黄色いアゲハ蝶!名前は?
春から晩秋まで非常に長い期間黄色いアゲハ蝶を目にすることがあります。

町中でも見かける機会の多いアゲハ蝶ですが、アゲハは黄色だよねという認識の方も多いかと思われます。
しかしながら黄色いアゲハには2種類おり、かなり似ているもののその生活環は大きく異なります。
今回は街中で見つかる2種類のアゲハについて詳しく見ていきましょう。
黄色いアゲハチョウと大半を占めるナミアゲハ
アゲハチョウの仲間には非常に大きく分けて黒系と黄色系、青系がいます。

身近なものでは計8種類ほどのアゲハチョウがおり、大部分が黒色をしています。
このうち黄色系のアゲハはわずか2種類のみ。
黄色いアゲハ蝶にはナミアゲハとキアゲハの2種類がいます。


ナミアゲハはミカンの仲間を利用する都合上住宅地を中心に庭木のミカン科を発生源として生息圏を確保しています。
そのため後述のキアゲハに比べると発生個体数も多く地域差もあるのでしょうが畑などの無い地域では99%がナミアゲハです。
ナミアゲハは早いものでは3月の中旬ごろに発生します。その後晩秋の9月頃まで計5~6回ほどの発生期間があります。

蛹越冬であるため、晩夏に生まれた幼虫はそのまま蛹状態で冬を過ごし、翌年の春に新成虫として羽化します。
幼虫はこれまた特徴的で小さいときには鳥のフンに擬態しています。そのため、黒地に白い模様が入るのですが、脱皮を繰り返していくうちに緑色に変化します。

この際にはヘビをイメージさせるような目玉模様が入り、面白い見た目へと変化します。
幼虫のユニークな特徴として臭い角を出すというものがあります。これの色を見ることで似た幼虫のアゲハの中でも種類を絞ることが可能です。
ナミアゲハの幼虫には黄色の角があります。
キアゲハは少ない?
キアゲハはナミアゲハに比べると個体数は少ない地域が多いと思われます。

これはチョウの出現が食草に由来しているためです。アゲハはミカン科を利用する印象が強いですが、キアゲハはセリ科の植物を利用します。
セリ科の植物は農作物であることも多く、身近ならば人参がもっとも有名です。その他パセリやアシタバなど畑地で栽培される作物の害虫として知られています。
これは逆に言えばキアゲハの出現は畑地に依存している(現代の環境では)もしくは南方系で暖かい地域に多いアシタバなどに由来するため、それら植物が多い場所では個体数をそれなりに見ることが可能です。
キアゲハの幼虫はミカン利用のものとは大きく違う見た目をしています。
成虫はやはり春から晩夏まで出現し、年に複数回の発生期間があります。
ナミアゲハとキアゲハの違い
ここまでで2種類のアゲハチョウの食草の違いは理解できました。それにより出やすい環境もおおよそ都市部と海岸などの暖地と分かれてきます。


しかし都市部で畑地が多かったり、山地の畑などの環境では2者の食草が混合することから両種ともに見かけることがあります。
この2種は遠くからだと見分けにくい場合もある程よく似ています。具体的な違いを見比べてみましょう。
まず色ですがどちらも黄色ではあるもののキアゲハの方が色が濃いです。
ナミアゲハがライトイエローもしくは黄色に白を混ぜたようなものであるのに対し、キアゲハは濃い黄色という感じです。


飛翔段階での判別方法としては食草の違いからミカンの周りを飛んでいる黄色いものはナミアゲハで畑地などのニンジン(ニンジンの葉が分かる方は少ないかと思いますが)などを飛んでいればキアゲハだと分かります。
もし花などに来ている場合には捕まえるもしくは食事中ならばじっくり観察の機会があるかもしれません。
その時に決定的な違いとなるのが前翅付け根の模様です。


ナミアゲハは線状の模様があるのに対しキアゲハにはメッシュの模様があります。
黒く塗りつぶされたような模様をしていれば確実に断定できるので注目してみましょう。
実のところキアゲハは街中で見かける機会は少なくなりました。なので比較ができるような機会というのはなかなかありません。
しかしながらこの2種は身近な生き物の違いを体感する対象として非常に優秀です。
生き物の違いを多様性としてとらえる
アゲハチョウは大きく、見かける機会も比較的多い昆虫です。

そしてナミアゲハとキアゲハは姿こそ似ていますが、識別点を理解しておけば確実にその違いが分かる種類です。
なにより似た姿でありながら利用する植物は全く違うという点から生き物の多様性を学ぶ対象としてとてもおすすめです。
多様性は昨今目にする機会が増えてきた言葉ですが、その本質は生き物に触れてきた経験のある大人が増えることにあると考えます。日々の生活では認識できていないだけで生き物由来の恩恵である物ばかりです。

自然界にはたくさんのナミアゲハやキアゲハのような違いを持つ生き物がいます。
しかしながら小さく個体数も少ないものや興味のある人が少なくよく分かっていないものなども多数います。
よく生き物はその環境を示す指標として使われることがあります。
水の綺麗さを示すホタルなどの指標生物、特定の食性にのみ現れるスペシャリスト、高標高地のみに現れる種類など生き物は人の隣から山の奥までそれぞれの生活環境を持っています。

これは逆にとらえると生き物を見ればその地の自然の豊かさが分かるということでもあります。
この記事にたどり着いた方の地域ではナミアゲハとキアゲハの両種がともに見られるでしょうか?それともナミアゲハだけでしょうか。はたまたどちらも見られないという場合もあるかもしれません。その一方で黄色以外にもたくさん黒いアゲハがいるという地域の方もいるはずです。
チョウ類は環境を示す指標としてよく使われます。蝶の知識があると出現する蝶の種類が挙げられればそれを基に植生が分かり、環境の想像がついてしまいます。

そして生き物の豊富な地域では虫に触れる機会が増えることで虫に興味を持つ人が増え、アゲハを例にすればミカンやセリの仲間など昆虫が発生するための植物の必要性を理解する。
そしてそれら植物が育つための環境を理解する。
それらにつく害虫が分かるなど連鎖的に自然の情報が理解できます。また、他のチョウや虫を捕まえて樹液や草地の必要性、水辺や薄暗い環境に生息する種類がいるなどの違いも理解できます。
一方で生き物が少ない地域では出会える種類がそもそも狭まっており、こういう場所ではコンクリに芽生えられる植物だけを利用するなど遭遇出来る生き物も限られてきます。そうなると生き物と関わる機会も薄くなり、食物連鎖を通じて成り立つ生き物の世界が見えなくなり、日々の生活が生き物により成り立っているという事すら忘れてしまうのです。

このような体験格差が地域で見られるアゲハなど昆虫の一部を見ていくと背景として読み取れます。
ナミアゲハやキアゲハの違いは生き物単体で見ればはっきりと違いがあるものです。しかしその違いが分かるのは2種類が見られる環境にいる人だけなのです。
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標本の作製はこの記事で必要なものなどが分かります。
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本格的に虫取りをするならばいい網を検討することをお勧めしますよ。
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