美麗な小型タマムシ、クロホシタマムシ
日本には多くのタマムシが生息しています。その中でもクロホシタマムシやマスダクロホシタマムシ(写真)は小柄ながらヤマトタマムシ以上の美しさがある非常にいい虫です。
タマムシに興味の有る方にはヤマトタマムシの次のステップとしてクロホシタマムシ探しに挑戦してみるのがおすすめです。
小型の超美麗種クロホシタマムシとは?
クロホシタマムシは日本の山地で見られる1cmちょっとの小型タマムシです。発生時期は5月上旬~遅いものでは8月頃まで見られます。
体色の変化が個体によって大きく、出始めの初夏は赤色の傾向が強く、夏に進むに連れて緑色が強くなっていきます。
枯れたばかりの新鮮なクヌギやコナラの木にやってくるので、通常は伐採木置き場などで捕まえることになります。
しかし今日紹介するのは別の捕まえ方です。
クロホシタマムシの習性を利用した捕まえ方
クロホシタマムシは前述の通り新鮮な伐採木に集まる習性があります。そこで利用するのが近年神奈川県で猛威を振るっているナラ枯れです。
ナラ枯れはキクイムシという昆虫がブナ科樹木に入り込み、やがて木を枯らしてしまうという現象です。
これにより様々なところで立ち枯れが発生しています。
被害を受けた木はこのように夏頃に葉が茶色く変色します。
これを目安にし、幹を眺めていると実に様々なカミキリやタマムシなどの枯れ木産卵性の昆虫を見ることができます。
クロホシタマムシは枯れ木に来ると茶色い樹皮に対し緑色の光沢を放つため、非常に見つけやすいのです。
枯木があり、ほどよい日当たりの有る幹にやってきているようですね。ひたすら幹を眺めてみましょう。
緑色に誘引される一部のタマムシたち
山地のクヌギやコナラの立ち枯れ木を見て回る。字面では楽そうですが、とにかく首に負担がかかります。
虫はたくさん見つかるのですがとにかく肩が凝ります。そこでおすすめしたいのが緑色の捕虫網を利用(明るい緑ならなんでもいい)する方法です。
タマムシ採集をする人はこうした釣り用たも網に緑ネットをくっつけて長い網を持ちます。
理由は不明ですが、クロホシタマムシなどの一部の種類が緑色に好んでやってくるのです。
このように枯れたコナラにネットを立てかけて放置します。数分様子を見て網にクロホシタマムシがついていないかチェックします。
これを繰り返すことで今回のクロホシタマムシが取れました。
クロホシタマムシは産卵のためにコナラにやってきます。
5月頭はまだ発生し始めの時期なので、枯れ木への産卵には5月中下旬頃からが適期でしょうか。
今年は5月~6月に多数見かけました。
枯れ木に網をかけて、別の木に移動してを繰り返します。
枯れ木の虫でタマムシが来る鮮度が分かる
これはあくまで神奈川西部の話ですが、ここではいい枯れ木かどうかの判断に写真のクビアカトラカミキリが役に立ちます。
クロホシは累計10程度見ていますが、私はその判断にこのクビアカを利用しています。
数は少ないですがクロホシが来る木にはムツボシタマムシも見られます。こうした虫のセンサーをうまく利用していい木を見つけましょう。
立ち枯れの鮮度について
ナラ枯れに関しては枯れてからの鮮度があります。
5月、6月頃に枯れはじめの兆候(葉が緑→茶に変わる)が見られ、衰弱し始めた新鮮な立ち枯れ木が最もいいです。
逆に去年枯れた、一昨年枯れた様な木は来ないわけではありませんが、カミキリやタマムシの仲間は少ない印象です。
新鮮な立ち枯れ木をどう見つけるかが勝負ですね。
同じように網を立てかけると10秒ほどでネットに近づく虫が見えました。
5月頭の早い時期にも関わらず、早くもクロホシタマムシを捕まえることができました。非常に可愛らしいですね!
この個体(左)は初夏なのでオレンジ味が強く、昨年であった子(右)とはかなり印象が異なります。
しかし美しいからと乱獲は厳禁です。 立ち枯れに来ているのは産卵に来ている個体の可能性が高く、彼らを取りすぎることは次世代のクロホシタマムシを減らすことと同義です。
幸いにも小さい虫なので、知らないと取ることができない虫です。また、ここでは3年前からナラ枯れが発生しているので、エリア全体で立ち枯れが増加して個体数は増加傾向に有ることと思います。
神奈川で増加しているナラ枯れを背景に繰り広げられる枯れ木産卵性昆虫の観察機会の増加は非常に楽しいものです。
ナラ枯れが落ち着くとクロホシタマムシに遭遇するのは結構難しいと思いますので、美しい虫が好きな方はこのタイミングでぜひ捕まえてみてほしいと思います。
クロホシタマムシ。最高の虫ですよ。
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王道のヤマトタマムシ採集も挑戦してみてください。
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ニッチだけど美しいナガタマムシ類の採集もオススメです。