トゲフタオタマムシに挑み続ける
トゲフタオタマムシに連敗を続けているこの頃なわけですが、やはり既知産地での経験を積んでトゲフタオ採集のセオリーと言いますか、実物を一度は見ておきたいなと感じていました。

特にこの頃の採集は近年の記録がない定点的な場所で行っているため、比較しないとこの場所がいい場所なのかどうかも分かりません。
外れの場所で続けていても成果は上がらず寒いだけです。
そんなわけで懲りずに極寒のトゲフタオタマムシ採集のリベンジを行ってきました。
今回は虫仲間のSさんと共に探しに行きます。
極寒のコンディション
採集予定日を控えてからその日の周辺に今季最大の寒波がやってくることが明らかとなりました。

ただでさえ寒いトゲフタオの採集に最強の寒波が来てしまい、大丈夫だろうかと心配になります。
採集日には今期最低気温となるマイナス5度以上を記録し、とんでもない条件が重なってしまったと思いつつもトゲフタオの魅力に惹かれて山地にやってくるわけです。
極寒の条件にて果たしてトゲフタオは取れるのか...不安と期待を胸に合流地点へ向かいます。
Sさんは1時間以上前から現地入りしており、まずはトゲフタオの前にSさんを見つける必要があります。

ここの山は斜面も多く、スギやヒノキなどの植林が非常に多いために広葉樹林帯と比べると不気味な感じがします。
トゲフタオはモミを利用することからモミが生える斜面に入ることも多いためにそうした場所を見るのですが、非常に傾斜が強く高尾山のケーブルカーの最後ぐらいの角度があります。さすがにここは四足歩行の動物でもないと辛そうだなと思っていると斜面の上部から音が聞こえました。
まさか動物?なんて思っていると対象は二足歩行。

45℃ぐらいはありそうな斜面の上部からSさんが出現します。
流石のバイタリティです。早速合流し、植林帯にあるモミの木がある場所を目指していきます。
モミは尾根沿いや標高のある斜面的な環境に出てきます。
ターゲットがモミ利用と言われるトゲフタオですので、モミが多い場所を目指していきましょう。道中でオオトラの痕跡などが無いか、立ち枯れが無いかなどの情報も求めていきます。

立ち枯れなどもなく痕跡も怪しいものが見つかる程度でしたので早速トゲフタオを探していきます。
今回は山による違いやモミとの距離、虫の隠れ具合など色々な情報を比較のためにも得ていきたいところですね。
また、このエリアはトゲフタオの記録が近年でもある場所なのでいつもの場所と比べても期待が持てます。集中力を保ってみていきたいですね。
早速斜面に入り樹皮めくりをしていきましょう。
トゲフタオ耐久
樹皮をめくっていくと感じるのは出現する虫の数がこちらの方が明らかに多いということです。

今回クサギカメムシ、エサキモンキツノカメムシ、ヤニサシガメ、クモ類というようないつものメンツに加えてシミ類やトゲヤドリカニムシなども圧倒的に数多く出現しました。体感4倍ぐらいは出現率が違う感じです。
一方で植林のメインがスギであることから私のホームのヒノキとは感じが大きく違います。


ヒノキの樹皮はぺりぺり剥がせるものなのですがスギの樹皮は結構硬く、剥がすのに力が必要になる場合もあります。また、浮き感がヒノキとは全く違うので目が慣れていない感じがあります。
いつも優しいヒノキでやっていたため、この樹皮の違いには苦しめられることになります。
早速木々をめくっていくとヤニサシガメが出現します。

いつものところでは最近はカメムシが出るだけでも嬉しいぐらい昆虫が出ないので、いい感じです。めくれる樹皮もたくさんありそうなので、一日中やっても見切れなさそうです。
樹皮をめくるとつまみどころでカメムシに当たることが多く、クサギやエサキモンキがカメムシのメインでした。
トゲフタオは出ないまま時間は流れます。
さて、早くも語ることがありません。
場所を変えてもやることはただ一つ、スギやヒノキの樹皮をめくってトゲフタオを見つけることです。一応モミの周囲など意識するようなことはありますが、結局は周辺の樹皮を探り当てられるかという話なのではないかなと思います。(脳死はよくない)

