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クヌギの木の見分け方。違いを理解して樹液に来るクワガタを捕まえよう。

誰もが名を知るクヌギという植物

クヌギは植物というニッチなジャンルでありながらも樹液にカブトムシやクワガタが来ることから圧倒的な知名度を誇ります。

夏の樹液=クヌギという図は馴染みのもの

しかし名は知っていても姿を見つけるのが難しいというのが現状としてあると思います。

今回の記事では樹名板などの助けがなくとも自身の力でクヌギを見つける方法や、そもそもクヌギを見分ける必要が無い時代!?などのお役立ち情報をお伝えします。

クヌギとは?

クヌギはブナ科の樹木であり、雑木林の普通種です。

クヌギの葉。細長く特徴が分かりやすいため、初心者向き

やや黒みがかった特有の色と凹凸の激しい樹皮により慣れている人からは木の皮を見るだけで特定可能です。

夏にはドングリがついており、この形が丸いことも非常にわかりやすい唯一性があります。

樹木としては広葉樹の仲間であり、およそ3月頃から新葉を展開、同月中に動物の尾のような特有の花を咲かせます。

およそ11月頃になると葉を落とし、黄色の紅葉が楽しめます。

クヌギは真っ黄色な紅葉を見せてくれる

かつての里山環境もとい薪炭林の主要材料として燃料用に育てられていました。

化石燃料の利用増加とともに木材需要が低下し、かつての薪炭林は荒れた森へと変化しています。それに伴い里山環境に出現していたかつての普通種たちも減少傾向が見られています。

クヌギの名前よりも樹液の方が有名であると思われ、認知度はかなり高いです。

春のサクラ、夏のクヌギは自然にさほど興味がない人でも名を知っている、ある意味不思議な木と言えるかもしれません。

クヌギの見分け方について

クヌギを見分けたい方はほとんどが夏に昆虫採集をしたい方であると思われます。

樹液の虫を探す上でマストな植物がクヌギ

特に初心者の方が多いと思いますので、なるべくわかりやすくを心がけていきます。

まず木には前述の広葉樹と針葉樹というものがあります。クヌギは広葉樹、マツなどの細い葉が針葉樹ですね。

過密な針葉樹林。スギ・ヒノキは樹皮が茶色いのもポイント

雑木林や山地では広葉樹林、針葉樹林、2者が混ざった森があります。

このうち針葉樹林に行かないよう注意が必要です。

典型的な針葉樹林。まっすぐ背筋を正した木たち

針葉樹の見分けはとても簡単で、まず葉が生えているか落ちているかを確認してその形を見ましょう。

ヒノキの葉。広葉樹とはぜんぜん違う細長さ

身近で多いスギはチクチクしていますし、ヒノキはクリスマスツリーを遠目から見たような段々状の葉をしています。

木々の立ち方も針葉樹は特殊で、スラっとまっすぐに立ち上がるものばかりです。

枝も曲がっていれば幹が曲がっているケースも多い

一方で広葉樹林は木が傾いていたりするケースも多いです。落ちている葉を見かけたらそれが葉らしい丸みを持っているかどうか確認してみましょう。

もし時期に余裕があるならば、冬の期間中にスカスカであるならば(落葉)広葉樹林です。針葉樹の一部にも葉を落とすものはいますが、平地では気にしなくて大丈夫です。

広葉樹林を見つけられたらクヌギを探していきます。ここではクヌギを自力で見つける場合と他の生き物に頼る場合を紹介します。

生き物に頼る方法

さてクヌギの記事でこんなことをいうのはあれですが、目的はクヌギを探すことではなくて昆虫を捕まえることではないでしょうか?

お目当てが樹液性の虫ならば、木を見分けなくても捕まえられる

そんなあなたはクヌギを見分ける必要はないというのが結論です。

広葉樹林を見つけたならば主に6~8月頃に雑木林へ入ってみましょう。そこではたくさんの木々がありますが、木を見ていると蝶の仲間やスズメバチ、カナブンなどが止まっていたり飛んでいるはずです。

止まっているならばその樹液には夜カブクワが来ている可能性が高いですし、昼間でも見つけられてしまうかもしれません。

昼間の樹液ではスズメバチが最高の樹液を知らせるサイン。

また、こうした雑木林で飛んでいる虫は追いかけてみると樹液にたどり着く場合がかなり多いです。

昆虫を取ることが目的であり、その手段としてクヌギを使いたい方は、そもそも樹液に来る虫を利用して樹液を見つけてしまった方が楽だと思います。雑木林さえ見つければチャンスがありますからね。

自力で頑張る方法

そうはいっても見分けたいのが人間というものです。ここではクヌギの特徴を根掘り葉掘りしていきます。

最初に伝えておくと全くの初心者が特定の樹木を見つけ出すのは大変です。しかし見分けられればその分チャンスは増えますので頑張っていきましょう。

コナラよりは分かりやすいですよ。

樹皮

まずクヌギは樹皮がかなり分かりやすい樹木です。

特有の縦割れが目立つ。明るく見えるがかなり黒い樹皮

遠目から見ても明らかに黒みがかっています。そして樹皮の凹凸がかなり激しいです。

雑木林で目にする樹木の中ではごつごつ感はかなり強いので参考にしてください。

凹凸は激しければ2~3cm程度あることも

怪しい木を見かけたら葉とドングリを見ていきましょう。

クヌギの葉は細長くやや革のような光沢が見られます。そして葉の先端には白っぽい小さな棘上の物体がついています。

クヌギの葉の先端には棘状の突起がある。かなり分かりやすいポイント

この棘は分かりやすいポイントで、似た特徴はクヌギやクリ、アベマキに見られます。

このうちアベマキは主に関西の方で見られる種類ですし、別にこの3種はどれもカブクワが来る木であるため見分ける必要はありません。
細長い葉につく先端のトゲを探していきましょう。

