秋の鳴く虫、声は聞こえても姿は見えず
主に夏頃~遅いと冬頃まで身近な場所でも「鳴く虫」の声を聴くはずです。
チンチロチンチロリンちろりーんなどでおなじみの彼らの声は鳴き声と姿が一致しなくとも我々の耳には馴染みの深いものです。
しかし声は聞くものの姿を見ることはあまり多くはありませんよね。
今回の記事では声は聞こえるのになぜ姿を目にしないのか?という疑問と長期間声を聴くことができるカネタタキを紹介します。
鳴き声は聞こえるのに姿が見えない理由
これはシンプルです。
特に町中で目にする種類においては鳴く虫の大きさが小さいことと、体色が緑色をしているため樹木や草地にいてもわからないのです。
身近な代表種を上げるならば夏の初め8月下旬頃からサクラなどで大合唱をするアオマツムシが分かりやすいでしょう。
アオマツムシはかなり大型の鳴く虫ですが、これも姿を見るのは大変です。
体が緑で薄く、大きく高い音を出すためによく反射するので音の発生源がわからないのです。
大型種であれば見つけるのは簡単なのですが、2~3cm程度の鳴く虫や1cm以下の鳴く虫を見つけるのはかなり難しいのです。
鳴く虫とは?
鳴く虫についてピンと来ていない方もいるかも知れません。
鳴く虫というのはいわゆるバッタの仲間です。
主に草地生のものと樹上性のものがおり、生活圏は分かれているというのがフィールドでの印象です。
代表的なもので言えば草地のスズムシ(リーンと鳴く)が挙げられるでしょう。
夏になるとホームセンターなどでも目にするスズムシは自然界では草地の現象により個体数を減らしています。
ここ神奈川ではレッドデータリストに乗っています。スズムシは小型の虫ですが、大声で鳴きますよね。
しかしススキなどの枯れ草が覆う下草に生息しているためその姿を目にすることはかなり厳しいです。そういう生存戦略なのだと思います。
樹上性のものというのはウマオイ(スイッチョンと鳴く)などが代表的で、夜行性の傾向があるのでクワガタ採集などをしているとよく目にしまう。いずれも自然の音として古くから楽しまれている鳴き声ですね。
秋に良く鳴くカネタタキとは?
カネタタキは大きさが1cm程度の小型の鳴く虫です。
鳴き声はかなり高いチッチッチというもので、町中の植え込みや低い街路樹などあらゆるところで声を聴くことができます。恐らく100%の人がこの虫の声を聞いていると思います。
出現時期もかなり長く、9月頃~12月頭頃まで毎日声を聞くことができます。
体色は茶色みを帯びた色をしており、♀の翅が退化しているという特徴があります。
このことから定住型の昆虫であると思われ、一度カネタタキが発生した場所では毎年その鳴き声を楽しむことができます。
文字の都合上鳴き声は届けられませんが、「この声がカネタタキか~」と納得する声をしています。
食性は雑食性ですが、コオロギなどと同じく動物質を与えないと死んでしまいます。生きている虫を食べるのか、死んだ虫専門なのかは不明ですが、類似のコオロギは掃除屋としての側面があるのでカネタタキも自然界のお掃除やかもしれません。
カネタタキの面白さ
カネタタキの鳴き声を把握してみると庭木があるようなあらゆるところでその声を聞けることに気が付きます。
しかしいざ探してみるとこれが本当に見つかりません。これこそ翅を退化させてまで身につけたカネタタキの生存戦略であると思われます。
カネタタキは1~2m程度の低木を好むのですが、葉の密度が高い場所にいることが多いです。
ものの密度が高いと彼らの高い音は非常によく響き、目の前にいるはずなのに音が正面180度全てから聞こえるように錯覚します。
加えて翅が退化していることからも分かるように飛翔したりするよりも茂みに隠れたり葉裏に潜むことを得意とする虫です。
ものの気配を感じるとすぐに隠れてしまい、彼らの姿を目にするのはとても難しいのです。
これらの理由と、そもそも鳴く虫を捕まえようという気になる人がそもそも少ないのでカネタタキは声は聞こえても姿の見えない虫なのです。
秋の夜にチッチッチという鳴き声を耳にしたらぜひその出処を探してみてください。
恐らく突き止められないはずです。これこそ♀に自身の存在をアピールしつつ身を守るカネタタキの技なのです。負かされた気分になってとても面白いので是非挑戦してみてください。