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身近で見られるオオスカシバの仲間。緑や茶色のオオスカシバ?

秋、奇妙な蛾が目につく

花にやってくるオオスカシバ。緑が目立つが、茶色のものなどもいる?

コスモスを始めとするキク科や、メドーセージなどを始めとするシソ科など細長い形をしたお花が増えるこの時期にはたくさんの蝶や蛾の仲間がそれらのお花にやってきます。

その中でも特に印象強く目につくのが今回のテーマであるオオスカシバやヒメクロホウジャクです。

ハチのように飛び、色合いもそれっぽいなどユニークな見た目もさながらにジェット機のような高速飛行やホバリングまで見られる様はまさに小型ハチドリ。

この時期は簡単に遭遇できますので、ぜひ探してみてください。

都市部で目にするスズメガの仲間

オオスカシバの仲間はスズメガの仲間に所属しています。

オオスカシバに似たヒメクロホウジャク。

身近なものではオオスカシバ、ホシホウジャク、ヒメクロホウジャクが良く目につきます。

今回は主にオオスカシバとヒメクロホウジャクを紹介します。

オオスカシバとヒメクロホウジャク

オオスカシバはクチナシを利用することからクチナシを庭木としてあつかっていたり周辺環境にこの植物が多い場所ではよく目にする種類です。

オオスカシバ(左)とヒメクロホウジャク(右)色味はだいぶ違う

クチナシは自然界ではあまり見かけない都合上オオスカシバの出現というのは実は人間の生活圏に集中しています。

オオスカシバは緑色の体に透明な翅をもちます。

この仲間に共通するのは細いお花に吸蜜に来ること

特技はホバリングと言って空中で停止したかのように羽ばたきながら止まることです。

ホバリングに関しては自然界では結構すごい技であり、一部の鳥やトンボ、アブの仲間などに見られます。

蛾の仲間の中では空中でホバリングするのはこの仲間ぐらいではないでしょうか。

オオスカシバのホバリング。花に横付けするように接近する。見事!

この仲間はホバリングをすることで長い口を花に差し込んで蜜を吸います。非常に見事な技で、昆虫界の忍者のようなしぐさと呼んでもいいのではないかと思います。

オオスカシバを中心に説明しましたが、この仲間には色違いのような種類がいます。

ヒメクロホウジャク。オート設定では羽ばたきが早すぎてぶれてしまう。

それがたびたび見かける茶色い色をしたヒメクロホウジャクやホシホウジャクです。

2種はどちらとも見かけることがあります。それは食草が共通してアカネ科の植物であるためです。

オオスカシバの食草であるクチナシも実はアカネ科の植物なのですが、私的にはヒメクロはヘクソカズラにいるかなという印象です。

アイスクリームのような特有の色合いをしたヘクソカズラのお花

クチナシでホシホウジャクの幼虫を見たことがありません。

食草であるヘクソカズラはあらゆるところに普通に見られる植物です。そのためこれを餌資源とするヒメクロホウジャクやホシホウジャクというのも幅広い場所で目にすることができるんですね。

3種の生活圏は被っているので、お花さえわかればタイミング次第でであるのではないかと思います。

オオスカシバの仲間に遭遇してみよう

地味に人気のあるオオスカシバの仲間ですが、遭遇方法はとても簡単です。

園芸植物にも多いシソ科の仲間がおすすめ

この蛾は非常に長いストローを持っています。これは細長い形をしたお花からの蜜を取ることに特化している形なので、秋ごろに細い花を見ていけばバッチリです。

私的おススメとしてはコスモスのような形をしたキク科の仲間全般やいかにも長そうなシソ科のお花ですね。

園芸のキク科とオオスカシバ。よく目にする組み合わせ。

自然界ではシソ科のメハジキやカワミドリなどシソ科の選択性が高いように感じます。(私の地域での話)

晴れた暖かい日にそれらの花が植えてある花壇で待っていれば飛んでくることでしょう。

珍しい虫ではないので割と目につきます。

もしオオスカシバの仲間が飛んでこない場合には別の虫をサインとして活用してあげるのがおすすめです。

それがハチの仲間ですね。

花粉や蜜が残っていれば虫の滞在時間も長くなる。

ハチも花の蜜や花粉を集めていますので彼らがやってきているお花にはオオスカシバの仲間もやってくる可能性があります。

可能ならば付近にクチナシやヘクソカズラがあると確率は上がります。

例としてメドーセージを紹介しておきます。

この形をしたお花が訪花性昆虫の当たり。

この長いお花はオオスカシバの仲間に高い人気を得ており、9月頃になると大抵見つけることができます。

食事中の彼らは人の気配にも鈍いのでじっくりとホバリングを観察する機会と言えますね。

ハチ擬態?ちょっとヒヤリとする見た目

オオスカシバの仲間の中でもホシホウジャクやヒメクロホウジャクのカラーリングはハチを連想させるものがあるように感じます。

ヒメクロホウジャク(左)とオオスズメバチ(右)飛んでいるとハチと勘違いすることも。

人はハチっぽいカラーリングで素早く飛び、羽音がするものを警戒する傾向にあると感じます。

実際ヒメクロホウジャクが急に横切ると声を上げてびっくりする方や、心の内でなんだ!?と警戒してしまった経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

ハチ擬態なのかの真偽は不明ですが、自然界でオオスズメバチベースの色合いはとても効果があるらしく、カミキリムシの仲間を始め同じ蛾の仲間ではスカシバガの仲間などにハチそっくりな見た目をした種類がいます。

毒もなくとても可愛らしいので秋の観察にとてもおすすめです。

相手をビックリさせるのなら間違いのない戦略と言えますね。


今回はオオスカシバの仲間とそれに似た種類としてヒメクロホウジャクやホシホウジャク、それらの食草の違いなどを紹介しました。

色が違うように見えて実は種類が違うというのは自然界ではよくあることです。その違いが面白い点なのでぜひ観察しやすいこの時期に注目してみてください。

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