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赤やオレンジのシジミチョウ!? アカシジミの観察にはクリの花がおススメ! 人気のゼフィルスを観察

珍しそうな赤色のシジミチョウを発見!?

年に1度の僅かな出現期間が楽しみなアカシジミ

5月の中旬ごろになるとカブクワ目当てに雑木林を歩いたり、心地よい気候のために散歩する機会などが増えますよね。

すると木の上にオレンジ色の大きなシジミチョウの仲間を見つけることがあります。

イメージするシジミよりも一回り大きく、異常なサイズの個体か?と思いきや...? その蝶は蝶好きがみんな大好きなゼフィルスという愛称で呼ばれる蝶の仲間だったりします。

今回の記事では人気の蝶アカシジミとおすすめの遭遇方法や探し方などを紹介していきます。




アカシジミとは?

アカシジミはシジミチョウの仲間でミドリシジミ亜科に所属する蝶の仲間です。

ゼフィルスの名でとても愛されている蝶

体長は翅を広げると3~4cm程もあり、シジミチョウ科の普通種であるヤマトシジミなどと比べると1.5倍位大きさが違います。

幼虫はコナラやクヌギなどを利用することが知られており、それらの高い所の枝先などに張り付いてなわばりを持つという習性が見られます。

これはミドリシジミの仲間に見られる性質の一つであり、テリハリ(テリトリーを張る)と呼ばれたりします。

ミドリシジミの仲間には特に♂の表翅に強い金属光沢があるものも多く、テリハリ時に見せる彼らの美しい翅は多くのチョウ好きをうならせる様だったりします。

クリでテリハリはしないものの、発見は簡単

アカシジミに強い光沢はありませんが、代わりにオレンジ色の翅をもつユニークさを見せてくれます。

アカシジミの出現は年に1回であり、およそ5月中旬ごろ~6月中旬ごろ程度まで目にすることができます。

訪花に関してはクリのお花をよく訪れています。

ミドリシジミ亜科とゼフィルス

アカシジミを始めとする年一化出現のシジミチョウの仲間のことを愛称をこめてゼフィルスと呼んでいます。

ゼフィルスの仲間のウラゴマダラシジミ。こちらも人気が高い。

日本には25種類のシジミチョウが該当することが知られています。

ゼフィルスはミドリシジミ亜科の蝶の多くが該当しているため、ミドリシジミ亜科の蝶はゼフィルスであると思われがちです。

しかしながらこの仲間にはムラサキシジミやトラフシジミ、カラスシジミなどのチョウも含まれており、それぞれ年複数の羽化や春型夏型があるなどゼフィルスの一般的な特徴である年一化とは合わない美麗種もいます。

ミドリシジミ亜科でありながらゼフィルスではないトラフシジミ

このことからも同じミドリシジミ亜科の仲間の中にもいろいろといることが分かります。

この違いに関してwebで見られる論文「初心者のためのゼフィルスの見分け方」では「ゼフィルスの前翅第 9 脈は第 7 脈から派生,共通枝は第 6 脈上から分岐するとある.」と指摘されており、標本や表翅の鮮明な写真があれば支脈の6脈と7,9脈がはっきり繋がっているゼフィルスと、分岐しているトラフやムラサキシジミと分類することができます。

これ以外にもゼフィルスの仲間は種により時間帯を分けてそれぞれ活発に行動する時間が入れ替わるなどの面白い生態も明かされています。


アカシジミの観察できる環境と時間帯

蝶の出現に大きく影響を及ぼすものとしては食草が挙げられますね。

クヌギやコナラが多数ある雑木林に普通に見られる

前述の通りアカシジミはクヌギやコナラなどの樹木を利用します。なのでそれらの多い雑木林環境に足を運ぶことで遭遇することが可能です。

私的にはゼフィルスの中でも特に遭遇しやすい種類であると感じており、立派に育ったクヌギやコナラでもしっかり利用してくれる点が大きいのかと感じますね。

ゼフィルスは多くがブナ科樹木を利用しますが、ウラナミアカシジミのように萌芽更新された若芽を好むような種類もいます。

下枝やヒコバエについていることもある

コナラなどの燃料としての薪炭林の管理が放棄されるとともにウラナミアカシジミは目にする機会が大きく減ったように感じます。

一方で大木でも大丈夫なアカシジミは毎年安定して目にすることができますね。

アカシジミに関しては活動時間に関する研究が見つからなかったため、実体験をベースに話します。

これくらいの薄暗さの時に活発に飛んでいる印象が強い

アカシジミは夕方日が傾き始めると活発になる印象が強く、17~18時くらいに目にする機会が多いです。

しかしこれは晴れの日の場合であり、例えば山の影となる場所であればより速い時間に動き始めていますし、天気が曇りであれば午前中などにも動き回る様子を見たこともあります。

日が落ちかけの頃合いがベスト。しかしあくまで傾向であることに注意。

この天気の具合による変化が彼らの限られた出現期間のピークとなる梅雨と合わさり観察を難しいものにしているように感じますね。

夏にカブクワを採集するような場所に5月の中下旬頃、できれば夕方ぐらいに足を運んでみると木の高い所を飛び回るアカシジミを目にするはずです。

また、アカシジミやミズイロオナガシジミで度々遭遇するのですが、朝に下草に止まっている場合があります。

木々の下枝や、下草についていれば特有の色合いでかなり目立つため、探してみましょう。

栗の花など密集しているので網で叩いていると飛び出てくる

もし網などがあるならばゼフィルスの仲間は樹上でテリハリをしているorどこかで休んでいる場合が多いので木を叩いてみると飛び出てくることがあります。

気配が無くてもいることは多いので、諦めずに探しましょう。



楽に見つけるならクリの花を狙う

アカシジミなのですが私の観察地域ではクリの花の選択性がとても高いです。 

アカシジミといえばクリ。クリが咲くとアカシジミが連想される。

クリはクリ園の減少などによりまとまってみられる場所が減ってきていますが、それでも自生しているクリなどは雑木林には多いです。

アカシジミの出現ピークとなる5月下旬頃狙ったように同時期に咲くクリの花を訪れてみればアカシジミがいるかもしれません。

写真が取り放題。

蝶の仲間は食事中はとても大人しくなる傾向が見られます。そのため観察にはうってつけのポイントとなるのです。

クリの花は1年の内1週間ほど、アカシジミは1月程の僅かな発生期間ですが、それらが見事にマッチしていますね。



このようにゼフィルスの仲間は他の蝶には見られないユニークな特徴がたくさん見られます。

そのため、遭遇するには種を先に認識して見つけたい種を探していくアプローチが必要ですね。年に僅かな彼らの出現期間、狙って出会えればかなり嬉しい蝶なのでぜひ探してみてください。そして彼らがかつての里山環境に生息していた身近な蝶であったことも理解してほしいですね。

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ほぼ同じ時期に現れるウラゴマダラシジミ。食草がイボタノキというマイナー種であるため、この種を探さないと出会えないいいゼフィルスです。

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ゼフィルスは標本人気も非常に高い種類です。展翅がかなり難しいですが、美麗な姿をずっと残せるのは地域資源の情報としても重要です。
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ゼフィルスの採集には長い網が必要な場合が多いです。

引用文献.長谷川 大. 初心者のためのゼフィルスの見分け方. やどりが第250号(2016).