出回らない至高の山菜
山菜の王者といえばタラの芽という認識の方も多いことでしょう。
しかし真の王者は同じウコギ科に所属するハリギリであると主張したいと思います。
苦み、コク、触感、トゲがないなどあらゆる面でタラの上位互換である山菜がハリギリであると考えています。
今回の記事では一度食べたら忘れられない至高の山菜、ハリギリを紹介し、その味や生える環境、探し方などを紹介していきたいと思います。
山菜の王者?タラの芽
山菜としてまず紹介せねばならないものがタラの芽です。
今回の比較対象でもあります。
知られる通り山菜の王者であり、動物質を思わせるコクと程よい苦みが癖になる春の恵みです。
ウコギ科の植物であり、開放空間に真っ先に入り込むパイオニア植物でもあります。
この性質から日当たりもかなり好む植物です。
以上を含めるとタラの生える環境というのは雑木林や森林に伐採などで生まれた開放空間や定期的に切り払われるススキなどの草地環境、これらに日当たりの要素である南向きの斜面であり、環境条件がとても分かりやすいいい植物です。
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タラとハリギリは探す戦略が異なるので、タラに興味がある人は別記事までどうぞ。
コツさえつかめれば山の中でも比較的見つけられる種類ですが、最近は市場にも出回るため、味わいが気になる人はぜひ挑戦してみましょう。
天然と養殖では別物ですが雰囲気は養殖でも味わえます。てんぷらが美味しいです。
ハリギリとは?
タラの芽と同じウコギ科に所属する植物です。
大木になる植物であり、胸高直径が数mもあるような巨木に出会ったことがあります。
知る人ぞ知る絶品の山菜であり、ハリギリを食べてしまうとタラのあのコクと苦みがかなりかすんでしまいます。
万人受けするタラの芽と好きな人に異常に愛されるハリギリという印象でしょうか。
癖があるのにイマイチ嫌いになれないそんなやつです。
太陽光を非常に好むタラとは打って変わって日陰環境を好む植物です。
しかし暗闇過ぎてもダメで、ほどよい日差しが差し込む程度の空間が必要です。
山地や雑木林ではこうした空間が多いことからタラよりも目にする機会は多い印象を受けます。
マイナー寄りの山菜であるため、採集されていることも少ない素晴らしい植物です。
葉はカエデを思わせるような掌状の姿をしています。幹にはタラをも圧倒する鋭く太いトゲがあり、とても危険な植物です。
ですがこの2つの特徴がハリギリという植物を見分けやすくしてくれています。
とくにトゲに関してはハリギリ以上のものはそうそうないので、山菜において間違いをなくしてくれるというのは心強いものです。
真の王者ハリギリ
さてハリギリの味に関してはタラの芽と同じく例えようがありません。ハリギリの味としか表現できません。
味に関してはタラの芽の風味が好きであれば好きだろうと言えます。
ハリギリは採集時の芽の雰囲気がタラとだいぶ違います。
タラは基部から先端までがっちりとしているのですが、ハリギリは基部ががっちり、すぐさま細い葉柄とふわふわの葉になるという感じですね。
全体的に柔らかい印象を受けるのがハリギリです。(基部は固い)
採集に関してはトゲが大きい分ハリギリの方が取りやすいと思われます。また、芽自体もハリギリの方が太い割合が多く、食べ応えがあるのもいい点ですね。ほおばるように食べられるのはタラではかなり難しいです。
アクは最強に強い
ハリギリの魅力であり難点でもあります。タラは炒めたりすることで食べられますが、ハリギリはてんぷら以外で食べるのはかなり厳しいです。
えぐみの強いアクがかなり多いようです。これに関しては風味を生かしてハリギリ炊き込みご飯を作ったことがあります。
香りはウコギを思わせる清涼感のある優れたものだったのですが、肝心のハリギリが飲み込むのも辛いくらいえぐくて涙ながらに米だけを食べました。
てんぷら専門で味わう山菜ということで調理の幅も狭く、これが市場に出てこない理由なのではないかと推測します。
その代わりてんぷらの味わいは絶品です。
全ての野食ファンはハリギリを自身の手で採取しててんぷらにして食べるべきと断言しても良いくらい素晴らしい味わいをしています。
その味わいですが、生の時に悪さをしていたえぐいアクが天ぷらでのみ心地よいほろ苦さとなります。
うまい食材は鼻を抜ける香りで味わうというのは、ソバやいい調味料に共通する上質なもののサインだと私は考えています。
このハリギリではほろ苦い特有の風味と動物質でバターを連想させるようなコクがふわっと鼻を抜ける体験をすることができます。
タラでは風味もコクも弱くこの体験ができません。
肉料理に赤ワイン、魚料理に白ワインというように足りないうまみを補色しあうことで食材はうまみを増していきますが、ハリギリのてんぷらはそれ単体でコク→ほろ苦さ→心地よい香りという自己完結をしており、口のリセットをせずとも次を新鮮に味わえます。
