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シンジュサンを求めてオールナイトライトトラップ採集

憧れのシンジュサン

ヤママユガの仲間は色彩の多様さとその大きな姿、季節性、可愛さなどにより大変人気の高い昆虫といえます。

ヤママユガの仲間の中でも遭遇機会の少ないシンジュサンという蛾。

私自身もメジャーどころには出会えているのですが、唯一縁がなかったのがシンジュサンという種類です。

特に関東においてはあまり多い種類ではないのか自然が豊かな場所でないといないのかなかなか目にすることがなく、夜間の活動をしていてもこれまで出会えることがありませんでした。

そんな期間が長い間続いていると対象へのあこがれは強くなっていき、いつしかシンジュサンを求めて採集へ行かねばという気持ちになってきます。

そしてついに今年はライトトラップを導入したこともあり、いよいよシンジュサンへ挑むタイミングが来たかと意を決して、彼らの活性が高い時間を狙い撃ちしたオールナイト採集を行ってきました。

梅雨時の微妙な天気でもいくしかない

シンジュサンは主に6月ごろに第一化の個体が、8月頭頃に第二化の個体が出てくると考えられています。

蛾を始めてみると各月探したい虫が多くてほかに手が付けられない

遭遇することを考えるとどちらのシーズンも狙うのが確実なのは間違いありません。

しかし6月には厳しい条件があります。それが晴れ間が少なく、一日の中でも天気が割と変わってしまうことです。

ライトトラップをするには月齢の条件もありますので、月の中でいい時期というのが決まっています。

それに天気、休日、虫仲間などの日程が絡むと行ける日というのはかなり限られてしまい、多少天気が悪くても行かざるを得ないかなというのが悲しいですが現実です。

虫仲間とワイワイやるライトは楽しい

加えてシンジュサンは真夜中に飛来するというのが通説とされていますので、深夜帯までやるということはもはやオールに近いような採集になってしまいます。

負担も大きく大変な相手。これは厳しい戦いとなりそうです。

虫仲間たちに声をかけ、シンジュサンを狙いたいと考えているものたちを招集し、今回はオール3人途中参加1名のメンバーでライトトラップのワイワイした空気感を満喫しながらシンジュサンを狙います。

涼しいぐらいの気候の中で

当日は6月の上旬と中旬の切り替わり位で当地においてはシンジュサンには少し早いかもしれないぐらいのころ合いです

ヒメトラガだったかな。今回のライトトラップは虫も多く賑わっていた

今回は相棒の今峰製HIDライトとそれに利用できるポータブル電源をアップデートしておりまして、低Wであればオールナイトも行けるぐらいの十分な量のものを積んであります。
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併せて重量も非常に強烈で、総重量で言えば10kgを超えるぐらいの物量です。

