春に現れる生きた化石
春の三大蛾で忙しい3月から4月にかけての時期ですが、蛾以外にももちろんいい虫たちが出現しています。

カミキリムシにゾウムシ類、蝶の仲間にそしてトンボの仲間の一部も出現します。
その中でも4月にぜひとも観察したいのが渓流的な環境に出現するムカシトンボです。
原始的な造形を持ち生きた化石とも呼ばれるこのトンボの姿をしっかりと観察するために、先日探してきました。
渓流でムカシトンボを探そう
この4月はイボタガを始めとした夜の観察に非常にお熱となっていましたが、今年は去年よりもトンボ類に力を入れたいと考えています。
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その先駆けとして手を付けようと考えていたのがムカシトンボです。
去年も探していましたがまだまだトンボ類への興味は薄く、今年ほど熱もない状態での遭遇であったため、今一度しっかりと観察をしてトンボっていいなぁと今シーズン活動していくためのきっかけとして探そうと思っていました。

トンボ類というのはどうやらムカシトンボの例をとってもわかる通り出現する環境には非常にシビアであるようです。
ムカシトンボは渓流や上流域にあるコケのある環境に出現します。
ヤゴは6~7年ほどの月日をかけて成長しようやく姿を現します。というように非常にシビアな出現条件を持ちます。

加えて成虫の体長は5㎝程度と小さくはないのですが細身であることや薄暗い環境であることから飛んでいてもなかなかにわからないものです。
特に環境が特殊ですからこんなところにトンボがいるとは思わないんですよね。
そんな事情もあってムカシトンボはトンボを始め虫好きに愛される対象なのです。
ムカシトンボの観察に向けて
今回はムカシトンボを観察しに渓流的な環境に足を運ぶことにします。

高尾山での昆虫観察の時に出会ったAさんを今回の相棒とし、Aさんもまたムカシトンボを始め渓流的な環境に興味があるとのことだったので行ってみることに。
午前中から晴れる予報であったのですが、合流の時点では天気は一気にくもりに。そしてかなり大粒の雨がいきなり降ってくる事態に。
正午位からは晴れるという予報であったため、一応現地には向かうのですが雨が降ってしまうことで気温が下がり、併せて葉のスウィーピングなどをしていくのも難しそうな気配となります。

ムカシトンボがいるような場所はそもそも暗所で水沿いですから気温も低いため、見れるかなぁとドキドキです。
移動中はAさんは珍しくテントウムシの仲間の愛好家であるため、面白い話などが聞けました。
現地に着いたら早速渓流環境でチョウの仲間とムカシトンボを探していきます。

今回の目的はあくまで観察。タイトルには採集記としていますがムカシトンボへの採集圧はライフサイクルも考えると非常に高いものになるため、採集はしません。
トンボの標本は色も抜けてしまいますからね。
渓流でムカシトンボを探す
渓流につき、周囲の感じを見ていくとチョウ類の飛翔などがありません。

先ほどの短い雨の影響で昆虫類の活動が抑えられている感じです。
ミヤマカラスアゲハなどが見られればいいなぁと思っていたのですが、ウツギの花などの開花はまだ早いという感じです。
チョウ類にはまだ期待できなさそうです。代わりに鳥類を探していきます。渓流的な環境に出現する鳥の仲間や夏鳥が来ていると思います。
併せて植物やムカシトンボの飛翔を探していきます。

早速頭上ではキビタキの高い声が響いています。夏を感じますねぇ。
渓流やその周辺を摂食しているムカシトンボを探してみますが、なかなか姿は見えません。これは全体的にこの場所の季節がまだ春や初夏になっていないような感覚がします。
渓流に沿って道を進みながらも特に遭遇できる虫はおらず、天気が良くなる感じもありません。

道を進んでしばらくがたち、ニリンソウやヤマルリソウなどのいかにも渓流な植物を観察しながらよさそうな場所を発見します。
ムカシトンボが好きそうな環境であり、いわゆるここにいないならばまだいないといえるような環境です。
私は昨年ムカシトンボの観察をしていますので飛翔の感じやサイズ感などはピンときます。
一方でAさんはあまりトンボ類を始めこうした環境に来たことも多くはないようです。

