6月、遅れたキイチゴが出現?
野食を始めると色々な食材や自然の色に反応してしまうようになりますよね。

特に初夏はキイチゴにクワと美味しい果実が続きますから、赤色のものがあるとこれは!?と反応してしまいます。
6月頃になるとキイチゴ類は多くが終わりを迎えますが、中にはこの時期に実を付ける美味しそうな果実もあります。
今日は6月に見られる赤い実としてコウゾを紹介していきます。
コウゾとは?
コウゾはクワ科の植物の低木です。

クワを彷彿とさせる柔らかく厚みがありつつもふわふわとした大きな葉を持ち、6月頃には赤いキイチゴ用の果実を多数つけます。
かつては繊維が豊富な植物として和紙の原料としても用いられ、なじみ深い存在だったと考えられます。
クワの仲間は種子の散布が鳥散布であるため、そうしたコウゾ畑からの鳥による持ち出しや、屋外でもかなりの自生個体が見られるのでそうした群落からの散布により、現在でも身近な環境でそれなりの数を見ることができます。

花は4~5月頃に咲き、赤い果実は6月中頃を目安に結実します。
実は大人の親指程度からそれより大きいぐらいのサイズ感で、大きな葉に隠れていることが多く、上から見えることはあまりありません。
そのため、山や雑木林などを登っていると目につきやすいですね。
コウゾのある環境
コウゾは前述の通り鳥による種子散布であるため、林縁環境に出現することが多いです。

日当たりが強すぎるとダメなのか半日影環境、一日の内半日程度日が差し込むような縁にて見かけることが圧倒的に多いです。
しかしあくまで傾向の話であり、種子が入りやすい大木の下でそれなりに日当たりがあるような環境や、開放空間の斜面などでも目にしたことはあります。
生息範囲は広いと言えそうですが、探す場合にはやや暗い場所を見ていきましょう。
水分は乾いているよりは湿り気のある環境を好むように思います。沢沿いやそれに近い場所などは鳥も来るからかコウゾを見る機会が多いように思えますね。
赤い実のテイスト
コウゾの赤い実ですが、キイチゴ類やクワとは大きく異なり、崩れやすい特徴があります。

基本的に果汁を付けずに取ることが難しい実です。
実はかなり独特で、ぬめりがかなり強いのが特徴かなと思います。手ですり合わせるとぬるぬると滑ってしまうぐらいぬめり気があります。
ちょっと口に運ぶのを躊躇してしまうぐらいの感じですが、食べてみると予想通り!
口の中でぬめり気があります。甘みは個体差もあると思いますが結構強く、初撃でガツンときて後にぬめりがのどに絡みつくという感じですね。

甘いんですが個人的にはあまり好きではない味です。というのもぬめりが日頃食べる物とは違うぬめり感でして、どことなくこれ大丈夫か?と心配になってしまうんですよね。
これに加えてヤマグワのようにぼそぼそとした突起みたいなものが違和感を残します。
ジャムなど試したことはありませんが、うまく処理しないと美味しく味わうのは難しいのではないかと思います。
とはいえ自然の中ではご馳走と言えますね。
赤い実と鳥
コウゾの実ですが、これはクワと並び鳥がよく食べに来ているようです。

コウゾが生える環境ではガビチョウのように同じくやや暗い環境を好む鳥がいることがおり、とある場所ではガビチョウがコウゾのみを食べている場面に遭遇しました。
甘みの強い果実なので鳥からすればなかなかのご馳走であると考えられますね。
こうした林縁では落ちた果実をアナグマやタヌキハクビシンなども利用していると考えられますので、6月の貴重な餌資源としてコウゾは重要な存在なのでしょうね。
キイチゴのトピックでも語りましたが、果実の色というのは非常に重要な種子散布のサインであり、花がその形や向きによって訪花昆虫を選択しているように果実も色によって対象を選んでいるとされています。

黒や赤色の果実は鳥に好まれる色合いであり、サクランボに赤や黒が多いこと、フルーツの多くにそうした色合いが多いのも種子散布の戦略と考えることができます。
赤色の果実は甘いという認識を覚えさせればそうではないアオキなどの甘みの無い赤い実さえも鳥による恩恵を受けることができるため、昆虫の擬態戦略のように赤色であることに意味が生まれるのです。
コウゾは赤い甘い実としてコウゾだけでなくそれ以外の果実の散布にも貢献しているのかもしれませんね。
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(赤い実の鳥に対する機能についてはこの記事で掘り下げて紹介しています)
見つけるのは簡単な植物なので興味がわいた方はつまんで味見してみてください。どんな感想が湧くか気になります。
6月のコウゾ以外の赤い実
コウゾ以外の赤い実としてはナワシロイチゴやニガイチゴが挙げられます。

どちらも低木ですが、ニガイチゴは80㎝位になることがあります。
2種はどちらもバラ科の植物であり、トゲがあるのがポイントになります。コウゾにはとげがありませんので赤い実を見つけた時には注目してみてください。
コウゾにつく昆虫とは?
コウゾには果実があるのでカメムシ類を始めとした生き物が付きます。これらは色々な樹木を利用する広食性昆虫ですが、コウゾを始めとしたクワ科につく虫もいます。

それがコウゾチビタマムシです。この種はクワ科の中でもコウゾに好んでつくことが知られます。チビタマムシは人気昆虫タマムシの仲間の一種です。
その姿は科の代表のヤマトタマムシとは大きく異なり体長数mm程の小さな虫ですが、茶色い金属光沢をもつなかなかいい虫です。
チビタマムシの中でも小さい方であるため、知らないとカメムシか何かかと勘違いしてしまいますが、コウゾを見つけた時に葉の縁からギザギザの模様が不規則に走っていればこのチビタマムシがいる可能性があります。
また、近年イワサキケブカカミキリという外来種のカミキリなども見つかりますので探してみるといいかもしれませんね。
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