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チョウやスズメバチは汗に来る?人懐っこく飛び回る虫の狙いは水分!

人懐っこい蝶、かわいい?

暑い時期になると一部の蝶を始めとした虫が人の周りを飛び始めることがあります。

山道を歩いていたらクロヒカゲが止まってきた

私になついているの?と種を超えた出会いに一喜一憂と思いきや?お目当てはあなたの水分だったりします。

今回の記事では暑い季節に飛び回る蝶の不思議と、そんな蝶の種類、そして実は喜べない真実をお伝えします。

蝶やスズメバチが周囲を飛ぶ理由

蝶の仲間には吸水という行動を頻繁に取るものがいます。吸水とは文字通り水を吸うことです。

水分に飢えているのでかなり貪欲にくる

人の周囲を飛び回る蝶はあなたから出ている汗の水分を欲しています。

汗には水分以外にも塩分などの成分も含まれています。なので人の気持ち的には他人の汗は嫌ですが、チョウからするととてもいい養分補給場所なのです。



蝶の生態を知る機会というのはなかなかありません。

しかし人は夏に山や雑木林に様々な理由で訪れます。

吸水行動をよく取る蝶とそうでないものがいる

そして自分の周りを蝶が飛んでいることに気づくのです。夏の屋外の活動は近年特に強烈なものになっていますよね。人も動けば汗をかき、水分が欲しくなります。

屋外で行動している蝶も同様に非常に暑いのだと思います。水分があるならばぜひとも欲しいと考えているのでしょう。

屋外で活動していると蝶の給水活動というのは春と真夏にかけて幅広いタイミングで目にすることができます。

もし水を撒ける状況があるのであれば暑い日中に水たまりができる程度に水を撒いてあげると、蝶に限らずハチやアブの仲間などなど色々な生き物がやってくる姿を目にすることができます。

例えばハチ類は庭の水たまりや、メダカの鉢などによく飛来する

ある意味では蝶は吸水をしたい、虫好きならば蝶と触れ合いたいとニーズが一致しています。もし虫が嫌いでなければ腕などに水を撒くことでスキンシップを取ることができてしまいます。

私自身夏に行き倒れかけていた蛾の仲間を拾い、手に水を乗せたところ吸水に成功したことがあります。

テレビなどでも水分不足の動物が人に水を求めに来る場面が感動のストーリーとして放映されたりしますが、昆虫においてもすることは可能です。

生き物が来るとびっくりして人間は払ってしまいますが、こうして寄ってきている蝶の場合には動かずに待機していると手や足などに止まってくる場合も多いです。

手に乗りに来るのは、経験上ヒカゲチョウ系とウラギンシジミが多い

そしてよく観察していれば長い口吻を利用して自身の汗を吸っている場面を観察することができます。自身の体で生態観察を間近に行える非常に貴重な機会です。

次に虫が引き寄せられる汗の成分についてみてみましょう。

花王のHPによれば流れ出たばかりの汗は99%が水分であり、残りの1%が塩分であると言われています。

大塚製薬のHPによればポカリスエット100ml当たりの塩分濃度は0.12gであると言われています。

よく水分に来ているカラスアゲハの仲間

汗は量が少ないのですが、もしも100mlの汗があると仮定すればその塩分濃度はポカリスエット以上に高いと考えられます。(ポカリは塩分だけではないですが)塩分補給の視点から見れば水などに溶けている僅かなNaClを確保していくよりも効率がよさそうであると考えられますね。

昆虫の給水についてはよくわからない部分も多いですが、ミネラルや塩分補給しているとの供述は目にします。どの程度必要なのかは不明ですが塩分を求めるならばよい選択と言えそうですね。

自然界において塩分などは岩石に由来するため、湧き出る水の中などに僅かながら含まれています。

ミネラルウォーターの成分表記を目にすればカリウムやマグネシウムが含まれているのが分かるはずです。



チョウ以外にも汗にやってくる生き物はいる

夏の時期にスズメバチやアシナガバチに追い回された経験のある方も多いのではないでしょうか?