この点が真の王者として君臨している理由であり、ハリギリのてんぷらは油分がきつくならない限り無限に食べられる気がします。
そして食べ終わった後のいいものを食べた感が抜群に高いです。
また、触感の差も大きく違います。タラは基部~先端まで総じて似た触感をしています。もちろん伸び具合にもよりますが。
ハリギリは芽から葉が出た段階で既に大きく触感が違います。そもそもハリギリの基部はかなり触感がしっかりしていて楽しいのですが、上部は柔らかい葉でふわっふわの質感です。
衣のサクサクとでんぷん由来の甘味、葉のふわふわ感にブロッコリーの芯のようなしっかりした噛み応え+良いアクでメリハリが効いています。
総じてハリギリは野草や山菜という枠に収まっておらず、食に興味のある方ならば1度は食べてほしいと言える食材ですね。料亭などでフキノトウ代わりに出しても全然高評価を得られると思います。
唯一マイナス点を挙げるとすればこんな上質な食材が市場に出回らないため、食べたい場合には自身で取らねばならないということでしょう。
ハリギリはどこに生えるか
山菜採集に当たって注意すべきは毒のある植物との見分けです。
しかし前述の通りハリギリはその鋭い巨大なとげとカエデを思わせる形の巨大な葉により見分けが簡単な種類です。
毒に関しては大丈夫でしょう。具体的にどんな場所を見るかという点ですが雑木林や森の淵というのは意外とおすすめです。
淵は開放空間の境目であり、幼木のハリギリが育つために笹などの太陽光を遮る要因がないというのは重要なことです。
ただし笹はススキと違い低密度であれば日光を強烈に遮りません。
そのため林床が笹を始めとするイネ科で埋まっているような環境はハリギリをよく目にする環境と言えます。
いかんせんタラノキのようにはっきりとした生息環境があるわけではないので、そこは暗めの森にアクセスしていくしかありません。その代わり生息に適した環境も多いので目にする機会は多いです。
おすすめは雑木林などの閉鎖空間から伐採などが入り植生に変異が進んだ場所です。
雑木林~ススキ原の遷移段階は見かける機会も多いいい環境で、タラとともに生えているケースも見られます。
基本的には薄暗い場所で、やや明るいくらいの場所でも目にするというふわっとした認識を持っておきましょう。
ハリギリは幼木~成木まで非常にサイズ幅の広い植物です。50㎝程度の幼木を発見することができれば周囲に食べられる程度のハリギリが生えている可能性は高いです。
タラやハリギリが入り込む場所は同じ場所であることが多いので、良い場所を見つけられればまとまった成果を上げられるでしょうね。
採集の際に意識すること
タラの採集とも共通しますが基本的には大きい頂点の芽だけを取るようにしましょう。
自然からの恩恵を受けているという気持ちで味わうのがおすすめです。
欲にくらんで2番、3番目の芽を摘んでしまえば枯れる可能性も出てきてしまいます。植物の多様性に配慮し、ハリギリを枯らすことのない採取を心がけましょう。
ほんの少し頂けば翌年以降もきっと春の味覚を味わえるはずです。
ハリギリの芽は基部がタラよりも太いケースもあります。
注意点としては基部をしっかりと持つことです。芽はかなりの力でくっついているので、上部を持つとせっかくの芽が壊れてしまう可能性があります。
あとは採集時に基部を折り曲げる形で取ることになります。変に引っ張るとトゲだらけの幹が反動で飛んでくるので片手で幹を押さえて片手で芽を折るのがおすすめですね。
最後に山地の笹類はマダニなどがついていることも多い植物です。害虫対策もしっかりと行ってとるようにしましょう。
ハリギリの味わいは毎年春が来るたびにそろそろハリギリの時期か とわくわくさせてくれるものがあります。お酒などにもとても会う絶品の食材なのでぜひ探してみてほしいですね。
推奨アイテムについて
ハリギリやタラの採取においてはヤブに潜むマダニが最もリスクの高い存在です。国立感染症研究センターにてディートが有効であることが明らかとなっています。完全防御とは行きませんが、下げられるリスクは下げておくのがおすすめです。
ヤブではトゲ植物やイネ科の鋭い葉に気をつけないと切り傷だらけになります。手を覆う手段を用意すれば虫なども気にせずいけますし、服についたりしても強気に除去できるためとてもおすすめです。
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同じウコギ科のタラの芽もおすすめの山菜です。春に探していては間に合わないので冬季の下見が鍵です。
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春の人気きのこアミガサタケ。探すのが大変な高級食材ですが、発見にはコツがあります。自分の経験をお伝えします。
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下草が多いところに行きがちなので、マダニ対策をしっかりしましょう。