目立つ3色の色合いの鳥
オレンジ、黒、白の非常に目立つ鳥が冬になると都市部や自然の残る場所に現れます。
冬鳥でありながら日本でも一部営巣が確認されるなど面白い生態を持つ鳥です。
この鳥は冬鳥の生態を学ぶのに適した鳥であり、見た目も美しいのでバードウォッチングや鳥に興味のある方への入門種としてお勧めできます。
今日の記事ではジョウビタキを例に冬鳥の性質や人間の生活圏に適応する鳥類の事例を紹介し、鳥観察がより楽しくなるような情報提供をしていきます。
ジョウビタキとは?
ジョウビタキは私が見ている限りでは9月頃から日本にやってくるようです。
♂はオレンジと黒の2色が目立ち、羽に白い点模様があるかなり特徴的な色合いの鳥です。
ジョウビタキは冬季にのみ日本を訪れる冬鳥として知られており、観察できるのは一年の内およそ9月~3月頃になります。
冬の時期を過ごしたジョウビタキは日本を離れ、ロシア、中国、モンゴル、朝鮮地域などの寒い地域にて繁殖を行うことが知られています。
というのが一般的な認識だったのですが、近年の研究で事情も変わってきているらしく、八ヶ岳などの一部高地に限りますが、日本国内でも繁殖する事例が確認されています。(2010年と新しい)
♀は♂と打って変わって地味目な色合いをしています。
オレンジと白とグレーのような色合いです。ジョウビタキなどの○○ヒタキの仲間は♂がいずれも特徴的で、♀は種によっては見分けがかなり困難です。
ジョウビタキの♀はオレンジ色が残っているので、ヒタキの中では分かりやすい方ですね。
餌としては昆虫類や木の実を食べていると思われますが、食事シーンに遭遇できることは稀です。
大抵の場合彼らが持つ縄張りの巡回中にひょこりと遭遇することになるはずです。
縄張りを持つ鳥であるため、冬に一度発見すると同じような場所で再発見できる場合が多いです。これも面白いですね。
この縄張りをめぐる争いが面白い鳥でもあります。
肉食性で同じく冬に平地に来るモズと同じく♂♀問わず縄張りを持ちます。
冬季の餌資源はかなり乏しいので、♂♀構わず生存のために必死です。
これにより♂の縄張りに♀が入ってきても追い払うような行動を観察することができます。可愛らしい見た目のわりに中々に攻撃的なのが意外ですよね。
バードウォッチングで人気の鳥
ヒタキの仲間は派手な色合いを持つため、バードウォッチングの対象としてもとても人気です。
猛禽類やヤマセミ、ベニマシコなど特に人気の高い鳥もいますが、レア度の高い鳥に出会えるかどうかは運の要素もかなり大きいです。
一方でジョウビタキは冬季であれば山地や平地の普通種であり、縄張りを持つ性質からも安定して見ることができます。
さらに言えば鳥には止まりやすい場所のタイプがあります。
アオジのように茂みにばかりいるような鳥では声は聞こえても発見できないというモヤモヤが続くのですが、ジョウビタキは枝先などの出っ張りが好きです。
普通種で色が派手、おまけに止まるところも外から観察しやすいということでとてもバードウォッチングに適しているんですね。
もちろん平地でも観察できます。家ばかりの住宅地は難しいかもしれませんが、近くに緑のある環境や河川があるなどの条件があれば十分に目にすることができますね。
また、音声が無いのでイメージしにくいと思いますが彼らの鳴き声というのはかなり特徴的です。
ヒッ↑ヒッ↑という腹式発声のような甲高く大きい歯切れのいい声を出します。
姿が見えなくても種類の特定が簡単なのも初心者向けで嬉しい鳥ですね。
冬鳥のジョウビタキ
ジョウビタキは冬鳥なので冬にしか目にしません。というのが通説でした。
冬季に日本に来たジョウビタキは暖かくなると北上し、その地で繁殖するというものですね。
日本に来ているジョウビタキは非繁殖期の個体であり、前述の通り縄張りを持って寒い冬を過ごすための場所として使っています。
おおよそウグイスが鳴き始める3月上旬ぐらいを境に見かける機会が減る鳥という印象です。
ですが八ヶ岳を始めとする高地にて繁殖しているジョウビタキが確認されています。発見地は彼らの生態である繁殖期に寒い地で繁殖するという点から他にも北海道での繁殖事例も知られています。
とはいえこれらの事例は偶発的な可能性も高いですよね。
そこで偶発的なのか定着しているのかを確かめた研究があります。
ジョウビタキはツバメほどではないものの人が近くにいる環境を好むらしく、営巣地は標高2000mクラスの山脈でペンションなどがある避暑地として知られている場所でした。
結果高原(いずれも人の多い避暑、リゾート地)にて18件のジョウビタキの繁殖行動が見られています。
観察時期は5月~8月頃までであり、一般的にはジョウビタキが北に向けて旅立った後の季節でした。この研究では八ヶ岳周辺においてジョウビタキが定着および継続的に繁殖していることが指摘されていました。(2019年までに総計137件!)
