市場にも並ぶ超人気の山菜 探し方や味はどうなのか!?
極上の味わいと自身で取った満足感から、山菜の中でも圧倒的高評価を得るタラの芽というものがあります。
都市部ではなかなか取ることができない山菜ですが、自然のものの味わいは苦みもコクも市販のものとは別格の美味しさがあります。
採集には植物を守り、共存する視点が不可欠です。私欲にまみれない採集方法とタラノキの発見方法、生えている環境などについて紹介していきます。
山などは私有地であることも多いため、採集できないケースも多いです。タラノキがどういうところに生えているのかを確認するのにとどめておくのが良いでしょう。
タラノキとは?
タラノキはウコギ科に所属する植物です。
馴染みのない科の植物だと思いますが食用のウドやウコギ、観賞用としてのヤツデやカクレミノなど我々の身近にある植物の仲間です。
生息環境がはっきりとしている種類が多く、タラノキは日当たりをかなり好む植物です。成長速度が非常に速く、特に成長初期には1年で1m以上も伸びる場合もあります。
幹にはトゲがびっしりと生えており、主にシカなどの害獣対策であると思われます。
しかしシカの多い丹沢などでは優先的に食べられていることからあまり意味はなく、芽を取る人間にしか効果がないのではないかと思います。
この棘は森を歩くときに非常に厄介で特に背丈50㎝以下の小さな個体に足を引っかけると大変痛い思いをすることになります。
葉はかなり特徴的で羽状複葉という名の対になって出る小葉を付けます。先端だけは3枚であり、幹から飛び出たこの各対と先端の3枚を含めたすべての小葉で1枚の葉となります。
花もかなり特徴的です。丸くて白いお花ですが、まるで爆発したかのような印象を受ける花です。
タラの芽が超有名な植物
「タラノキの名よりもタラの芽の方が知られている」
と言っても過言ではないくらいタラの芽が有名です。山菜の王様とも呼ばれるタラの芽は市場で入手するものとは全く異なる味わいで、自然の厳しい環境を感じさせる味の濃厚さがあります。
養殖のブリと天然のブリ、養殖マグロと天然マグロで身の締まり具合や脂の乗り具合が違うように、山菜のレベルにおいても味わいの程度は違ってきます。
具体的には天然のタラの芽にはややアクが見られ、苦手な人はあまり加熱しない食べ方は苦手かもしれません。
あく抜きせずに利用できるのが高温で挙げるてんぷらになるのですが、天然物は上げるとちょうどいいアクの具合になります。
養殖物は風味が弱すぎてあげてしまうと香りを含めすべて飛んでしまいますし触感も収穫から数日たったレタスのように面白みがありません。
天然のタラの芽の味わいはタラの味としか言えないような独自の味をしています。ジャンルとしては植物ではあるものの、アスパラのようなジューシーさと動物質のような強いコクがあります。
これにほのかな苦みが加わることで味わいがリセットされ、いくらでも食べられる飽きの来ない味わいを生み出しています。
触感にもメリハリがあり、先端の葉状の部分はカラッとした触感を味わえる部位です。しかしタラの芽の本質はその基部にあります。
ブロッコリーの付け根を思わせるちょうどよい噛み応えがあり、前述のうまみと合わせていつまでも噛み続けたい不思議な質感をしています。
総じて天然のタラの芽でしか味わえない味であり、自身で採集したものであれば格別の味わいになること間違いなしの山菜の王にふさわしい植物です。
ただ、私的には同じウコギ科のハリギリの方が1段上の評価となりますね。
タラノキとパイオニア植物
素晴らしい味わいをしたタラノキ。気になるところですよね。どうやって探すのが良いのでしょうか?
