白いシジミチョウを発見!しかし何か違う!?
初夏にかけては白いシジミチョウを目にする機会が増えます。
多くが草地に現れるヤマトやツバメ、山地のルリシジミなどのですが、もしカブトムシの木であるコナラやクヌギの近くで白いシジミチョウを見つけた場合にはゼフィルスという人気カテゴリーに所属するミズイロオナガシジミかもしれません。
今回は派手さはないもののむしろそれがいいミズイロオナガシジミを紹介し、見つけ方やその特徴などを紹介していきます。
ミズイロオナガシジミとは?
ミズイロオナガシジミとはシジミチョウの仲間でミドリシジミ亜科に所属する蝶です。
愛称としてゼフィルスと呼ばれ、日本では25種類の人気の蝶たちがカテゴライズされています。
体長は同じゼフィルスであるアカシジミやウラゴマダラシジミと比べるとそれらよりやや小さく、ルリシジミの大型と同程度のサイズ感です。
年1化の蝶であり、およそ5月中旬~出現します。出現は私的な観察ではアカシジミなどよりも遅くまで続き遅い個体では7月後半程でも観察したことがあります。
食草はクヌギやコナラであり、雑木林環境で目にします。一方で体色がアカシジミ程派手ではないことから目につく機会はより少ないです。
ミドリシジミ亜科は♂の翅の表側に金属光沢をもつものが多いのですが、ミズイロオナガシジミには♂でも光沢がありません。
(乾燥標本ができたら写真を乗せます)
これは一見すると地味な特徴に見えますが、逆に真っ黒な蝶というのは珍しいため、ユニークな特徴であると感じます。
ミドリシジミ亜科とゼフィルス
アカシジミを始めとする年一化出現のシジミチョウの仲間のことを愛称をこめてゼフィルスと呼んでいる方が多いです。
日本には25種類のシジミチョウが該当することが知られています。
ゼフィルスはミドリシジミ亜科の蝶の多くが該当しているため、ミドリシジミ亜科の蝶はゼフィルスであると思われがちです。
しかしながらこの仲間にはムラサキシジミやトラフシジミ、カラスシジミなどのチョウも含まれておりそれぞれ年複数の羽化や春型夏型があるなどミドリシジミ亜科の仲間にもいろいろといることが分かります。
この違いに関してwebで見られる論文「初心者のためのゼフィルスの見分け方」では「ゼフィルスの前翅第 9 脈は第 7 脈から派生,共通枝は第 6 脈上から分岐するとある.」と指摘されており、標本や表翅の鮮明な写真があれば支脈の6脈と7,9がはっきり繋がっているゼフィルスと、分岐しているトラフやムラサキシジミと分類することができます。
これ以外にもゼフィルスの仲間は種により時間帯を分けてそれぞれ活発に行動する時間が入れ替わるなどの面白い生態も明かされています。
ミズイロオナガシジミの活動特性について
まず私的な観察経験ではこの蝶の観察は下草や下枝などで休んでいる場合を発見することが圧倒的に多いです。
ミズイロオナガシジミを捕まえようと思って探しているときに見つけるのではなく、タマムシの仲間などを捕まえるためにクヌギやコナラの葉先をスウィーピングしているときに網に入ってくることが多いです。
このことから日中僅かな活性時以外は敵に見つからない葉が重なっている場所や、上部が覆われている下草などに潜んでいるのではないかと思います。
この蝶が網に入るときは私自身目視できていないことが多いので、意図的に隠れている可能性が考えられます。
一方で彼らゼフィルス類の活発な行動時間を研究した論文ではミズイロオナガシジミの僅かな活性時間が記されています。
これによれば早朝がより活発で、6~9時までが最初の活動時間帯、次いで14時~16時ごろと記されています。
過去の自分の観察経験を照合すると私のタマムシ採集は午前9時~16時程度に行っていることが多いのですが、午前中9~10時ごろの下草での観察や昼時の下草での観察、網に入るときは目視しておらずうっかり入ることが多いことからも昼時は彼らの活性が低下している可能性は高いように感じますね。
ミズイロオナガシジミの観察に向けて
もしこの蝶を観察したいと思っているならば最も適しているのは早朝の時間帯であると思います。
これは前トピックの論文の通りですね。
一方で平地性ゼフィルスであるアカシジミやウラナミアカシジミなどがミズイロオナガシジミと似た環境に現れることを考慮するとその2種の活動が活発となる夕方ごろの探索もおすすめであると言えます。
16時ごろになると日もかなり傾いており、雑木林の木の密度によっては日照の具合は大きく変わります。これにより夕暮れ時はゼフィルス観察のいいタイミングが訪れることが多いです。
その他のゼフィルスとしてはウラゴマダラシジミやオオミドリシジミがいます。
このうちウラゴマダラシジミの活動時間については別の研究「日本産 ミ ド リシ ジ ミ類 5 種 の 雄 の 活動性 とそ れ に 対す る
照度 の 影響に つ い て」というものの中で調べられており、朝の6時~8時ごろと14時~16時程度で明るすぎない時間帯であることからウラゴマダラシジミの出現パターンと非常に似ています。
ウラゴマダラシジミは食草がイボタノキという低木であるため、クヌギコナラ林の植生に交じっているかは地域にもよると思います。
しかし2種が混じっている場所では同時に観察ができる相性がいいゼフィルス同士と言えそうですね。
オオミドリシジミについてはよくわかりません。なのでこの研究で読み取れそうな傾向の部分を紹介すると、照度が高→低に変化するタイミングでの飛翔が確認されています。
時間については私的な観察経験から述べると曇りの日の10~11時前後で見ることが多いように感じます。
ザっとですが傾向から見たおススメ副産物のゼフィルスを紹介しました。
ミズイロオナガシジミは薪炭林環境のゼフィルスですから、副産物として多くのゼフィルスにも遭遇できる可能性があるのが嬉しいポイントですね。
その中でも出現時間の傾向はおおよそ明らかとなっています。せっかく蝶を探しに行くならば行き当たりばったりも楽しいですが、ちょっと戦略的に探してみるとバチっとはまったときの嬉しさを味わえますね。
ミズイロオナガシジミの特徴について
この蝶を始め白系のシジミチョウをいうのは結構多いですよね。
例えばヤマトシジミ、ルリシジミ、ウラギンシジミ辺りが似た仲間でしょうか。
ヤマトやルリは裏翅にも明確な黒点が散りばめられています。この2種は♂はかなり明るい空色の光沢があります。
ウラギンシジミはミズイロオナガよりもより大型で、♂はオレンジ色、♀は白色の模様が翅の表側に見られます。
ミズイロオナガシジミは模様もこれらとは大きく異なりますが、翅の後ろ側に模様と突起がある点で似ているシジミチョウとはっきり区別することができます。
あとは♂も♀も表が黒い点ですね。
慣れていれば食草の都合と大きさから飛んでいても見分けられるようになります。
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アカシジミはミズイロオナガと同じ環境で見られます。ウラゴマダラシジミはイボタノキという植物依存が強いため、植物からアプローチしていくのがおすすめです。
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ほとんどのゼフィルスには長竿網のような最低でも5m程の網がほしいです。これは彼らが樹冠で縄張りを持つ性質を持つためです。
見れるけれども捕まえられないというのはゼフィルスあるあるですね。
引用文献.長谷川 大. 初心者のためのゼフィルスの見分け方. やどりが第250号(2016).
参考文献 日本産ミドリシジミ類5種の雄の活動性とそれに対する照度の影響について 江田 信豊