショウをよく利用する群れの話です。自然下において餌資源の最大値は決まっています。

芽喰いの鳥は植物の芽の数で可溶数は決まりますし、猛禽類は食物連鎖の下位の動物などで個体数が決まってしまいます。

思うにヤマガラだけがエゴノキを利用するのはコレまでの生存戦略の段階で鳥などの餌資源が極端に減ったタイミングが有り、その時期にエゴノキなどの有毒植物を利用することができたことでその特性を得たのではないかと考えています。

ヤマガラ類がなぜエゴノキを利用できるのかというのはよくわからないんですよね。

毒の利用可能性は特に餌の少ない冬に有利で、この時期にもヤマガラはエゴノキのカラカラの実を利用している場面に遭遇します。

実は脂肪を蓄える次世代のための期間なので効率がいいのでしょうね。もちろん餌はそれだけではないので、冬芽を食べているような場面にもよく遭遇しますよ。


まとめ


ヤマガラは有毒植物であるエゴノキを利用することで同サイズ感の鳥たちと餌資源の面で有利な鳥です。

なぜエゴノキ科を唯一利用することができるのかは不明ですが、ダーウィンの進化論的な視点で見れば生存戦略の一環として身につけた能力である可能性が高そうです。

ヤマガラの観察には熟したエゴノキが見られる9月以降がおすすめで、この時期はとても間近で観察することができる最高のタイミングです。興味のある方はぜひじっくりヤマガラ観察を楽しんでみてください。

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今回のような生態系に関する話に興味がある方にオススメなのはカマキリとハリガネムシのお話です。山と水辺をつなぐ生物の面白さを紹介します。
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昆虫と植物の視点で言えばアゲハチョウと色のお話もかなり面白いのでオススメしておきます。

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小鳥の天敵であるアオダイショウの視点です。生態系は様々な視点から見ていくことでその面白さが読めますよ。
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秋の鳥モズもバードウォッチングの対象としてとてもオススメです。はやにえや高鳴きは面白いですよね。