探すコツはタラノキがパイオニア植物であるという点と日差しをかなり好む植物であるという2点に注目する必要があります。
まずパイオニア植物というのは野焼きや土地の開発、森林伐採などで開けたスペースにまず先に入り込む植物のことを指します。
身近なものではヨウシュヤマゴボウやタケニグサなど誰でも目にしたことがある代表的なパイオニア植物です。
タラノキは山地の伐採地などで頻繁に目にする植物であり、これはクヌギやコナラを薪炭林として管理していた過去の生活と結びついていました。
山菜は地方ではいまだに根強いものですよね。かつては薪の確保を行う過程で開けた環境にタラが侵入し、その恩恵を受けていたのではないかと思いますね。
パイオニア植物は侵入初期の成長が凄まじく、短期間で圧倒的に成長することでその環境を独占する性質をもちます。
タラノキの葉は前述の通り羽状複葉というかなり大型の葉なのですが、これは太陽光を丈夫で独占し、下部への照射を防ぐ役割もあるのではないかと勝手に推測しています。
こうした性質からタラノキを探すうえで重要となるのは森林や雑木林環境に生まれた開けた空間、もしくは南側が開けた斜面環境です。
どちらも意識するだけで遭遇率が大きく上がるポイントです。それぞれ見ていきましょう。
例えば雑木林環境では近年のナラ枯れの影響を受けて大木のクヌギコナラが伐採される事例が増えています。するとそれまでその樹木が覆っていた空間が空いて日が差すようになりますよね。
同様に地上にも空間が生まれます。そこにタラノキが入ってくるケースですね。
大木の伐採ではなくとも下草の刈り取りが行われたりススキ原に大規模な草刈りが入ったりすると侵入するケースもありますね。
また、タラノキはとても日当たりを好む植物です。
もしも南側に開けた斜面があれば良く観察することでタラノキを見つけられるはずです。ただし滑落などにはかなり注意が必要です。
こうした性質から日本古来の風景であるススキとはとても相性が良い植物です。
ススキは管理のために毎年刈られる傾向があります。ススキは初夏~冬の刈り取りまで長い期間葉をうっそうとさせるため、他の植物が侵入できません。刈り取りにより開放空間がうまれ、即座に侵入するパイオニア植物は相性がいいのです。
迷ったときは山の中などでススキを探してみましょう。
採取について
タラノキを見つけたからと言ってある芽をすべて取ってしまうというのは植物から恩恵を受けているという視点を忘れた最悪の行為です。
取る芽は頂点の1つだけにとどめておくのが良いと思います。
頂点の芽は圧倒的に大きく、1つでも満足できるくらいの大きさのものが多いです。
一方で人の手で届く程度のタラノキの2番目3番目の芽は小さいものも多いです。
タラノキは春の芽自体そんなに多くない印象の植物なので、頂点以外は残してあげるくらいの気持ちを持ちましょう。
そこで枯れずに成長してくれればもしかしたら来年再来年には取れる数が増えるかもしれませんからね。
自然相手には目先の欲に捕らわれずに長期的な視点で物事に取り組む視点も教えてもらうことができます。金の卵を産むガチョウの話を知っているでしょうか?
金の卵を1日1個産むガチョウを飼っていた人が欲にくらんでガチョウを殺してお腹の中のものを取ろうとした結果、卵は無く、金を産むガチョウも失ってしまうという話です。
自然のあらゆるものはこの話に通ずると個人的には考えています。タラノキを始めとする山菜も長い目で見れば個体を多数生かした方が得できるのは自分なのです。
私が山菜などの自然の恩恵から学んでほしい視点がこの金のガチョウを実体験で学べるという視点です。人の目のようなミクロな視点だけでなく鳥の眼のようなマクロな視点を持って高い視点から自然を見るようにしましょうね。
なぜこんな話をするかといえば自然のものを根こそぎ取る人間が多いからです。山菜に限らず昆虫採集などにも通ずる話です。
どうしても食べたければ春にスーパーで買ってみよう
自然下にはタラノキに似た植物もあります。幸い毒のあるものは無いと記憶していますが、7000種類近くもある植物の中から特定の1種を見出すのは初心者にはかなり難しいかと思います。
もしもタラの芽の雰囲気を味わいたいならば春にスーパーを見て回りましょう。一部のコアな人気があるのかタラの芽やコシアブラといったウコギ科の山菜は養殖されたものが出回っています。
どれも細く天然物にはかないませんが、味わいの雰囲気を掴むことはできます。
タラとハリギリ
ウコギ科の山菜として、真の王者と名をあげる物にハリギリという植物がいます。
日を好むタラに対してハリギリは日陰を好むことから見つけるのに慣れが必要な山菜です。
しかし日陰環境は陽当たりのいい環境よりも圧倒的に多いので、目にする機会はとても多い植物です。
私的にもタラをもしのぐ濃厚な味わいとフキノトウよりも万人受けする良いほろ苦さ(くどくない)を持つハリギリこそ山菜の王者と見ているので、興味のある人はハリギリ編もご覧ください。
山菜は総じて植物の知識、生態的な知識、現地から得た考察、自制心と長期的な視点などなど自然の中だけでなく日常で使える多くの視点を学ぶことができます。
採取の禁止されている場所が多いためちょっと苦労しますが、とても面白いので取らずとも体験してみてください。
毒のある植物にだけは注意が必要なので、分からなければ取らないを基本にしましょう。これも自然のルールの1つです。
pljbnature.com
山菜シリーズ1弾。モリーユの名で知られるアミガサタケは身近でも入手できる高級食材です。絶品の味わいです。
pljbnature.com
自分で取らねば味わえない。至高の山菜ハリギリはタラの芽をも凌駕する味わいだと私的に思います。採集のコツなどを紹介!