ここは物量作戦ということで二人のメリットを生かして分散しつつエリアを見ていくことにします。
最初は会話しつつやっていましたが、効率を求めるとやはり分散して黙々とやることになってしまうのです。
ぺりぺりとめくっていくとやはりカメムシは多いです。軍手を始め、手袋類の装着をお勧めします。100均の軍手ではすぐ爪先が破けてしまったので、ゴム製とか少し耐久性のあるものをお勧めしますね。

しかし斜面に入ると痛感するのが寒波の影響で吹く風です。風を防ぐものが無いのでダイレクトに風が当たり続け、糖質など食事を取らないと体温がどんどん低下するのを感じました。
やはりトゲフタオの採集においては厚すぎるぐらいの装備を整えておくのが正解なように思いますね。それから指先や首などを露出しないことです。
寒すぎる風に吹かれながら黙々と樹皮をめくり続け、Sさんもどこかの樹皮をめくりに気が付くといなくなっています。

山の中で斜面に入り黒いコートで木々にしがみつく私は外から見たら樹皮を剥ぐクマのように見えたかもしれませんね。
めくれどもめくれども出てくるのはいつものカメムシやカニムシばかりで、条件がよさそうな樹皮をめくっても虫こそ出てもタマムシの姿が出てきません。

開始から3時間ぐらいはひたすらなにも成果がなく、トゲフタオってオオトラの採集に似たものを感じるななんて考えたりもしました。
寒いことと粉塵などで目や鼻がやられること、寒風でドライアイが加速することなどを加味するとタマムシが出ない間はトゲフタオの方もなかなかにつらさを感じました。
とにかく粉塵がドライアイ持ちにはきついです。次回以降があるなら防塵ゴーグルはマストアイテムですねこれは。
ということで寒いし成果は上がらないし一度休憩をすることにします。

おにぎりとサラダチキンを齧りながらこの3時間を振り返ると、虫のでは方角もあまり関係なく、入りやすい樹皮にいるんだなということや日当たりが良いと入っていないように感じるななどの体感が得られましたね。
昼食を終えてSさんがめくったであろうめくり残しを剥がしていると、ラインがピコンとなります。この流れは合流するか虫が取れたか果たして?
ラインにはトゲフタオの写真が写っていました。
さすがの腕前です。トゲフタオを掘り当てたようです。非常にうらやましい限りです。

という訳で一度合流し、どんな場所にいたのか?色々と条件を見させてもらいます。
樹種はスギ、位置は目線よりも高く、剥きやすい大き目な樹皮であったようです。トゲフタオはどうしても地際などの低い所での報告が多いのでそうした場所に目が行きがちですが、あくまでいい樹皮に注視する必要がありそうです。

周囲にモミは巨木があるものの目視できるだけで距離的には30m程度は離れていそうです。
風が当たりやすい林縁部であり、広葉樹林と針葉樹の境目であるようです。
Sさんによれば風で取り付きやすいのではないかとの考察がありました。
環境的にも沼というか部分的に水がある湿度のある風が来やすい位置にあったりするのも影響していそうな感じです。
私はめくれやすさからヒノキに注目していましたが、スギの樹皮も浮いているものや部分的によく見ると剥がせるものなどよくあるようです。


いつもの場所でヒノキばかりめくっていたのでてっきり剥きやすい樹皮=ヒノキと認識していましたがスギの樹皮については改める必要がありますね。
ということでSさんの考察に乗っ取り私もスギに目を向けて特に大木のめくれに注視してみることにします。
この時点で寒さとドライアイに粉塵をくらい角膜がやられているのを感じていました。もはや光がぼやけています。いやはや風と粉塵おそるべし、つらいものです。

とはいえアオタマムシが立ち枯れの木にいつの間にかいるように、これまでいなかったからこれからもいないとは限りません。
一匹見つかったなら周囲にもいるはずだと気合を入れなおして再度スギの大き目な木のめくれに注視して剥がしていきます。
今日はいくつもはがした様な樹皮をべりッとめくったとき、めくった樹皮のサイズと同じ程度の幅感の虫が出現します。

その時の心情としては「寒い~目がボロボロで光がまぶしい風強すぎるだろう」「トゲフタオは見つけられるのだろうか」「樹皮べりっ」「あれ、なんだか大きなウバタマコメツキみたいな模様の虫がいるぞ?」「トゲフタオってこんなに大きいんだっけ?」「んん??」
という感じでした。
トゲフタオの採集も年月がかさみ、樹皮の裏からその対象が出ないことが当たり前であったために目の前の対象がトゲフタオであることを認識するのには時間がかかりました。

