秋に高鳴きするモズ

9月下旬頃から単独でとても大きな声を出しながら鳴いている鳥の声を聞く機会が増えます。
モズという小鳥のものなのですが、モズのはやにえを始めなかなかにユニークな性質を持った鳥です。
鳥類は秋の初めから冬にかけて見やすいタイミングが来ます。鳴き声を参考に鳥を探し、バードウォッチングを楽しんでみましょう。
今回の記事ではモズという鳥の出現しやすい場所やその生態などを紹介していきます。
モズとは
モズは20cm程のサイズ感でスズメやシジュウカラなどに比べると大きい鳥です。

南方系の鳥で春~夏の期間は日本にいません。
秋の初め頃に日本にやってきて代表的な高鳴きをすることで縄張りを主張し、2月ごろには繁殖の準備を行います。

高鳴きは樹木の先端など目立つ場所で行われることが多いのですが、枝先やススキ程度のイネ科に止まって鳴いていることもあります。
基本的には単独で行動している鳥で、その縄張りの主張の強さのために遭遇することはとても簡単な鳥です。
ヒヨドリほどのサイズ感でオレンジ色をしていて単独行動していればモズの可能性は高いでしょう。
バードウォッチングにもとてもオススメの入門種です。
肉食傾向の強い小鳥
モズは雑食性の鳥ですが肉食傾向の強い鳥です。これはモズの嘴を見ると明らかです。


例えば植物食傾向の強いイカルなどの鳥は種などを利用する機会が多いので厚い嘴を持っています。
モズの嘴はややねじれるように付いており、昆虫類や肉などを引きちぎることに秀でています。
猛禽類には劣りますが、スズメなどに比べるととても強力な嘴に見えますね。
モズのエサについて
モズのエサはその雑食傾向故に特定することは簡単では有りません。

しかしモズのはやにえにより犠牲となった生物を見ることで日頃どんな生物を利用しているのかと言うのを推測することができます。
残念ながらはやにえはなかなか観察できません。

狙われる生き物はとても幅広く、トカゲなどの爬虫類系からカマキリやバッタ類の昆虫類が多いようです。

特にカマキリは出現時期のピークがモズの高鳴きシーズンと被っていることからいい餌になっていると思われます。
また、大型のモズがスズメやシジュウカラなどの小型の鳥を襲って捕食する事例も報告されています。

モズのねじれた嘴がいかに強力であるかを物語っていますね。とはいえ捕食シーンが見られることは稀なものです。
このような肉食傾向からモズはシジュウカラやエナガなどの植物食の鳥と違い群れを作りません。
秋以降にモズを単独で見かけやすい理由としては、おそらくエサ確保のために広い縄張りを持つことで生存の可能性と後述による高鳴きでエサ資源の競合を避けているものと思われます。
秋の高鳴き
モズといえばはやにえと並んで高鳴きが有名です。

個人的にはモズといえば高鳴きだと思いますし、これを聞くと秋が来たかぁという気分になります。
高鳴きは縄張り主張の手段であり、大きな声を轟かせることに意味があります。
とはいえ縄張り主張の範囲でエサの量を確保しきれるのかというのにはやや疑問があります。

高鳴きではありませんが、こうした縄張り主張の方法は蝶の仲間でも全く同様のものが見られ、全く別の生き物でありながら似たような行動を取る自然の妙技には驚かされます。
これはこうした縄張り主張の行為が種の生存に優位であるということだと思うんですよね。

テリ張り(テリトリー張り)と呼ばれる行動をしている生物は自身の縄張りに生き物が入るとしつこく追従して縄張りから追い出します。
種によっては♀を待っていたりするのですが、モズの場合には繁殖ではなく♂♀共にこうした縄張りを持つため用途は違うと思われます。
同じ行為でも目的が違うというのは不思議ですよね。
モズが現れる場所
高鳴きする場所にモズは現れると覚えておけば大丈夫です。

場所としては木々の枝先がとても多く、やや開けた環境から飛び出している枝に止まっていることが多いです。
必ずしも樹木である必要はなく、河川沿いや斜面などにススキが生えていればそれに捕まっていることもあります。結構器用なようで草本類に捕まっていることも度々目にしますね。
高鳴きと相性の悪い雑木林環境では目にしません。モズは開けた環境にいることが多いのでそこを意識しておきましょう。
縄張りを持つため、1度目にすると付近でシーズン中は観察できます。
写真のものは手すりの場所も縄張りとしているようで、フンがいくつか付いていました。高いところが好きなので人工物でもよく見つけますね。
まとめ
モズは高鳴きとはやにえに代表されるように面白い行動がとても多い鳥です。
特に日本に来たばかりの秋の頃が観察しやすく、12月頃までは枝先などの開けた場所で頻繁に目にします。
その性質や嘴の形態などからバードウォッチングにもおすすめの種類なので、ぜひ探してみてください。
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