蓼食う虫も好き好き

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神奈川県のクマガイソウ

超希少植物クマガイソウ

ランの仲間は盗掘を始め、土地の開発などによりどんどん数を減らしています。神奈川県レッドデータ植物編は2022年に更新が入り、2006年度は絶滅危惧1B類だったものが22年には2類に分類されており、徐々に増加してきているようです。

こちらは神奈川県西部エリアに存在していたクマガイソウです。クマガイソウは竹林や杉林などの直射日光が差し込まない林床に生えていることが多いようで、このエリアももともとは竹林でした。
しかし竹の干ばつが入ってしまったようで、直射日光に照らされるようになってしまいました。

屋外で見かけるランの仲間は、今や貴重すぎてそれが自生のものなのか園芸由来のものなのかは分かりません。しかし本来存在するような環境下でこうした貴重な植物を見かけると真相はどうであれとても嬉しくなってしまいます。園芸種にタイワンクマガイソウというものがあり、それはガクの部分が白系の傾向があるため、こちらはクマガイソウでしょう。


自然界でこれほど特徴的な花は見たことがなく、その色合いも目玉のようなユニークな形もとても魅力的だと思いました。
ランの仲間は土壌中の菌類と共生しており、移植してもうまくいかないケースが有ると聞いたことがあります。
結局は日焼けして枯れてしまいそうだったので、地域の博物館に引き取って頂く形となりました。

山野草は自然の中で遭遇するのが一番美しいと私は思うのですが、その環境を維持し、花が咲き続けられるよう理解してもらうのはかなり難しいように思います。結局この花を見た年を最後にここのクマガイソウは姿を消してしまいました。竹林林床に生えていたクマガイソウに直射日光は厳しすぎたのでしょう。今回は記録として残せましたが、こうして知られずに消えている植物は多いでしょうね。


クマガイソウは地下茎を伸ばし株数を増やしていきます。盗掘などの人の被害がない環境では高密度で生息することができ、見事な姿を見せてくれます。それ以外にも結実率は悪いのですが種もつけます。エビネなどもそうなのですが1つの実に含まれている種数は非常に多く、風散布により広範囲に種をまけます。しかしランミモグリバエのようなラン科の実を専門に食べるハエなどの天敵もおり、盗掘と相まって厳しい状況なのです。

こういった事情の中でレッドデータのランクが下がった情報は非常に嬉しいですね。保全されている地域ではちょうど4月下旬ごろからクマガイソウの可愛らしい花を見ることができます。一見する価値がある植物なので、ぜひ見てほしいですね。