ここはいそうですよと話をして虫探しモードへと入ります。苔地では派手に飛び回らないため、虫探しのセオリーである全体をぼやーッと見て動くものを探す方法が有効です。
すると15mぐらい先でしょうか。位置も高いですがムカシトンボと思われるトンボが飛翔しているのを見つけました。よくあんなところにいるなぁという感じです。
ムカシらしきものがいますよとAさんに伝えますがAさんは見えないとのこと。では捕まえてきますといってちょっと頑張ることに。
ゼニゴケ類などが生えているため注意しないといけません。
飛翔していた個体がいたであろう場所を目視するわけですが、それらしきものの姿が見えません。
ここにいたように思えたんだけどなぁと周囲を見渡すと足元に飛翔しているムカシトンボの姿があるではありませんか。
飛翔はゆっくりなので捕まえるのは簡単です。難なくネットインしてAさんに見せに戻ります。

ムカシトンボです!原始的なトンボといわれており、翅が前後でイトトンボと同じように同質である点などが面白い点です。
捕まえているとハチのように腹部をくねらせてきます。面白い特徴です。
複眼の色は灰色であり、これもまたトンボではあまり見られない特徴かなと思います。

サイズも全体的に小さく、体に対して翅が非常に華奢です。そのため飛んでいるとイトトンボ系のようにあまり目につきません。
ともかく時期的にも少し早いんじゃないか?雨で見られないんじゃないか?という不安がありましたが姿を見ることができてよかったです。
Aさんも喜んでくれていました。
せっかくなのでムカシトンボの出現事情も調査するべく定点的に観察してみることに。

結果的には1匹飛んでいるように見えたムカシトンボですが2~30分ほど待機してみると3匹見つけることができました。
多分まだまだこれからという感じなのではないかなと思います。
ムカシトンボを探しつつほかの虫も探していこう
Aさんは色々な虫に興味があるようなのでこの渓流沿いにいるほかの虫も観察していくことにします。

もしかすると晴れたりすれば飛翔個体なども見られるかもしれません。
渓流沿いを歩いていると大きな鳥の声が聞こえます。この声は過去、聞いた覚えがあります。
鳥に詳しい恩師が私にはいますが、その時に教えてもらった鳥の名前はミソサザイ。渓流を代表する小型の鳥です。

写真家の方が撮影に来るほどの人気種ですね。写真はありませんがいました。
ミソサザイですよと一緒にAさんと観察していると天気も気が付けば晴れており、開放空間には飛翔するムカシトンボの姿が見られます。
ムカシトンボが飛翔してますよ!と伝え運よく二人とも飛翔し、食事をするムカシトンボの姿を見ることができました。
観察目的ですのでこうした生きた姿を見ることができるのは嬉しいですね。捕まえるのは大変そうです。

天気が晴れたことで渓流沿いは天然の風の通り道となり、虫が吹き上がるように流れてきます。
適当に捕まえてみると春らしい虫の姿がありましたよ。

ヒゲナガオトシブミです。いいオトシブミですよね。首が長いです。ゾウムシ科にはファンも多いですがそれもよくわかる造形をしています。
また、イタドリが生えていましたのでドロハマキチョッキリやイタドリハムシがいないかも見ていきます。

途中ひらひらとツマキチョウがおり、春だけどまだほかのチョウの出現はないかぁと季節の難しさを痛感します。
お、イタドリの葉上にオレンジ色の昆虫がいます。これはイタドリハムシですね。

Aさんは写真撮影にかなりお熱になるようで、虫がいるとそちらに集中してしまいます。私は虫を見つけておきましょう。
実はナミハンミョウが見たい飼育してみたいといっていたのでこの環境ならば晴れればナミハンミョウは出てくるなぁと思っていました。
そんな予想通りの場所でキラリと出現したナミハンミョウ。難なくキャッチしておきます。

何かいたんですかぁ?とAさんが訪ねてきましたのでこんなのがいましたよとナミハンミョウを見せるとうれしそうにしていましたね、
持ち帰って飼育したいとのことだったのでお渡しします。
そんな風景の中でも時折ムカシトンボがやってきており、飛翔の姿を見せてくれました。晴れてくるとさすがに虫も飛び始めたようでこれからに期待できますね。

渓流の草地にタマムシの姿が見えました。クマイチゴなどを利用するシロオビナカボソタマムシです。
太陽光を受けてキラキラとしており、シーズン初めの個体は一際美しく見えますね。
ナカボソタマムシとの遭遇はAさんも初めてなようでとても喜んでいました。

帰り道にはクロアゲハが飛来したり、ムカシトンボが1匹だけですが姿を見せてくれ、虫の総量は多くはありませんが必要なところは見ることができましたので良い観察となりました。
今日の持ち帰りはアオオサムシのチョコレート系だけです。
時間があればムカシトンボの生息場所の情報を求めて探しに行きたいですね。
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