しかし憧れのシンジュサンをこれで狙えるならばよいでしょう。

さらに春楽しかったライトが一晩中炊けてしまうなんてワクワクが止まりません。

虫仲間と合流し現地を目指します。

ここ最近は台風通過の影響で記録的な低温が続いており、数十年ぶりに夏日を記録しない最長記録が更新されたとかなんとかだそうです。確かに寒いです。

ナシイラガ。イラガの仲間なども少ないながらやってくる。

気温が寒い日が続いているので、シンジュサンの発生が例年通りぐらいに落ち着いてしまっているのではないかと心配します。

加えて山中は霧というか靄が出ており、果たしてどうなってしまうやら。

先行きが読めないこの梅雨時の挑戦には、時には今日は辞めたほうがいいんじゃないかと思えるぐらいの不安が募りますね。

日没後にライト点灯

日が沈むと同時にライトを点灯します。日没直後は風も寒くなっており、この夜で一番寒いタイミングでした。

寒さ対策は多めに着込めるぐらいでちょうどよい感じ。あれより冷えてたらまずかった。

点灯しても虫が来る感じはなく、春先の方が蛾類の飛来が見込めるかなというぐらい虫が来ません。

梅雨時といえば虫たちは最もよく出てくる時期なのですが、気温が数度違うだけでもかなり虫の活性が変わってしまうのだなといい経験になりました。

しかし30分もすれば風向きが変わり、風には暖かい感じが出てきます。これを皮切りに蛾類が一気に飛来するようになりました。

種名はもちろん、科レベルでも分からないものがたくさん。学びの時である。

種数も多く、撮影している虫仲間の撮影が追い付かないほどです。

今回はそうした事態を想定して耳栓を持ってきました。

蛾類が耳の中に入ってしまうと渋滞な事故となります。

ミクロレピや写真下部のホソバ系が多く、隠れる様な挙動を取り危険。

これを防ぐためですね。結果的には正解だったように思います。
まず飛来してくれたのはハネナガブドウスズメ。春に続き賑やかし担当の大型種です。

今日はスズメガの仲間は良く飛来し、種名を上げるとハネナガ、コ、ウンモン、モモ、クチバ、エゾシモフリ、エビガラなどです。

クロホウジャクらしき仲間も多数飛来

時間帯によりスズメガの飛来の感覚は異なっており、甲虫と違い網羅的にやるには夜間長くライトを焚く必要があると感じられました。

逆に言うと夜中中時間の経過とともに飛来する種類が変わる感覚があり、飽きずに楽しめるのが蛾類のいいところといえるかもしれません。

さて、点灯直後が我々ももっともテンションも高くなりますので、飛来してきた蛾へのリアクションもいいものとなります。

カレハガの仲間のギンモンカレハ。なかなかに綺麗。

ギンモンシャチホコの小さいような奴や造形に優れたシャチホコガの仲間らしきもの、緑色の配色を持つ美しい蛾やゴマケンモンみたいな地衣類擬態の美麗種、ミクロレピの種名は分からないものの美しい色合いに幕を見ながらこれもいいあれもいいと時間が溶けていきます。

キクビゴマケンモン。地衣類擬態のいい蛾。

密かに集めているアオシャクの仲間に体系が特徴的なイラガの仲間、ゴマダラエダシャク系のマーブル模様が美しいものに時折ロケットのように突撃してくるホウジャクの仲間。

次々に出現してくる魅力的な蛾の仲間たちに圧倒されつつもそのガたちの多様性を満喫します。

春のライトトラップも楽しいものでしたが、虫たちも元気にたくさん出てくるこの夏の前の季節のライトトラップは、虫好きが一度は夢見る虫まみれになれる光景ですね。

当然我々のテンションも蛾が来るたびに上がり続けます。

大量に来るホソバの仲間

密かに甲虫類の飛来もあるのではないかなと期待していたのですが、クワガタの飛来はなく、シデムシ類が少々とキマダラミヤマカミキリが来たぐらいで甲虫類の飛来はありませんでした。

ほぼすべてが蛾なのですが、その代わり蛾類がとにかく多く飽きが来ません。

大型蛾の出現

日没から点灯しあれよあれよという間に時間は溶けていきます。

トガリバの仲間らしきもの。色々な種類が幕に混じっている。

大型蛾はせいぜいスズメガの仲間が来ているぐらいで、オオミズアオを始めとしたヤママユガの仲間は来ていません。

とはいえスズメガの仲間が時折顔を見せてくれるため、意外と新鮮な気持ちでライトを観察することができます。

同行のAさんは蛾類の写真を撮り続けていますが、いよいよ撮影が追い付かないとうれしい悲鳴を上げています。

時刻は23時を回るころ合い。時折霧が出て来たりして自然の変化も楽しみながらライトに来る虫たちを待ちます。

樹液の木を見ていたらキノコゴミムシを見つけちゃったり。

この後の真夜中のヤママユのピーク時間にお目当てのシンジュサンは来てくれるのか...

まだ出会ったことがないからこそ期待と不安を胸に彼らの出現に期待します。

今回のオールメンバーは3名いるのですが、皆シンジュサンと出会ったことがありません。

そんなわけで各々忙しいスケジュールの中この春型の出始めと思われる時期にシンジュサンに出会うことを夢見てこのライトのもとに募ったのです。

エビガラスズメ。腹部がエビみたい。

このライトに集まるものたちもみなかなりの虫好きということで、そんなメンバーが揃えば待ち時間は虫トークまみれです。

蛾類は時間とともに体感できるぐらい飛来する種類が変わり、それを見ているだけでも眼福です。

そんな中ライトの光軸には青白い蛾の姿が!

珍しくはないけれども来てくれるとうれしいあいつが来たようです。

そいつはライトの光に反応しつつも消え、それをひたすら繰り返して1時間ぐらい経ったでしょうか。

飛来の時は訪れました。

珍しくはないけれども見つけるとうれしい不思議な虫

オオミズアオですね。

23時ぐらいに飛来し、この後計7~9匹ぐらい飛来しました。

オオミズアオが飛び始めたということはいよいよヤママユガの時間でしょうか?