そして「ついにトゲフタオキター!!!」認識した瞬間に手を下に沿えて落下を阻止し、ポケットのカメラを取り出して掴む前に撮影したものがよく目にする樹皮に張り付くこちらの一枚になります。
いやぁこの瞬間は嬉しかったですね。Sさんに大学生のようなノリのラインを送り、合流し寒さでろれつが若干回らないながらも喜びを分かち合います。
個体はメスでしたが中々に大型の個体であり、触覚や符節の欠けもない個体です。

強烈な寒波の中強風にあおられ、ドライアイの眼がボロボロになりながらも続けた甲斐があったというものです。
環境的にはSさんが捕まえた木々と同一ラインにあることから我々の中ではモミからの飛来の位置という線が濃くなりました。
トゲフタオを捕まえて元気も出てきたことで追加分を狙って探していきます。もうこの時には気分はウキウキであり、ウイニングラン状態でした。

午後には風が強くなり寒さは増すばかりですが、見つかったエリアで重点的に会話に華を咲かせながら樹皮をめくっていきます。
時折捕まえたトゲフタオを眺めてニマニマしながら、樹皮をめくってトゲフタオを認識した時のあの嬉しさを振り返ってしまいます。
とはいえトゲフタオは難易度が高いですから追加をそうそう狙えることもなく、段々と寒さがしみわたってきます。
鼻水はデフォです。それでも怪しい樹皮をめくることでSさんが追加のトゲフタオを確保します。

これで計3匹のトゲフタオが見つかりました。いずれもメスで出現の樹種はスギです。
帰りの時間もあるのでここらで切り上げていくことにします。最後に急激な斜面を登りながら樹皮をめくりつつ追加を狙いますがそれ以降の追加はありませんでした。

都市部に戻りスタバで乾杯です。この時にようやく雌雄が分かり、♀3匹だということが判明しました。
雑談にも華がさき、スタバで2時間虫の話をし続ける非常に珍しいお客さんとなりましたが、ようやく初のトゲフタオタマムシにも遭遇出来満足度の高い採集になりました。
Sさんありがとうございました。&お疲れ様でした。
トゲフタオタマムシの採集に挑む方へ
ここからはトゲフタオに挑みたい方に向けて装備的な面でのアドバイスです。

基本的にトゲフタオはモミと針葉樹環境にいるのでそうした場所を探すことになります。探し方については詳しいことを書いている方がいるため、サンプル1の私よりもそちらを参考にした方がいいです。
私が述べるのは装備面ですね。

トゲフタオの採集は斜面や尾根沿いで寒風にさらされ続けることになるため、装備をとにかく熱く、止まっても温かいぐらいにするのがおすすめです。
登山などする場合には調節できるようにしておきましょう。
これに加えて体温維持の行動食もおすすめします。カロリーの維持が熱の維持にはとても大事です。

そして可能ならば安くてもいいので防塵ゴーグルをお勧めします。特にドライアイの方はゴーグルが無いと粉末で目が傷つきます。
私は3時間ぐらいの時点で光の見え方がおかしくなっており、これがかなりストレスでした。長期間探す場合にはゴーグルはあった方がいいと思います。目薬も用意しておきましょう。


後は手袋ですね。軍手よりもゴム手袋のようなものの方がスギの枯れ枝が絡みついたり、枯れ枝が刺さったり、指先が破けるなどの事態を避けられると思います。
そしてスギの堆積物が多いため、マダニも出現します。ズボンを靴下に入れるなどして対策をしていくのがおすすめです。
これらの対策を行えば何もしないよりは快適なトゲフタオ採集が楽しめるのではないかなと思いますね。

それからスギが多い所ではスギの樹皮が硬いのもあって爪が痛くなります。爪は伸ばさず、トゲフタオ採集の前に一度整えておくとよいかなと思いますね。
-ドライバーのような樹皮の最初をめくれる道具を持っていくのもいいかもしれません。
ということでようやく念願のトゲフタオタマムシに遭遇することができました。

やはりオオトラよろしく癖になる部分があり、帰宅中は1シーズンに一回やれればいいかなと思っていましたがこの日からすでに一度過去採れていないマイポイントで探してきました。
もちろん虫自体が出ず、トゲフタオも出ませんでしたけれども樹皮裏からトゲフタオが出たあの瞬間を味わいたくて山に赴いてしまう自分がいるのでした。
これがトゲフタオの魔力。また出会えるのを楽しみにしています。
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