ジョウビタキは冬鳥として知られていますが、その全てが冬の終わりに旅立っているわけではなく、日本に残り定着しているものもいるという驚きの結果を示す研究ですね。
ジョウビタキを愛する人はその気になれば夏でもその姿を見ることができる可能性はありそうです。
ジョウビタキの都市環境適応について
ジョウビタキの繁殖についてもう少し詳しく見ていきましょう。
鳥類の営巣といえば草地や薮の中、樹上などが思い浮かぶと思います。
実は八ヶ岳における先ほどの研究以降、ジョウビタキの繁殖場所に目が向けられる機会が増えたのか全国的に繁殖例が報告され始めています。
面白いのがツバメのように人工物を利用する傾向もみられるという点です。よく知られるようにツバメは外敵から身を守るため人の多い環境に営巣を行いますよね。
ジョウビタキは縄張りなどで遭遇すると分かるのですが、あまり人を恐れている気がしない鳥です。(私の主観)
人が害をなさないということをなんとなく理解しているのかもしれません。
ジョウビタキの繁殖例としては鳥取、岐阜、長野、岡山、そして繁殖場所としては林などよりも人工物、中でも定住建物が選ばれたと言われています。
やはりツバメに似た傾向を感じますよね。
営巣場所としては人工物内には換気扇フードが人気で、次点が建物の隙間のようです。この2つで全体の50%を占めており何かしらの傾向はみてとれますね。
ジョウビタキは食性が昆虫類や果実食であることから営巣には近隣に林が必要なはずです。
そして冬鳥であることから一定の寒さも必要です。これを満たしているのが高地のリゾート地だったのでしょう。
寒さの条件が厳しいですが、寒い地域なら平地の林と隣接した住宅地などでも営巣の事例が出てもおかしくないですね。
ジョウビタキはもとからこうした人工物利用だったのか、進化の過程で人工物を利用するようになったのかははっきりしませんが、過去におけるヒヨドリやハクセキレイ、オオタカなどのように人の多い都市環境にうまく適応している鳥だということがよくわかりました。
似た鳥について
その派手な色合いから種の特定はかなり簡単な鳥です。
しかし町中や雑木林などの似た環境ではヤマガラという鳥が似ているかな?という感じです。
ですが縄張りを持つジョウビタキと、他の鳥と混群を作るヤマガラの出現環境は異なります。
まとめ
ジョウビタキは冬に目にするバードウォッチングでも人気の鳥です。
人懐っこい性格であり数mまで近づいても逃げませんが、彼らは縄張りを持つ性質であるため我々人間の様子を伺っているものと思われます。
冬鳥と思われていましたが、高地などの条件は必要なものの標高のあるリゾート地での繁殖が確認されました。
営巣に関しては人間活動のある場所に関連している傾向が見られるようで、ツバメのような傾向が見られるようです。
これから冬にかけて普通に目にすると思うので、ぜひじっくり観察して見てください。
参考文献
八ヶ岳周辺におけるジョウビタキの繁殖と定着化(山路公紀・林 正敏)
八ヶ岳周辺と高山市におけるジョウビタキPhoenicurus auroreus
の繁殖環境の選好性
(山路公紀 ・宝田延彦・石井華香)
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