色合いが鮮やかなウンモンスズメなど

この深夜帯からは飛び始めているスズメガの種類も変わってきており、モモスズメや、クチバスズメ、エゾシモフリスズメなど大型種が頻繁に飛来するようになり、ライトの前の我々もスズメガを発掘して楽しめます。

スズメガも違いがあっていいなぁと思いつつ、後程合流した仲間が持ち帰りたいとの話であったのでいろいろと〆たものを観察していくことにします。

大型種のエゾシモフリスズメ。

この真夜中の時間帯はシンジュのベストな時間ではあるものの非常に濃い霧が発生してしまい、ライトの光は短距離で拡散してしまいます。

一方で明かりがかなり広範囲に拡散しているようで霧が出ていても新顔は幕に来ていることがよくわかりました。

後翅を前に突き出して静止するエゾスズメ。

時間の経過とともにエゾスズメやエビガラスズメなどこれまで見ていなかったメンツまで飛来してきていたのです。

霧は長距離照射的にはNGなのでしょうが、照射場所によってはあまり影響がないのかもしれませんね。

霧間に現れる大きな影

時刻は1時。

景色も霧に覆われ、拡散するライトの光で視界は取れないけれども明るい雲にでも覆われたかのような不思議な空間の中に我々はいました。

とてもじゃないが何が来ているのか把握しきれない

霧の出現で湿度が上がったのか、深夜帯で出力を上げたからかライトトラップはえらいこっちゃになっており、とてもじゃないですが来ている蛾を一種一種調べるなんて余裕がありません。

当然色味がよいものやスズメガのような大型種に注目が集まります。

スズメガも面白いものだなと。展翅して魅力が増えるように思う。

スズメガを集めている仲間が種の違いを紙に乗せて観察しているので、他のメンバーとともにスズメガの模様や色合い、大きさの違いなどについてじっくりと観察します。

その時です!

背後の空間で下から飛び出てくる大きな蛾の姿が見えたような気がしました。

春のライトトラップで視界に急に現れたイボタガのようなサイズ感があり、茶色をしているような、少なくとも今日まだ見ていない大型種の雰囲気を感じ取りました。

色々な蛾を今日は見てきたが、明らかに大きく、羽ばたきが強い。

現れて消えた蛾のいた空間を見つめ、今のは...なんだ?まさか...?

他の仲間はライトに対して背を向けており、この状況に気が付いたのは私だけのようでした。

そして再び現れる茶色い大きな蛾。その正体は飛翔の段階でも分かるほどに明らかでその姿を見た時にはこう叫んでいました。

「来た!シンジュサン!」

オオミズアオとは全く異なる緊張感が走る!

この言葉を発した瞬間に虫仲間二人は即座に網を取り、臨戦態勢に入ります!

素晴らしい反応速度に私がライトで照射アシストをし、捕獲を試みます。

この瞬間のわくわく感ときたらたまらないもので、きっとほかの二人も同じだったのでしょう。

真夜中に向けてたまった期待のボルテージが解き放たれる!

目に捉えているのは目の前にいる何百の蛾の中でただ一つでした。

虫屋の一人がライトで空中を舞うシンジュサンを器用にキャッチ!