ドングリ

また、ドングリも分かりやすいポイントです。

丸いドングリは身近ではクヌギだけ。分かりやすい判別ポイント

クヌギのドングリは丸い形をしています。丸いドングリは身近ではなく、丸い時点でクヌギと考えて大丈夫です。

しかし昆虫を探すうえではドングリを見つけた時点でどれも樹液に虫が来るので、当たりです。

まとめると黒く凹凸の激しい樹皮、細長い葉と丸いドングリですね。これだけで無数の樹木からクヌギを見つけられるはずです。

クヌギと樹液

ここからはクヌギを見つけた方がよく知りたい情報を添えておきます。
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平野部でカブクワを見つけたい場合や神奈川などの都市部である場合には本ブログ中の記事をご利用ください。捕まえた種類ごとの難易度などを紹介しています。

樹液の探し方について

樹液の探し方にも難易度があります。クヌギを見分けたい方は初心者の方だと思います。そういった方に挑戦していただきたいのがナラ枯れ樹液採集ですね。
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本記事中でカブクワを捕まえるつもりならばクヌギをあえて見分ける必要はないと話しましたが、このナラ枯れ樹液採集では木を見分けることなくカブクワの来る樹液を見つけられます。

やり方も簡単で木から出る粉を探すというものなのですが、詳細は別記事でしっかり紹介していますのでそちらを参考にお願いします。

樹液の出る時期とは

樹液の出る時期は難しい問題ですよね。早ければ5月頃から樹液は出ています。

発酵樹液が目立つのは6月中旬ごろから。サラサラした樹液は4月頃から

越冬性のコクワガタなどは早めに出た樹液にて5月頃から見ることができます。

樹液には水分が必要です。なので樹液を簡単に見つけたい場合には6月の梅雨の雨がある程度降った後がおすすめです。

そして真夏になると水分量が減る影響で樹液の流出も減少していきます。

6月下旬~7月上旬はレベルが違う程度に樹液が出ているのでおすすめシーズン

つまり樹液を探すのに最も楽な時期というのは6月下旬~7月上旬ということになります。
初心者はこの時期に集中的に探しましょう。

蒸しているこの時期ならば発酵した樹液も良く見つかります。いわゆる甘いにおいが雑木林に漂っていますので、風などを利用してうまく方向を探っていけば木を見分けずとも見つけられるはずです。

クヌギの樹液に来る虫たち

平地や都市部でも目にすることができる樹液性の昆虫を一部紹介します。
こんな虫を見つけたいと目標にしてみてください。

コクワガタ

平地でも普通に見つけられます。

珍しくはないが、出会う頻度が多いので好きになるクワガタ

今回紹介したクヌギの見分け方や、途中で紹介したナラ枯れ樹液採集を行えばすぐに出会えると思います。
個体差が大きく、2㎝~5㎝と何度見つけても楽しいいいクワガタです。

ノコギリクワガタ

実は簡単に見つけられるクワガタです。

ちびサイズが結構多い印象

平地では60㎜に満たない小さいものも多いですが、都市部でも69㎜のジャンボサイズを見つけたことがあり、ロマンは十分あります。
60㎜を超えると1㎜ごとに明らかにでかくなるのが楽しいいいクワガタです。ぜひ挟まれてみてください。

カブトムシ
平地の個体数はちょっと少ないかも。クワガタとはやや時期が違うのもポイント

上2種と比べるとやや出現は少なくなりますが、カブトムシも普通に見つけられます。
注意点は7月中旬~下旬頃がおススメの観察時期ということですね。

シロスジカミキリ

平地ではかなり珍しいカミキリです。

クワガタより全然見つからないカミキリ

里山環境の樹液流出役を担ってくれていたカミキリなのですが、その存在の減少により樹液を出す木が減りました。
今ではナラ枯れを引き起こすキクイムシが代役として樹液流出をしていますが、個体数が増えてくれると嬉しいものです。
今回紹介している虫の中では一番出合いにくいと思います。

ミヤマカミキリ

大型カミキリの中では出会いやすい種類です。

でかいカミキリの中で最も遭遇しやすい

木の中で3年の月日を過ごすため、遭遇した個体は卵から4年間も生きている凄い個体です。主に栗の害虫としてよく知られていますね。

キシタバの仲間

一部の大人人気が高い美麗な蛾です。

最近この蛾の魅力に気づきつつある私

カブクワよりも躍起になって集めているマニアもいると思います。
後翅に特有の鮮やかな色合いを持ち、キシタバは黄色、シロシタバ系は白、ベニシタバ系は赤色をしています。
どれも非常に美しく、私も最近興味があるジャンルです。
樹液に来ていたらちょっと観察してみてください。

アカアシオオアオカミキリ

東京神奈川の都市部で急に個体数が増加しているカミキリです。

幻のカミキリが今だけ遭遇できるかも!

エメラルドの光沢と赤い脚を持つかつての幻のカミキリでした。
ナラ枯れにより餌資源が異常に供給されたことで一時的に個体数が増えている可能性があります。
虫好きなら目を引いてしまう魅力にあふれているのでぜひ探してみてください。

クヌギを学べば樹液の昆虫採集の第一歩のスタートです。
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しっかり成果を上げるためにはクヌギ以外にも多くのことを知る必要があります。このブログでは基礎から成果を上げるための情報を過剰なまでに網羅しているので、成果を上げたい方は大変ですが基礎情報などもご覧ください。

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クヌギや樹液を覚えたら採集の現場に行ってみましょう! 東京神奈川ならこのブログの記事を読んで、空気感を把握できます。