実はスズメバチやアシナガバチなどのハチ類も夏場には頻繁に吸水します。

ハチ類、アブ類は水のまかれた環境に現れてその姿から人を怖がらせる

よく屋外で活動しているとスズメバチの仲間が理由もなく自分の周囲を飛び回ったりしますよね。

これは場合によっては人を警戒している場合などもありますが、自身が下がってもついて来たり、明らかに肌の露出部に近い場合には水分が狙いであると考えています。

ハチの吸水行動については蝶の水分補給と同様に喉が渇いている事例もありますが、ナショナルジフォグラフィックの記事では水と木くずを混ぜることで巣作りに利用したり、打ち水のように撒いて温度を下げる行動を取ることが指摘されています。

巣材に木を利用するスズメバチやアシナガバチにとって水分は生存以外にも必要

昨今の40度近い日本の夏の中で虫たちも生きるための知恵を精一杯利用しているのですね。とはいえ汗を吸いに来たスズメバチを素肌に止めるという行為はさすがに私もできません。がその行動の背景を理解することは重要に感じます。

スズメバチはミツバチによる生存可能な温度の2度の違いを利用した熱処理法が有名ですよね。

スズメバチが絶命する温度は46℃であると言われていますが、この温度は今の日本の夏であれば日のもとにあるだけで簡単に達してしまいそうです。

真夏のコンクリートや砂の上は火傷するくらいに熱い。虫も死んでいることがある

例えば一例として空を飛んでいたスズメバチが真夏の熱せられたコンクリートに落下してそのまま絶命した場面に遭遇したことがあります。

スズメバチは熱にシビアである分水分の摂取にも一生懸命なのかもしれません。翌々考えると樹液なども水分であり、夏は異常なほど木に執着していますよね。もしかするとそんな背景があるのかもしれません。




複雑な事実を知っておこう

スズメバチはご遠慮願いたいところですが、チョウに関してはウェルカムな人も多いのではないでしょうか?

虫好きからすれば蝶はいつでもウェルカムな気持ち

吸水する性質を持つ蝶の場合にはお水だけでなく色々なものから吸水を行います。

例えば果実が分かりやすいですね。夏は多くの果実がなります。それらの朽ちたものや熟したものは吸水する生き物にとってもご馳走です。これはイメージしやすいと思います。


視点を広げてみると自然界ならではの栄養を持つものというものもあります。

フン虫オオセンチコガネ。彼らがいるならうんちが豊富なエリアだと考えられる

それが生き物の死骸や動物のフンです。

生き物の死骸は死後様々な液や肉が分解され腐っていく過程で養分が流れます。

うんちは動物などが食べたものの搾りかすですが、その全ての栄養が吸収されているわけではないのでこれにも栄養があります。

吸水性の蝶というのはこうした循環に帰っていく前の栄養源をよく利用しています。

新鮮な鳥の糞に来ていることもある

例えば人によくやってくるウラギンシジミはウンチでよく目にする代表的な蝶であると言えますね。

真夏にあなたの肌に止まる蝶はもしかしたら直前に死骸やウンチに乗っていた蝶かもしれません。

細菌やウイルスに間接的に触れてしまう可能性があるので一応その点はたまに入れておきましょう。

汗にやってくるチョウの種類について

ウラギンシジミ
♀が白、♂はオレンジ色の輝きを持つ蝶

やや山地よりですが最も身近な身の回りを飛び回る蝶であると思われます。フンや果実などの吸水性も高くつる植物のクズが茂る環境でよく目にします。

ヒカゲチョウの仲間
似た種類が多い。吸水性はそんなに高くない印象

主に暗めな雑木林環境に生息しています。水辺などで目にすることは稀ですが高温が続いたときにそうした山道を歩いているときに汗を吸いに来ました。

タテハチョウの仲間
オオムラサキなどにも吸水性が確認されている。

個体数が平野部では少ないのでロマンの領域ですがオオムラサキが汗に来るようです。きっと類似のゴマダラチョウやアカボシゴマダラにもそうした性質があると思われます。

アオスジアゲハ

飛翔性が強く写真がないのですが、アゲハの普通種の中では吸水性がとても高い種類です。

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蝶についてより詳しく知りたい方は図鑑の携帯をオススメします。私的に最もおすすめな図鑑です。