その瞬間我々3人とも

「いよっしゃー!」
「きたー!」
「やったぁぁぁぁ!」

と勝利の雄たけびを上げてしまったのでした。

待望のシンジュサン。期待を上回る造形美に感動。

シンジュサンを求めて集まった仲間たちとともに初のシンジュサンの姿を堪能します。

この瞬間、最高でしたねぇ。深夜飛来だからこそ遅くまで粘らなければならない。そして深夜になったからといってくるとは限らない。

そんな期待と不安が蓄積していって捕まえた瞬間に爆発したようでした。

時期的には早いかと思ったが擦れ始めている

そんなシンジュサンの姿がこちらです。

素晴らしい造形、素晴らしい模様。自然の芸術とはまさにこのことでしょう。

かなり蛇である

翅の先端には蛇擬態といわれる美しい模様と湾曲した造形が見られ、体にある三日月のような模様も美しいですね。

そして時期的には羽化直後が狙えるかと思っていましたが、早くも擦れています。

3人ともこの飛来でアドレナリンがドバドバであった。

台風前の高温期にはもう出ていたのかもしれませんね。

撮影タイムを終え、この一連のシンジュサン捕獲タイムの興奮を仲間たちと振り返ります。

真夜中の来訪者

シンジュサンの飛来はやはり深夜帯でした。

もう今日の勝利は確定である。ウイニングランを突き進め。

濃い霧が出ていますがそれでも問題なく飛来したことを見ると、やはり空間を飛翔する時間になったのかなと思います。

ということで追加に期待しつつ我々のテンションはぶちあがってしまったので、もうお腹が空くことすらなくライトに食い入るように楽しんでしまいます。

今日のライトトラップ飯はカツサンド。食事は多めに持っていこう。

正直なところこの深夜帯の面白さは異常でした。時間が飛ぶように過ぎていくのはさすがでしたね。

この時間に初めて飛来したエゾスズメの静止時の格好良さに見惚れたり、ライトにひょこりとテンが虫を食べに顔を出したりと色々なことが起こりました。

エゾスズメの飛来は深夜帯なのか?

シンジュサンの飛翔はいつまで活発になるのか?疑問を持ちつつも晴れない霧の中で彼らの飛来を待ちます。

そしてその時はすぐに来ました。

また同じようにシンジュサンらしき蛾が下からふわっと舞い上がってきたのです!

再び発見したのは私となりましたので、シンジュ来た!と告げると、やはり一瞬で臨戦態勢に入る二人のメンバーたち。

再び現れるシンジュサン。短時間に飛来し、これは時間が来たのか!?

頼もしすぎます。戦国時代ならば歴史に名を刻んでいたかもしれないぐらいの血気盛んさです。

しかしこの相手も一筋縄ではなく、二人の網をうまく潜り抜けて翻弄します。

二人の虫屋相手にここまで戦い抜くとは、おぬしもやりおる。

しかし勝負はあっけないもので、地面に降りたタイミングで確保します。

このシンジュサンがすごすぎました。

目を奪われる美しさ。鱗粉の厚みが恐ろしいほど違う。なんだこれは?

羽化直後の完品というのにふさわしいほどのものであったのです。

我々は最初に少し擦れたシンジュサンを見たおかげで2匹目の完品を見て思わず息をのんでしまう美しさにまた感動することになります。

2種の比較。同じオスなのですが、色味が別次元です。

鱗粉の乗りが凄すぎる!まるで中央にかけて立体的に盛られているかのように錯覚してしまうほど厚い鱗粉の層が残っています。

ヤママユガの羽化直後はこんなにも違うのかと1匹目には悪いですが比較してしまいました。

ただ、感動で言えば初回の個体にはやはり勝てません。

どちらもベクトルが違う良さがありましたね。体験や感動という意味では1匹目のものはもう突き抜けており、あの瞬間は忘れられそうにありません。

飛来の感動で忘れないものと個体の美しさで忘れられないもの。

そして2匹目は個体としての美しさです。

シンジュサンってこんなに綺麗なんだと本当に思いましたね。

1匹目から30分後程度に飛来し、我々は現状シンジュサンは深夜に飛来するという説を信仰しています。

その後もライトを焚き続けますが更なる追加の飛来はなく、今晩のシンジュサンオールナイトは2匹の成果となりました。

こんないい個体が来てくれたので大勝利といえるでしょう

オールナイトといえどもライト前であまり動かないからか疲労感もそこまで強いものでもなく、飛来する蛾類が時間とともに大きく変化することから退屈することのない一瞬のオールナイトとなってしまいました。

ライトトラップおそるべし。

下山途中にはまた無理をしてでも集まりたいですねという話が出たり、ライトの最後まで皆テンションが高く採集を続けていた辺りに今回のライトトラップがいかに楽しく、あっという間のものであったのかが現れていたかなと思いますね。

深夜飛来のため、覚悟を決めてライトをやらねばならない。そして真夜中に飛来するその姿は、虫好きならば体験するか価値が大いにあるといえる。

今回はシンジュサンは他メンバーに譲ったので、また私もオール採集に繰り出して自分の個体を確保しようかなぁと思います。

でもどちらかというとライトを焚いてワイワイしているあの空間が好きなのかもしれません。

憧れのシンジュサンについに邂逅を果たした採集記でした。
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そんな虫たちとの出会いを味わえるのが今峰ライトですね。虫好きの方にはとてもおすすめです。

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