人気昆虫の様で何かが違う?
秋の始めとなる今頃になるとバッタ採りの人気が高まりますよね。
トノサマバッタやショウリョウバッタなどの大型種を求めて網を振りいざ捕獲!と網をのぞき込んでみると、ショウリョウバッタってこんなのだっけ?と微妙に違和感を覚える種類に出会うかもしれません。
その虫こそ今回のテーマであるショウリョウバッタモドキです。ある虫に似たことをモドキと指しますが、その代表的な種類と言えるかもしれません。
ショウリョウバッタモドキとは?
ショウリョウバッタモドキはバッタ科ヒナバッタ亜科に所属するバッタの仲間です。
夏の人気種、ショウリョウバッタに似ていることが名前の由来とされていますが、ショウリョウバッタはバッタ科ショウリョウバッタ亜科なので分類的にも違います。
出現時期はおよそ7月~10月頃で、ショウリョウバッタと同時期に出現します。
しかしながら出現環境は異なっており、ショウリョウバッタが芝生などの低いイネ科の草地に現れる一方でショウリョウバッタモドキは背の高いイネ科の草地に出現します。
そのため、モドキと付いていますが生息環境が違うと言えます。
ショウリョウバッタモドキはヒナバッタの仲間に近いとのことで、同種のヒナバッタ系列に近い待機姿勢を取ります。
特に目につくのは足の角度で、ショウリョウバッタがあぐらをかくかのようにどっしりと足を立てるのに対し、ショウリョウバッタモドキは擬態先のイネ科に隠れるようにシュッと足を閉じています。
成虫はイネ科草本を食べ、土中に泡のようなものと一緒に卵を産みます。
ショウリョウバッタとショウリョウバッタモドキ
前述の通りショウリョウバッタとショウリョウバッタモドキは一見似た姿こそしていますが、バッタの仲間としては異なります。
主観的な視点を述べるとショウリョウバッタはオスもメスも色が強く、体はしっかりとした丈夫な印象を受けます。
メスなど明らかに上部な感じで角ばっていますよね。
持ってみると固いことがよく分かるはずです。ショウリョウバッタの♂は♀と比べると小型になりますが、比較的しっかりしています。
一方でショウリョウバッタモドキの方は非常に繊細な体をしています。
色は緑と青に白を加えたようなパステルカラーをしていますし、翅がとても薄く、持つと分かるのですが柔らかいです。
そのため実物を比較するとモドキと言えるか?というぐらいには違う虫であると分かります。
これは生息環境で姿がよく分からなくとも明らかです。
ショウリョウバッタは別名キチキチバッタと言われる程飛ぶときに大きな音を出します。
ショウリョウバッタモドキの飛翔は音はより小さく、静かです。
環境の違いもあるかと思いますが、ショウリョウバッタは低地~低地の移動をしますが、ショウリョウバッタモドキは草本~草本の移動をするように感じます。
脚を折りたたんでイネ科に擬態する傾向が強い分、よりそういう環境に溶け込みたがるのかもしれません。
ショウリョウバッタモドキの産卵
バッタの産卵というのはあまり知られる機会もないですよね。
トノサマバッタやショウリョウバッタなどは土中に泡状の物質と共に産卵します。
今回ショウリョウバッタモドキを捕まえていたところ、容器に産卵した様子が見られました。
卵はよく言われるようにS字に近いうねりを伴っており、私の推測では土の中をかき分けるようにして産んでいるのではないかと思います。
泡の中にはいくつかの細長いものが入っており、これが卵ですね。
今回は本来の環境から隔離してしまったので本来の産卵場所は分かりませんが、背の高いイネ科草本のある土中に産卵していることが予測できます。
ショウリョウバッタモドキはそのもどきの名からショウリョウバッタのまがい物のようにとらわれがちです。しかし、バッタの仲間として亜科レベルで違う点や生息環境の違いなど似ていない多くのことがある点もよく分かりました。
都市部ではやや珍しい虫だと思いますが、こうした似たように見える生き物の違いというのは生き物観察の醍醐味ともいえます。
ショウリョウバッタモドキに関心を持った方はぜひ、知られざる似た虫たちの世界とその多様性の世界をのぞいてみてください。
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