春にだけ現れる貴重な蝶が今なら見られる
神奈川県西部に位置するあいかわ公園ではミツバツツジが見頃を迎え、それに合わせて一年の中でこの時期にしか現れない希少な蝶が出現しています。
蝶好きの方からとても人気が高いコツバメです。一年のうち3~4月のいわゆる虫取りの時期とは異なる時期に出現する蝶であり、その存在を知らなければまず出会うことができない大変貴重な蝶です。
神奈川ではコツバメ、ミヤマセセリ、ギフチョウの3種が春の妖精(スプリングエフェメラル)の先駆けとして出てきます。
コツバメは出現が3~4月で探すとなかなか見つからない種類なのですが、ここあいかわ公園ではその姿を簡単に見ることができます。それは食草となるツツジが45000本も生えているからです。
コツバメがポンポンと見つかる環境はなかなか無いでしょう。この日は園内を一周すると5~6匹ほどのコツバメに遭遇することができました。
ツツジの花と蝶
ツツジの花は春の昆虫たちにとって貴重な餌場となります。
公園のツツジは毎年ベニバナアセビの開花から始まり、3月の中頃にはそれを餌とするコツバメが出られ始め、4月下旬頃まで出現します。
ベニバナアセビの花は下向きの形をしており、見ての通り壺型の形をしています。これは蜂などの大型昆虫に花粉の運搬を頼る花に見られる形であり、ある程度の脚力を持った虫に来てもらえるよう花が仕向けています。
ツツジの仲間も同様です。ツツジの花は5枚の花びらがくっついた姿をしており、底が深い形をしています。
花の底に蜜をためるので、この蜜を味わうには口が長い蝶やハチ類やアリなどの花の奥に入れる生き物に来てもらい、花粉を運んでもらうわけです。
そのため、春先に現れる昆虫というのは貴重な蜜源にアクセスするために長い口を持ったものが多いのです。例えば春先のツツジに来ている虫として見かけることが多いのは
いずれも長い口を持ち、春先に現れる植物の細長い形をした蜜を食べることに適した形をしています。
花は昆虫に受粉を頼み、虫はライバルが増えても花に合わせた口を取ることで競争に勝ちやすくなり、餌にありつきやすくなるという見事な関係ができています。
コツバメの希少性
コツバメに話を戻しましょう。この蝶の発見の難しさは食草の密度にあると私は思います。食草がツツジに限られ、出現が3月中旬となると幼虫の餌となる葉はあれども成虫の餌となる花がない。オオムラサキツツジのような植栽された品種が偏る町中では、葉は利用できても生きていくための蜜源がないのではないでしょうか。
その点あいかわ公園では2月下旬からベニバナアセビが咲き、そこから5月中旬までツツジの花は尽きません。幼虫~成虫までの資源が絶えずあることで、ここまで多くのコツバメを観察することができるのでしょう。晴れた風のない日には園内を歩いているだけでポンポンコツバメを発見できるため、コツバメ観察がしたい方にはとてもおすすめです。